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華甲二年の再会  作者: 有嶺 哲史
第二章 秋から冬
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第25話 意気ごむ比良野

 十二月初め頃、比良野は自分の副院長室に布沢を呼びつけた。

落選してショックを受けているかと思いきや、薄ら笑いを浮かべている。

比良野は病院資産の横流しを示す書類を突きつけた。


「これは横流しを示すものではないかね。君の決済印が押されている。どう釈明するのだ」


「釈明? 別に問題ないと私は思っています。しかも決済印? その書類はコピーじゃないですか。誰でもすぐ作れてしまいますよ」


「それは有印公文書偽造か虚偽公文書作成の罪だ」


「そうですねえ。誰がやったのでしょうねえ」


「泌尿器科女医の小松篤子が院内で刺された事件、それは君の指示じゃないかね。目撃証言によると以前から君の愛人と言われている看護師長が犯人だ」


布沢は歩きながらおどけたように言った。


「私は関係ありません。動機も有りません。選挙はすでに終わっていたし、私が指示して彼女を刺して何の得になりますか」


「君には必ず責任を取ってもらう。まとめて世間に公表するぞ」


「よろしくどうぞ。あの目撃者はすぐに記憶があいまいになる人ですぞ。看護師長は証拠不十分で不起訴になるでしょう。ご慎重になされては? ほかに御用が無ければ、では」


布沢は笑って退出した。

おかしいな、まるで動揺していない。

布沢の態度は不気味だった。

篤子の事件は殺人未遂の可能性も考えた警察は病院周辺や家宅捜索も行っているが未だに決定的証拠は出ていない。

止めに入った目撃者は薬剤部長だ。

そういえば彼も布沢の仲間だった。

証人を含めみんなグルで、計画的な犯行だったとしたら。

恨みをもった赤鼻ナースが起こした単なる衝動的事件では無い。

とすると彼の言うように選挙は既に終わったので布沢側に篤子を刺す理由がない。

さっき布沢に見せた横流し書類も布沢のあの自信たっぷりの表情を見ると怪しく見えてきた。

比良野が経理関係を調べていたことを彼等が知っていて囮文書を差し出したものかもしれない。

自分の知らないことがあるようだ。

動き出すには早すぎたらしい。

比良野は途方に暮れた。

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