第93話『変わったことを、認めていた』
■草原と平穏の国:孤児院
【赤髭男】「変わりました……か?」
【男主人】「ええ、少なくとも僕が見る限り、今の貴方ならば信用に足ると思わせるだけの雰囲気があります。こういうのは、僕より年配の貴方はご不快かもしれませんが」
【赤髭男】「いえ、むしろ、何か嬉しいですね」
【男主人】「それでは、本題に入る前に……その口調は、素じゃないんですよね? 喋り易いようにしてください、僕もその方がやりやすいので」
【赤髭男】「そういうことなら、ん、普通に喋らしてもらうぞ」
【男主人】「構いません。ちなみに僕の方は半分くらい、これが素なので気にしないでください」
【赤髭男】「さて、何でも話すと言ったが、何から話せばいい?」
【男主人】「……まず、弟大公を失脚させるほどの情報は?」
【赤髭男】「そこまでを期待されているなら、悪いが直接的には無理だ。まずは証拠がない。ワタシの証言だけでは、自作自演という疑惑が残り、大勢に何も影響を与えられない可能性も高いだろう?」
【男主人】「そうでしょうね。いくら恩赦を出すとしても、一度罪人とされた貴方の証言だけで、弟大公を追い詰めるのは無理でしょう」
【赤髭男】「ワタシがやっていたのは、先代からの徴税違反及び違法な収賄、その贈賄先の1つが弟大公だった」
【男主人】「弱いな……例えば、弟大公に不満を持っている相手は?」
【赤髭男】「それなら、いくつかは心当たりはあるな」
【男主人】「離反に応じそうな相手、ただ離反させた後に裏切られそうな相手は困るね」
【赤髭男】「難しいことを言う。すぐに裏切ってくれて、自分たちを裏切らない相手が欲しい、と言っているぞ」
【男主人】「理想的な条件ってのは、いつでも厳しいね(苦笑」
【赤髭男】「ああ、逆に王子様側から、弟大公側に情報を流している相手は何人か分かる」
【男主人】「それは助かりますね。ああ、そうだ……悪領、ちがった、赤髭男殿。西との連絡を取っていたというが、相手は?」
【赤髭男】「弟皇子派の幹部の1人だ。今回の戦争に対して、王国の情報を流して欲しいというモノだな。情報の重要度によっては、数百万イェンの報酬をもらっていた」
【男主人】「報酬、ね…………」
【赤髭男】「他には?」
【男主人】「うん、悪いけど、思考がまとまらない。今日の所は、まず弟大公側の勢力について、洗いざらい話してもらおうか」
【赤髭男】「構わない。問題は無限に思えても、時間は有限だからな」