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あらためて、母と私と子爵親子が応接間のような部屋に集まり、あらためて自己紹介とこれからの話をすることになった。
それにしても、こうして近くで見ても本当に美青年だなぁ。隣に座っている娘も美少女で気後れしそう。
私の容姿も美人な母に似ているおかげで、可愛い感じの仕上がりだけどこの二人は別格。もう後光が射しているとしか思えないくらい。くっ、目がつぶれる!
「ではあらためて自己紹介をしようか。私はアドルフ・バイヤール、今日から君の父親になるからよろしく。この子は一人娘のルイーズだ。仲良くしてくれると嬉しいよ」
「よろしくお願いします」
「あ、はい。私はクロエ・マリ……、いえクロエです。年は八歳になりました。よろしくおねがいします」
「うふふ。クロエの母のアデライドです。仲良くしてくれると嬉しいわ。これからよろしくお願いしますね」
私と母の自己紹介にルイーズが露骨に顔を顰める。それにしても、綺麗な顔で嫌な表情をすると迫力がすごいなぁ。
そんなことをのんびりと思っていると、アドルフさまは今回の婚姻に至った経緯を話してくれた。
そうやらこの再婚劇は、双方の利害の一致で結ばれることになったらしい。
アドルフさまは、その美貌で社交界では有名人らしく、下位の子爵でも人気があるそう。そして三年前に前の奥さんを亡くして以降、再婚話がひっきりなしにきていたが、彼は亡き妻一筋の愛妻家で今まで再婚など考えてもいなかったそう。
しかし、先日彼の親友である私の父が亡くなり、未亡人となってしまった母と私が伯爵家を追い出されることを知り、亡き友人の代わりに私たち親子を守るために再婚を決めたそうだ。
対して、母も亡くなった夫一筋だったため、叔父の妾になる道よりは、夫の親友の後妻におさまることを選択したらしい。
お互い亡き伴侶に操を立てているので、この再婚は本当に私たち親子を守るためのものなのだそうだ。
そしてもう一つ、母は元伯爵令嬢であり、同格の伯爵家に嫁いだ生粋の高位貴族。その教養は下位貴族よりも高度で精錬されている。その教養を一人娘に施して欲しいという。
つまり再婚を隠れ蓑にした家庭教師のような役割を期待され、再婚したということだ。
なぜ私も一緒なのかは、まあ……あの家に一人でいるのは私のためにならない事や、親子を引き離すのは忍びない事、兄妹のいない娘のためらしい。どこまでいっても娘愛に溢れた御仁である。
「つまり私は、ルイーズさまの遊び相手のような役割ということでしょうか?」
「いやそれはちょっと違うな。この子はずっと一人でいたから、妹がいれば寂しくはないかなと思ってね」
「べ、別に私寂しくなどありませんわ!」
「こらこら、そんなこと言わない。こうして憎まれ口を言うけれど、かなり寂しがり屋さんだから仲良くしてくれると嬉しいんだ」
「ですから!寂しくなど……っ!」
「はいはい」
顔を赤らめ抗議するルイーズを優しく宥めるアドルフさま。本当に仲のいい親子だなぁ。ちょっと亡き父を思い出してしまった。
泣きそうになっていたらしい私の頭を、母が優しく撫でてくれる。それににへらと笑い返し、私はこれから始まる生活に不安と期待を織り交ぜてぎゅっと手を握り締めた。




