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 子爵家にもだいぶ慣れてきた。あれからお姉さまがこちらを避けることもなく、お母さまとギクシャクすることもなく、穏やかな日々を送っている。

 ただちょっと不満なのは、お母様の淑女教育が厳しくなったこと。お姉さまの時と明らかに違う。これはきっと本当にあの日の出来事を報告したに違いない。

 そんな忙しくて楽しい毎日を送っていると、初めからこの家の子だったような気がしてくるから不思議だ。

 毎日つけてる日記帳を何気なく開き、今日までのことを振り返りながら、ふと窓の外を見る。

 私の部屋とお姉さまの部屋からは、小さいながらも丁寧に整えられた庭が見えるのだ。今はちょうどスイートアリッサムという白くて小さい花が咲いている。

 何気なく見た窓の外には、その花を優しくつつくお姉さまの姿が見えた。

 本当にこうしてみると、しゃべらなければお人形のようなのに、口を開けばちょっとキツイ口調でギャップが激しい人だなと思わずにはいられない。

 まるで前世のネット小説に登場するような悪役令嬢そのもの。

 そこで「ん?」と違和感に首を傾げる。

 なんというか、この世界の造りや私の周りの人たちを思い浮かべ、「あれ?」と再度首を傾げた。

 考えてみれば、この世界はネットにありふれた設定に似ているなと思っていたし、私の境遇はよくある継母と義妹ものの設定に近い。

 お姉さまにしても、素直な性格じゃないことを考えると悪役令嬢に見えなくもないし、お父さまはあの美貌の上に、子爵ながら役職は宰相補佐という重要職。

 これはもしかすると、ネットに溢れていた物語のように、この世界は何かの創作物世界を模したものなのかもしれない。

 ……いやいや。そんな、まさか。

 でも魔法石とか魔法とかファンタジーもろだし世界。もしかしたらが、もしかするかもしれない?


「な、ないない。だってこういう設定って、大抵前世で知っている話だったりするはずだもの」


 そうだ、気のせい。気のせい。

 ちょっと変だなとか思っただけだから。この世界が創作物とか、そんなの勘違いに違いない。

 仮にそうだとしても、継母と義妹の私たち母子と子爵親子とは円満だし、悪役令嬢ぽく見えるだけで、お姉さまも普通の女の子だし。


「気のせい気のせい」


 私は自分に言い聞かせるように何度も呟き、不安を押し込めるように開いていた日記帳を閉じた。

 まさかこれがフラグになるとは、この時の私には知らない事だった。



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