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 そっと壁から顔を出し、新たに加わった少年もといハルトを観察する。

 一応使用人たちには詳細を伏せ、他国から王宮に来たが諸事情で子爵家で預かることになったと説明したらしい。

 黒髪黒目、細身で身長もそこまで高くない。どう見ても日本人、しかも男子高校生だ。

 自己紹介の時には衝撃でそこまで気にしていなかったけど、あらためて見てもこの世界の人間ではないのがよくわかる。

 この世界にも黒髪も黒目もいるけど顔立ちは西洋使用で、彼のように目鼻立ちが慎ましいのは見かけたことがない。

 東洋人特有の顔立ちは、悪目立ちしそうなくらいなのに、なぜか彼はどちらかというと埋没してしまいそうな程に存在感が薄い。顔立ちは悪くないのに雰囲気がそうさせているのだろうか。

 それとなく使用人たちに聞き込みをしてみたが、皆そんなに気にしていなかった。それどころかいつの間にかいるといった怪談話風に語られる。なぜに。

 それに見習い使用人(客人)のため、屋敷の事を頼むのも憚られるのでちょっとしたお使いのようなことを頼む程度なのだと話してくれた。


「むー。やっぱりここは直接聞いてみるしかないのかな? でもあんまり近づくと皆心配するし」


 でもやっぱり直接話した方がいい気がする。

 私の周りで起きているテンプレばかりの展開。もしこれが何かの影響世界なら、もしかしたら彼が何か知っているんじゃないかなって思うんだけど。

 少しの間観察してみてるも、何も行動を起こさずにいるしどうなんだろう。

 あの様子では何も知らないのかもしれないなぁ。

 お父さまの言いつけをちゃんと守り、私たち家族には極力近づかないよう気を付けているし、ちょっとした書類運びなどの用事も文句なくしてくれている。

 使用人たちにも穏やかに対応し、客人だからと偉ぶることもない。それどころか遠慮がちなのだという。

 どうするべきか悩んでいると、ふとハルトが立ち止まり窓から空を見上げて溜息をついた。その目はどことなく寂しそうで、きゅっと胸が痛む。

 だってあのどこか遠くを見る目は、よくお母さまがしていた。葬儀が終わり叔父に出ていくか妾になるか選択を迫られた時にしていた目。

 どこか遠くを見つめる目に、私を置いていかないでとかけよった時に見た顔だ。

 それに今もふとした瞬間、寂しそうに空を見上げることがあるのも知っている。

 そして私にも心当たりがある感情。訳も分からず連れられ、今日から家族になるんだと言われた時に感じた孤独感。

 そうだよね。彼は私よりも孤独なんだ。

 訳も分からず違う世界に連れてこられ、保護してもらっていた先で騒動に巻き込まれて、また別の所で厄介になっている。

 頼れる人も信じられる人もいない。彼はこの世界でたった一人。

 きっとあの対応も彼なりに考え、約束は破らず下手に騒がずにいることで居場所を守ろうとした結果なんだろう。

 

「クロエ? そこで何をしていますの?」

「わっ!お姉さま!?」

「お嬢様。彼には近づかないようにと、旦那様から言われていると思いますが?」

「コレットも……。だって気になってしょうがないんだもん」

「だからといって、旦那様の言いつけを破っていいわけではありません」

「む~」


 気になることがあれば、とことん追求したくなるのが人の性だよね。私悪くないよね。

 そう必死に言い訳をしても、二人ともハイハイとおざなりな返事で壁から引き離されてしまった。



 その日の夕食、この件がお父さまに知られ、後でちょっと話し合おうと言われた。

 約束破ってしまったからだろうなぁ。



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