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「そんな思いを抱えたまま五年が過ぎ、大学――学問を修める所の卒業間近に控えた日、前触れもなくまたこちらに来ました。

運が良いことにアギヨン子爵様に拾われ、子爵様経由で宰相様に連絡がいったようです。

宰相様もなぜ俺がまたこの国に来たのか分からないと言っていましたが、もしこれが当時を知る方々に知られればまた騒ぎが起きると言われ、宰相様の提案でアギヨン子爵様の養子として迎い入れていただきました」


 まあ、そうなるでしょうね。当時の対立は凄まじかったという話しだし、ハルトがこちらに来たのなら、例の少女も来ているかもしれないと、騒動の原因の王子様が騒ぎ出すことは確実だもの。


「私どもも驚きはしましたが、宰相様の言う分は最もなことだったのでお受けいたしました。

当時、我々は王都から離れた領地におりましたので、直接的に被害には合っていませんが、騒動の時に婚約の見直しする動きが見受けられたのは記憶にありましたので。

それともう一つ、これは彼に対してのお詫びのようなものだったのかもしれませんが、貴族のご令嬢と婚約するのならば、身分は必要だと思われたのでしょう。

お節介が過ぎるかもしれないがとお笑いになりながらの提案でした」

「それは宰相様らしい」


 お父様とアギヨン子爵様が宰相様を思い笑う。

 ずっと思っていたけれど、宰相様って苦労性よね。迷惑極まりない王族の補佐をして、騒動を治めるために奔走して、各貴族間のもめ事にも注視し時には介入する。

 未だに独り身っていうのは、ハードワーク過ぎて女性との出会いがないだけじゃないかしら。


「ええと……ごほん。拾われて半年、一般教養は身につきました。文字の読み書きはまだ覚束ないこともありますが、教師から及第点は頂いています。

政治や経済などはこれから勉強しなくてはいけないですが、将来女子爵になる貴女様の助けになるよう頑張ります」


 ハルトは真っ直ぐにお姉様を見つめ言葉を紡ぐ。嘘偽りのない、昔のままのハルトにに、お姉様の瞳が潤んでいく。


「ルイーズ・バイヤール様。どうか、俺と婚約をしていただけませんか?」

「……本当にハルトですの?」

「はい。ルイーズお嬢様」

「わ、私で……本当によろしいのですか?」

「お嬢様だからいいのです。子爵令嬢でも妖精姫でもなく、頑張り屋で天の邪鬼で、誇り高いルイーズ様が好きです。

俺は年上だし本当の身分は平民です。一般常識もなく知識にも偏りがあります。そんな俺では相手になりませんか?」

「いいえ……いいえ!わ、私もずっとお慕いしていました。でも貴方は元の世界に帰るべきだと思って、この想いはずっと胸のうちにしまっていました。

それに私は子供で、貴方に想いを告げることはできなかった。貴方に迷惑はかけたくなかった。それでもこの想いは消えなかったのです。

ハルト、いえハルト様。その申し出喜んでお受けいたします」

「よ、よかったぁ……」

「わぁ!?ハルト大丈夫!?」


 お姉様は感涙で答えた瞬間、ハルトが脱力してしまった。

 慌てて声をかけるも、手を振り大丈夫のジェスチャーのみで答えてくる。これはよっぽど緊張していたんだろうな。

 婚約打診の顔合わせの席でこの無作法にも関わらず、両親は良かったと顔を見合わせ笑い合い、アギヨン夫妻も苦笑いでシャキッとしなさいと言うだけだ。


「あ、はい。大丈夫です。クロエお嬢様に心配されるようじゃ、まだまだですね。貴族は顔や態度に出していけないと教えられましたし」

「まあ失礼な!もう子ども扱いしないで!私も十五歳ですよ!これでも婚約者のいる立派な淑女ですぅ!」

「……クロエ。立派な淑女は叫ばないし、乱暴な言葉使いはしないわよ。お母様のお顔を見て見なさい」

「はうあ!?」


 さっきまで微笑んでいたお母様の顔が般若に。これはあとでお説教確定。

 おっとり性格なのにマナーだけは厳しいお母様の全合格をやっととれたのに、また振り出しに戻るのは勘弁!

 しょげる私を懐かしそうに見るハルトに、私はむくれながらそっぽ向いた。


「もう!お姉様と結婚するなら、お義兄様と呼ぼうと思っていたのに。それならまだ呼び捨てにしていてもいわよね。ね、ハルト?」

「まあ!それはダメよ。名前を呼び捨てでお呼びしていいのは私だけの特権になるの。貴女はお義兄様と呼んでもらわないと」

「おやおや」

「あらまぁ」


 まさかのお姉様の独占欲の発言に、アギヨン夫妻は呆気にとられ、両親は微笑ましく笑う。

 発言した当の本人は、今自分が何を言ったのか周りの反応を見て理解したのか、真っ赤になり手で顔を覆い俯いてしまった。

 相変わらず天の邪鬼で照れ屋のお姉様の後頭部を眺めながら、私は知らず胸元に手をあて息を吐き出した。



 ああ。やっとお姉様の幸せな顔が見れた。五年前のあの日から曇っていたお姉様。

 きっとハルトはお姉様を護り幸せにしてくれる。

 照れて俯くお姉様と、それを見て同じく顔を赤くしながら嬉しそうに破顔するハルトを見て私もまた心から笑った。




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