全く靡かない婚約者に惚れ薬を飲ませた気になっていましたが、甘々なのはただの素だったようです。
たまには頭空っぽで書きたい^^
登場人物みんな様子がおかしいです
私の婚約者で公爵令息のカーティス様は、きっと私のことがあまり好きではない。
だって幼い頃に婚約してからというもの、彼は私に笑い掛けてくれない。
元々表情が変わりにくいお人ではあるけれど、それでもご学友とお話ししている時は時折笑顔を見せている。
つまり笑えないわけでも、感情起伏がないわけでもないのに、私相手にだと笑えないということ。
かれこれ十年弱共にいてそうならば、今後もきっと……彼の心は私には向かないだろう。
けれど、諦められなかった。
幼い頃からお付き合いのあったカーティス様。
同年代の中でもとびきり大人びていた彼は、仏頂面を見せながらも泣き虫で鈍臭い私に何度も手を差し伸べてくれた。
それが婚約者としての義務で、本当は渋々していた事だとしても、私はそれが嬉しかった。
そうして……私は簡単に恋に落ちた。
それを十年拗らせてきた私。
最初こそ、「想うだけで充分」「私を想ってくれてなくてもいい」と想っていた。
しかし、そうと言っていられない時がやってきた。
私達が通う王立学園。
その一年生として第三王女ブリトニー様が入学してきた。
そして彼女は……カーティス様に恋をしていた。
入学した彼女は、同級生ではなくカーティス様に何でも相談した。
学園の案内も、勉強も。
そしてカーティス様と話す度、彼の体に触れようとした。
現状、彼がブリトニー様に靡く素振りはない。
けれど彼女は王族で、それも異性の視線を惹きつけるだけの愛くるしい容姿を持っている。
十年経っても振り向かせられなかった私が、彼女に勝てる要素が見当たらない。
そしてたとえブリトニー様がカーティス様の好みではなかったとしても、私よりはマシと思われるかもしれない。
そんな超絶ネガティブ思考を発揮した私は……
――ついに、惚れ薬を開発した。
婚約者一人振り向かせられない、面白みのない凡人である私だけれど、少しだけ得意なことがあった。
それが魔法と薬学。
そこに更に執念が加わり、遂に完成したのがこの惚れ薬だった。
尚、この薬がどのくらいの効果を発揮するのかはわからない。
飲んだらなくなってしまうのだから。
まあ、人体に悪影響な成分は入れていないから大丈夫だろう、多分。
という、私目線からしても明らかにまずいと感じるような薬をカーティス様へ差し出した。
「……惚れ薬」
「はい」
――馬鹿正直に。
ええ、だって私、嘘は吐けないので。
カーティス様は差し出された小瓶を観察する。
そして
「わかった」
「え?」
「飲んで欲しいんだろう。分かったと言ったんだ」
そういうや否や、カーティス様は小瓶をあけて中身を呷った。
「か、カーティス様……!?」
まさか頷いてはくれまいと思っていた私はおったまげてしまう。
そんな私の目の前で惚れ薬を飲み切った彼は、目をぱちくりと瞬かせる。
「特段、異変は感じないな」
「本当ですか? 具合とかは」
「特には。ああ、でも」
彼はそうして私の髪を掬い上げると目を細めた。
「……君が愛おしく思えるな」
……本当に効いているんだ、と思った。
***
それからというもの、カーティス様は私にべったりで毎日を過ごしていた。
ブリトニー様の誘いにも全く乗らなくなった。
彼らしからぬ笑顔と甘い言葉を私に向けてくれるようになった。
けれど……これは全て薬のお陰。
効果が切れてしまえば(そういえばいつ切れるかあまり分かってない)、この関係も元通りになる。
それは何だか悲しいと思った。
そしてそんなある日の事。
私が持ち歩いていた追加用の惚れ薬が一つ、盗まれてしまったのだ。
正直、気が気ではない。
誰かが使ってしまい、副作用などのイレギュラーが現れれば責任を追及されるかもしれないのだ。
そんな気持ちを抱えた昼休憩。私とカーティス様は学園で一緒にお昼ご飯を食べていた。
その時彼は、ラッピングされたクッキーをつまんでいる。
「どうかしたのか、クラリッサ」
「へ!? い、いえ……っ!」
私は慌てて首を横に振り、話を逸らそうとクッキーに目を付ける。
「そちらは貰い物ですか? ああ。ブリトニー王女から……」
その時だった。
「カーティス!!」
甲高い声がカーティス様を呼ぶ。
そちらを見れば、ブリトニー王女が立っていた。
ここ最近は散々手酷く無視されていた彼女だが、何故か今日はご機嫌だ。
ブリトニー王女は勝ち誇った笑みを浮かべ、何故か私を見る。
「私、聞いてしまったの。貴女がカーティスに惚れ薬を飲ませたって話」
そういえば、二人きりの時にそんな話を何度かした。
体調の変化も気になっていたし。
「最近のカーティスの様子を見るに、どうやら惚れ薬を作ったというのは本当みたいね? だから……ちょっと借りたのよ」
「な……っ!」
ブリトニー王女はそう言うと空になった小瓶を見せる。
確かに、私がなくした惚れ薬の瓶だ。
「そして惚れ薬をたっぷり入れたクッキーを作ったのよ! さあ、カーティス! これで貴方は私のものよ!」
「そ、そんな……っ!」
ブリトニー王女がカーティス様へ近づき、私は悲鳴じみた声を漏らす。
確かに、惚れ薬で彼を操っていてもいいのかという迷いはあった。
けれど、彼が離れていくかもしれないと思うと、途端に苦しくなる。
いかないでほしい、と心が叫んでいた。
そんな中……
「……惚れ薬?」
カーティス様がきょとんとした。
「そんなもの、はなから効いていないが」
「「……え?」」
私とブリトニー王女が一斉に呆ける。
そんな中、カーティス様だけが満足そうな笑みを浮かべていた。
「いや、効いていたのかもしれないが、正直効き目が分からない程度には、私ははなからクラリッサを愛している」
「え、え……!? でも、飲んだ時……」
「ああ、あまりにも必死な君が愛おしくてな。少し乗っかってあげたくなったんだ。すまない」
「で、でも……! カーティス様は、私の前では全く笑顔を向けてはくださらなかったじゃないですか!」
「そ、それは……」
痛いところを突かれたというようにカーティス様は顔を顰める。
それから私から目を逸らし……じわじわと顔を赤らめていく。
「私は自分の想いが重い事を良く理解している。これを明け透けにするのも、それを許容されるのも……一度味を占めれば歯止めが利かなくなると、分かっていたから……」
「……敢えて、我慢していたというのですか」
私の問いにカーティス様は小さく頷いた。
「そ、そんな……っ、嘘よ……!」
「とにかく、そういう事だ。クラリッサについては私から進んで服薬したが、ブリトニー王女の件はそうではない。この件については……国王陛下にも報告させてもらう」
「そ、そんなぁ……っ!」
カーティス様の言葉にブリトニー王女は泣き崩れるのだった。
***
泣きながら逃げ帰ったブリトニー王女を見送った後、私はおずおずとカーティス様を見つめる。
「あ、あの……さっきの話」
「ああ、事実だ。私は幼い頃から、真っ直ぐな君に惹かれ続けている」
彼はそう頷くと私へと近づく。
「君に迷惑を掛けないためと考えての事だったし、結果、惚れ薬などという頓珍漢で愉快な考えに走る君は愛らしかったが、それはそれとして、君を不安にさせたことは反省しなければならないな。……すまない」
カーティス様は私を抱き寄せる。
そして美しく整った顔に、甘い微笑みを乗せて顔を覗き込んで来た。
「もう全て話してしまったし、これからは遠慮はしない。……いいな?」
「ひゃ……ひゃい」
あまりの破壊力に頭がくらくらとする中、私はカーティス様から口づけを受ける。
遠慮はしないという言葉の通り、私はその後、酸欠で腰を抜かしてしまうまで何度も深いキスを受けるのだった。
書くのは楽しかったです(清々しい笑顔)
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし楽しんでいただけた場合には是非とも
リアクション、ブックマーク、評価、などなど頂けますと、大変励みになります!
また他にもたくさん短編をアップしているので、気に入って頂けた方は是非マイページまでお越しください!
それでは、ご縁がありましたらまたどこかで!




