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 お姉さまの部屋は、南向きで日当たりも良い。おそらく両親の私室よりもいい部屋ではないだろうか。

 私に与えられた部屋も日当たりはいいけれど、ここまで明るい部屋じゃないし。

 本当に娘溺愛のお父さまらしい。普段はキリっとしているのに、お姉さまのことになると途端に格好を崩すお父さまの顔を思いだし苦笑してしまった。

 別に寂しいとか不公平だとか思わない。自分の子供が可愛いのは当たり前だし、優先するのも当たり前。

 それにこの屋敷にお邪魔しているのはこっちの方だから、わざわざ騒ぎ立てるのもバカバカしいもの。

 それにしても、お姉さまの部屋に初めて入ったけれど、なんというかファンシー。

 レースのカーテンも無地じゃなくてちゃんと刺繍が入ってるし、ソファーやテーブルクロスなんて淡い色合いの物ばかりだ。

 ソファーに置いている兎のぬいぐるみなんか、服を着て鎮座している。全体的にファンシーでちょっと子供すぎる部屋だ。

 今着ている服もパステルカラーだし、思い返してみれば出会いから今までの服装の系統もパステルが多かった。

 初めての顔合わせで人形めいてると思ったのは、その美貌だけじゃなく着ている物が淡い色のワンピースだったからだろう。

 でもやっぱり子供っぽすぎる。いや十歳ならこれが普通なのかな。

 シンプルな自室の内装を思い出し、この部屋と比べていると、お姉さまはすでにソファーに座っていた。慌てて彼女の隣に腰かける。


「本当に居座るつもりなのね」

「当たり前です!」

「いても何もでないのに」

「一緒にいたいだけですから!」

「はぁ……」


 お姉さまの前にケーキと小さなクッキー、それから紅茶が置かれる。当然私の前には何もない。それでもちゃんと話せる機会ができて、私は上機嫌で笑みがこぼれてしまう。

 それが気まずかったのか、お姉さまはコレットにナプキンを一枚頼み、私の前に包んだクッキーを三枚置いてくれた。


「わ、私だけでは味気ないですもの。こ、これでも食べていなさい」

「わあ!ありがとうございます」


 本当に素直じゃないなぁ。素っ気ない態度なのに顔を真っ赤にして、しょうがないとばかりに差し出されたクッキーを一枚頬張る。

 甘くておいしい。確かこれもラ・フルールの物だったはず。

 お茶の時間に出てきたのはケーキだけだったので、このクッキーは正真正銘お姉さまのために買ってきていた物だ。

 それを不器用にも差し出して来た彼女の優しさに、ニマニマと笑みが止まらなくなってしまった。

 天の邪鬼というか、愛情表現が不器用な義理の姉が可愛すぎる。


「ああ、ほら。ぽろぽろこぼして。あなた元とはいえ伯爵令嬢だったのでしょう。みっともないわ」

「今日は特別なんです!お母さまもいないし、お姉さまと一緒だし」

「それでも淑女たものみっともないのはいけないわ」


 そう言うなり、私のこぼしたクッキーのクズを軽くナプキンで集めてくれる。

 それだけではなく、自分のカップを私に渡し、頬張りすぎると喉が詰まると言って飲み物も分けてくれた。

 やっぱりどう接すればいいのか分からなかっただけで、本当は仲良くしたかったのだろう。

 呆れ口調と態度だけど、邪険に扱うこともなく、反対に世話を焼いてくれる姿に私はまた笑い、給仕をしていたコレットも頬を緩ませていた。


「意地を張っていた私が、バカらしくなってきましたわ。家族と認めてあげてもいいわ。あなたも……お母様も」

「本当ですか!? 嬉しいです!あっ……」


 やった!目標達成!と立ち上がった拍子に、取りきれていなかったクズが床に散らばり、手にしていたクッキーがぽとりと落ちた。


「……私よりあなたの教養の方が大事なようね。お母様にそう進言しましょう」

「そ、それはやめてください!お母さまの勉強きびしいんですよ!」

「自業自得ですわ」

「そんな!」


 さっきまでの優しさはどこに行ったのか。お姉さまはつーんとそっぽを向き、優雅に紅茶を口にする。

 元伯爵令嬢の私よりも令嬢らしいその姿に、私はしょんぼりと肩を落とすしかなかった。

 精神年齢も足しから私の方が年上のはずなのに、これではどちらが上なのかもわからない。いや実年齢相応だと思えば、私の行動は当たり前のはず。

 でもやっぱり、ちょっとショックで今度は大人しくクッキーを口に入れた。




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