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 それから五年の時が過ぎ、様々なことがあった。

 お父様とお母様の二人は相変わらず仲がよく、お姉様はその美貌に磨きがかかり、隣国の貴族からの縁談話もくるほどだ。

 私はと言うと、まさかのマクシム先生の息子と婚約した。

 マクシム先生は男爵位を持っているので、婚姻を結んでも問題ない。そして息子さんは私の一つ上。

 身分も歳も釣り合う上に、何より義理の父になるマクシム先生とは仲?が良い。

 あの性格についていける人でなければ、嫁に来れないという理由が一番らしい。なんだか素直に納得してしまった。

 それは私以外いないと、義理の母になる男爵夫人が「ぜひ!」と意気込んで縁談話を持ち込んできたという経緯がある。

 婚約者になった男爵令息は、先生に似ず穏やかで優しい人だ。少しだけ頑固で意地悪な面を持つが、先生のように無神経に人を逆なでする人ではない。どうやら性格面は母親に似たらしい。それだけが救いだ。

 きっとこの人となら、両親のように穏やかで楽しい家庭がつくれると思うくらいに好きなった。

 ただ問題になったのは、お姉様の婚約者の話。

 妹の私が先に婚約したことで、お姉様の婚約の話が激化した。比喩ではなく本当に激化した。

 面会の話はひっきりなし。贈り物は毎日届く。待ち伏せされたこともあった。

 そんな環境のせいで、お姉様は外出を制限されてしまい、家族全員で頭を抱える羽目になってしまった。

 護衛を多く雇うことでなんとか落ち着くことができたけれども、それでもやっぱり迷惑野郎はいるもので、たまに憲兵に引き渡される姿を目にすることがある。

 社交界デビューした時のことは思い出したくもないので、そっと記憶の片隅に置いておきたい。

 とりあえず、他の令嬢の誰よりも注目された事だけは確かだといえる。

 ちなみに、我が子爵家は下位貴族なので、本来は高位貴族の申し出に否を言えない立場なのだけど、ハルトを預かっていたことで、王家が特別に好きな相手との婚姻を許してくれた経緯がある。

 どうやら、王子のやらかしの尻拭いのようなことをさせてしまった詫びらしい。

 これは異例な事ではあるが、事情を知る人が高位貴族に多いので各々思うことはあれど素直に従ってくれた。

 でもその影響で、お姉様の目に留まろうと必死にアピールしまくって、迷惑かける輩が出てきてるのがなんとも……。

 そう、そのお姉様だけど、先日、お姉様にどんな人なら婚約者にしてもいいのか聞いたが、優しくて行動力があり、家族を優先してくれる人だと答えた。

 その顔が儚く切なくて、ああ、五年も過ぎているのに、お姉様はずっと彼を想い続けているのだと実感してしまった。

 

 ああ、ハルト。今どうしてるんだろう。





「お姉様に宰相様からご紹介が?」

「宰相様の親類の子爵家の子息らしいだけどね、今まで他国に遊学していたから社交界では無名なんだそうだ。

それで伝手を使って、嫁いでくれる人を探しているらしい。うちに打診が来たのも複数あるうちのひとつだろうと思うよ」

 

 おそらく宰相様と関わりがあり、家の力関係で敵対にならない所に紹介がいっているんだろう。

 宰相様はお父様の上司だから、うちも付き合いで紹介された感じかな。

 お父様が言うには、そのご子息は子爵家の三男で遊学が長いため、ややこの国の常識に疎いのだという。

 でもそれ以外では、温厚で人当たりが良く、誰にでも優しいらしい。それだけでなく、他国に行っていたために自衛手段として武術を身につけているのだそう。

 なんだか、どこかの誰かを思い起こさせる人物に、私はコテンと首を傾げた。


「それは随分と出来すぎ……いえ、なんでもありません」

「うん。言いたいことはわかるよ。私もそう思ったからね」


 私の言葉にお父様は苦笑で返し、これは決定事項でお姉様には既に話を通していると言う。

 お姉様はこの話にあまり乗り気ではないけど、お父様の顔を立てるため会うことを了承したらしい。


「それで? なぜ私が呼ばれたのでしょうか?」

「クロエはルイーズにべったりだからね、今回の話を聞いて駄々をこねないようにかな」

「まあ!お父様! 私ももう十五ですよ! 確かに大好きでずっと一緒にいたいくらい憧れの人ですが、お姉様の縁談の邪魔はしません!」

「わかっているよ。一応お願いのために呼んだだけだから」


 この五年で私も成長したのに、お父様の中では私はまだ小さい子供らしい。

 確かにお姉様大好きを公言して憚らない私だけど、大事な姉の縁談を邪魔するマネはしない。

 抗議する私を苦笑で返すお父様に、再度心外ですと言わんばかりに睨み付けた。

 




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