24 SIDE:とある少女2
SIDE:とある少女
そして次の日から、王子様は時間を見つけては会いに来てくれるようになった。
文字が分からないので、本で暇をつぶすことも出来ない私の話し相手になってくれたり、胸の中にある両親のモヤモヤした不満話を聞いてくれたりしてくれた。
そうしているうちに、だんだんと彼を好きなっていくのがわかった。
それを敏感に感じいち早く気づいたのは、私付きになっていた侍女たちだった。
私と王子様を一番近くで見てきた彼女たちは、まるで物語の様だと頬を染めて囁き合い、まるで映画やドラマの主人公を応援するかのように積極的に私たちの仲を取り持ちはじめた。
最初はお互いの食の好みや趣味なんかを教え合う程度だったのに、一週間もすればいつどの時間に会えるのか教えてくれるようになっていた。
でもこの行為が、王宮内を巻き込んでしまうほどになるとは、この時の私は知らなかった。
そのころから、王宮内では私を見る人の目が二種類あることに気づき始めていた。
一つは私を応援してくれる人たち。大多数は私付きの侍女のように若い女の子が多い。あとは少し年上の男の人も応援してくれているようだった。
もう一つはまるで疫病神とでも言いそうな程に嫌な顔を知る人たち。両親と同じ世代の人が多い気がした。風紀が乱れるとすれ違いざまに言われたこともあった。
その二種類の視線はだんだんと広がりを見せ、気がつけば私の身の回り以外にも広がっていた。
偉い人。宰相様という人が、王子と会わず大人しくしてくれと頼みにくれば、別の高官の男性が運命の愛を害することはできないと、宰相様の要請を無視すればいいと助言をしていく人が出てくる。
王子に婚約者がいるという話しを持ち出した侍女に、別の侍女が既に破棄されて今は誰もいないと反論する。
そんなことが増えていき、やがて事態を重く見た王様の命令で、私は王宮から少し離れた建物へと移動することになった。
これに周りはさらに反発。特に王子様は、不自由のない生活を保障するといっていたのに、約束を破ることになると面と向かって王様に食ってかかったらしい。
私も王子様と離れ離れになるのは寂しくて、王様に懇願してみた。でも王さまに冷たい顔でこれ以上王宮内の秩序を乱すなと怒られてしまった。
私はただこの知らない世界で、やっと見つけた心から信頼できる人と一緒にいたいだけだったのに。
そして一か月、二か月と過ぎていき、三か月目にやっと王子様と会えることになった。
広い屋敷に侍女数人と私だけの生活は、寂しさと息苦しさでどうにかなりそうだった。
特に侍女たちは仲良くなった人たちじゃなかったから、話しをしようとすると「仕事がありますので」と断りを入れて離れていってしまい、気を紛らわせることもできずにいた。
まるで行動を監視されているようで息が詰まる日々。そんな中、王子様が会いに来てくれた。
それが嬉しくて張り切って出迎えると、王子様はちょっと驚いてそれから抱きしめてくれた。ああ、やっぱり彼が好き。もうずっとこのままでいたい。
漠然とした想いは溢れ、知らず口から出ていく。それを聞いた王子様は同じ想いだとさらに強く抱きしめてくれた。
王子様がこの建物に来られたのは、頑張って与えられた仕事をこなしたからだという。
言葉は濁されたけれども、王様たちに何か条件をつけられたらしく、それを終わらせれば会いに来れるのだと言った。
だから毎日は来れない事。二週間に一回が限界な事を謝りながら話してくれた。
二週間に一回は少ないなと思った。でもこの三か月会えなかったことと比べれば、たいしたことがない気がした。
そうして私は二週間に一回会えることを楽しみに、一人広い建物の中で過ごした。
そしてこの生活は一年続き、もう帰らなくてもいい。ずっとここにいたい。
そう思っていた時、一年ぶりに宰相様が屋敷に来て「帰れる手筈が済んだ」と報告しに来た。
その時の私はどんな顔をしていたのだろう。
私の顔を真っ直ぐに見つめる宰相様の表情は、私を憐れんでいるように見えた。
そして「自分の世界に帰るのが君にとって幸せなんだ」と優しい声で言う。
なんで勝手に決めつけるの。私の幸せなんて私が決める事なのに。
そう言って怒りたかった。でも宰相様の顔を見たら、そんな気持ちもしぼんでしまった。
父親と同年代の宰相様は、まるで聞き分けのない子を諭すように「本当にこの世界は君にとっての幸せかい?」と言う。
「私には、君自身の意思で動いているようには見えないのだよ」そう言って、ポンと頭に手を置いて優しく撫でてくれた。
父親にもされたことのなかったのに、いやだと思えなくてされるがまま頭を撫でられる。
でも心の奥では「私自身の意思で動いてなんになる」と、自分が囁くのが聞こた。




