14
ハルト達が召喚され一年が過ぎた。
一年という時間は彼に帰る気持ちを無くさせるには十分だったのか、ハルトは積極的にこの世界のことを学び始めている。
元々頭がよかったこともあって、かなり吸収が早いらしい。
簡単な文字なら読めるようになった聞いた時は、学習面ではお姉さんなのだからと偉ぶって「まだまだね」と軽口を叩き、「生意気だな」と乱暴に頭を撫でられた。
まるで本当の兄のように接してくるハルトに、私はやっぱり帰って欲しくないと思ってしまう。このままいてくれたら、どんなにいいことだろう。
でも、お父さまの話から帰る方法が見つかったかも知れないと聞いて、この思いは口にすることはなかった。
ただまだ実験段階なので、この話はハルトにもしていないという。ぬか喜びさせたくないそうだ。
それとハルトとお姉さまの関係も相変わらず勉強仲間兼、遊び相手として仲良くしている。
お姉さまは十二歳になり、婚約者の話も持ち上がってきはじめた。
国内でも屈指の美少女ともなるとかなりの数の縁談が舞い込んでくるらしい。娘命のお父さまは頭を悩ませる日々が続いている。
その話を聞いてもハルトの態度は変わらない所から察するに、お姉さまに対して脈はなさそうなのが何とも言えない。
やっぱり雇い主の娘だからなのかな。それとも妹としてしか見れないとか?
そこであ!とあることに気づいた。彼が異世界、しかもニホンの人間だってことに。
私の前世の記憶が囁く。十八歳と十二歳で恋愛は普通に犯罪だということを。
この世界では十二、三歳で婚約者がいるのが当たり前。十七、八歳になると適齢期で、二十過ぎて二十代半ばになると最早嫁ぎ遅れと言われる。
それに十歳差程度ならば許容範囲として、普通に歳の差結婚が当たり前の世界。
彼の価値観と全く違う。こんな大事な事を失念していた。
「……世界が違うとか以前に、道徳・倫理観の違い……」
脈どころかそんな考えさえ持ち合わせていない。
お姉さまの初恋は本当に実らないことが確定した。




