第9話『副官女の想像を、超えていた』
■草原と平穏の国:王宮(執務室)
【男主人】「それじゃあ、10日ほど留守にするけど、その間はよろしく頼むね」
【副官女】「はい、任せてください! 男主人様もお気をつけて!」
【部下男】「お土産楽しみにしてまーす」
【男主人】「了解、向こうの葡萄酒か何かを買ってくるね。では」
SE(扉の開閉音):ガチャ、バタン……
【副官女】「…………はぁ」
【部下男】「何も心配する必要はないと思いますけど……それとも、寂しいんですか?」
【副官女】「さ、寂しい!? そ、そんなことない……あ、心配しないなんて、部下男は薄情者ね!!」
【部下男】「いやぁ、男主人様にとっては、それほど心配しなくても……」
【副官女】「い、いくら、男主人様が優秀な魔術師だとしても、もし戦いになったら……」
【部下男】「いやいや、いっそ戦いになった方が楽ですよ。相手の戦意を喪失するまで叩き潰せば良いだけなんですから……」
【副官女】「多勢に無勢という言葉があって、男主人様は1人しかいなければ……ああ、やっぱり私も今から追いかけて……」
【部下男】「むしろ、オレらがいる方が邪魔になりますから……って、そうか、副官女さん、もしかして、男主人様の実力を知らない、とか?」
【副官女】「実力は知っています!! この国で一番強い魔術師!! それなのに、まったくそんな素振りを見せず、優しくて素敵な方!!」
【部下男】「本人に言ってやれば良いのに……それで、その強さがどのくらいかってことですよ?」
【副官女】「…………どういうこと?」
【部下男】「それに、今の言葉は正しくないですね。現時点では大陸一の魔術師と呼ばれていますよ」
【副官女】「大陸一?」
【部下男】「そもそも、オレらの所属部隊は何処だか知っています?」
【副官女】「私をバカにしているの!? 栄えある王国軍第十一師団よ!」
【部下男】「バカになんてしてません。その構成人数は?」
【副官女】「男主人様と私と貴方の3人でしょ!」
【部下男】「…………で、違和感に気づきません?」
【副官女】「今の話のどこが変だというのよ?」
【部下男】「王国軍の部隊編成規則に従うなら、師団を名乗るのは1万以上の兵士の所属が必要なんです。それに、王国軍は数年前まで第十師団までしかなかった。いくら王位継承第一位の王子様直属の部隊だからといって、それだけで師団って言うのは酔狂が過ぎます」
【副官女】「それがどうかした?」
【部下男】「簡単に言えば、匹敵するんですよ。男主人様1人を戦力へ換算した場合、兵士2万人以上にね」