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悪魔っ子ミナの魔界冒険譚  作者: minori
第2部 封印の森編
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第24話 女王 リリシア

パンデモニウム城に到着すると、私たちはすぐに中へ通された。


どうやらお婆ちゃんは、私たちの到着を察知していたらしい。


きっと、道中も見守ってくれていたのだろうな。私はお婆ちゃんがどんな人なのか、会いたくて仕方がなかった。


「ねえねえアーク……お婆ちゃんってどんな人なの?」


するとアークはドキッとした顔をして私を見た。そして数秒間沈黙した。


「……とってもいい人だよ? 優しくて……」


私が彼をジッと見つめると、アークの目が泳いでいる。アークのその態度は私を少し不安にさせた。


お婆ちゃんって、一体どんな人なの……。


私が思うような、顔中皺だらけで微笑む優しいお婆ちゃんではないのだろうか。


それとも、魔界の女王というだけでアークがビビっているのかもしれない。


いずれにせよ、私は彼女の孫なのだ。少なくとも嫌な目に遭わされることはないはずだ。


「さあ、こちらへどうぞ。女王様がお待ちです」


案内人の人が、巨人でも通れそうな大きな扉を開けた。するとどうだろう。中は体育館ほどもありそうな広さの、謁見の間が現れたのだ。


天井には豪華なシャンデリア。あちこちに、絵画や彫刻がいくつも飾られている。


そして、足元から真っ直ぐに伸びた赤い絨毯。その先には何段かの階段を上がったところに玉座があって、そこに真っ黒な皮の戦闘服を着た女性が座っていた。


「んんんー?」


私は目を剥きながら小首を傾げた。玉座に座っているのは、どう見ても皺くちゃのおばあちゃんじゃない。


いやむしろ、ピチピチの若い肌を持つ、色気ムンムンの女性なのだ。それに服。ピッチリとしたショートパンツに黒革のジャケット。そして腰には魔法銃のホルスターがチラリと見えた。


「ああ、ミナ!私の孫!」


その、黒革戦闘服の女性が立ち上がって、両手を広げた。そして濃い赤の口紅を引いた口元を綻ばせ、満面の笑顔で私を見ているのだ。


「お婆ちゃ……んん?」


するとその女性は大きく頷いた。


「私の名はリリシア・ノクトゥルナ。魔界のクイーンよ」


リリシアは両腕を広げて、手の平をクイッ、クィッとしている。


「お婆ちゃんよ、ミナ!さあいらっしゃい!」


私はチラリとアークを見た。


するとアークは顔を顰めながら、顎でサッサと行け!と言っている。これは行かないとヤバいやつだ。


私は小走りに走って、玉座へと向かった。


近づいてみると、女王はとても美人だった。しかも足が長い!胸もバインバインと揺れているし、お尻もプリプリとしていた。


だが何よりも、女王としてのオーラが半端なかった。私は玉座に上がる階段の手前で立ち止まった。


「何をしているの?こっちへいらっしゃい!」


女王はそう言うが、玉座みたいな所へ上がってもいいのだろうか。私は振り返ってアークを見た。彼の顔は非常に険しい表情をしており、サッサと行け!と言っているようだった。


私が階段を登ると、お婆ちゃんはそばに来て私を抱きしめた。


「会いたかったわ、ミナ……あなたのお母さんが人間になっちゃった時は、もう孫の顔を見るのは不可能だって絶望していたのよ」


「お婆ちゃん……」


私は思わず涙をポロリとこぼした。


「リリアが死んだと聞いて、私は海より深く悲しんだわ……でもね、あなたと会えたことで、私は新しく生きる希望を見出したのよ」


「お婆ちゃん……なんか若い」


すると女王は目をパチクリした。そして笑顔で微笑む。


「お婆ちゃんが皺くちゃじゃなくて驚いた?私ほどの魔力持ちとなると、常に細胞を若返らせていてね、いつまでも若さを保っていられるのよ」


「すごいわね、お婆ちゃん」


孫に褒められて、リリシアはまんざらでもない顔をした。


「おや?」


リリシアの視線が曇った。そして奥で控えているアークをジロリと睨んだ。


「アーク!一体、何があったの! 説明なさいっ!」


「はいっ!」


アークが風のように飛んでくる。


「この子の……ミナの首にあるこの黒い輪は一体何なの?」


するとアークは下を向いた。


「リリア様たちを襲ったセラフィムたちが、1ヶ月以内にリリア様の宝を探し出さないと、首を締めるぞと脅して去ったそうです」


「なんですって!」


その話を聞いたリリシアは、顔を鬼のような形相にしてアークを睨んだ。アークは顔を青ざめさせた。


「俺はリリア様が死の直前、ミナを救出に向かうよう指令が来たんです。その時にはもう、首に黒い跡がありましたよう」


リリシアは怒りのあまり爪を噛んだ。


「おのれセラフィム!……それにしても1カ月しかないのかい?」


「はい……そうなんです」


リリシアはミナの黒い首輪を確かめた。そして、ウウムと唸った。


「しょうがない、殺すか、セラフィムを!」


すると、奥で控えていた男が急に駆け寄ってきた。


「お待ちください! 今、セラフィムと事を構えたら、天界と魔界の全面戦争になりかねません」


「アイゼル!奴は私の娘を殺して、孫を殺そうとしているんだぞ?これが放っておけるか!」


怒り心頭なリリシアを、アイゼルは必死になだめる。


「お気持ちはわかりますが女王様……宰相として容認出来ませぬ。でも、今は時が悪い…… 今、軍が魔界を留守にすると、女王様に楯突くヴェルグリーズたちの勢力が牙を剥くに決まってます。なんとしてもご辛抱を!」


それを聞いたリリシアは歯噛みした。


「では、アイゼル!貴様はこの私に、孫が苦しむ姿を黙って見ていろとでも言うのか!」


「いえいえ、とんでもございません」


アイゼルは頭を下げた。


「とりあえず、この系統の呪いに詳しいリメルという男がおりますので、まずは彼に見てもらいましょう」


それを聞いたリリシアは唸った。


「アイゼル……早速だが、そのリメルとやらを呼んでくれんか」


するとアイゼルは頭を下げた。


「はい、今すぐ呼んで参ります」


アイゼルはペコリと頭を下げると、風のように玉座から去って行った。それを見送ったリリシアは、私の方へ向き直って悲しげな顔をした。そして私の体を優しく抱きしめた後、私の目を見ながら言った。


「ミナ……あなたには苦労をかけて本当にごめんなさい。でもね、誰しも親を選ぶことはできないの。だから、あなたはこの状況を受け入れるしかないのよ?わかる?」


私は小さく頷いた。


「ええ……わかってる……なかなか受け入れ難いけど、もう理解した」


私は肩をすくめた。


「まあ、なんて偉い子なの!」


リリシアは眉をハの字にしながら私をギュッと抱きしめる。泣いているのか……リリシアの肩をしゃくりながら涙を流していた。


私は慌ててリリシアの肩を摩った。


「おばあちゃん、心配しないで!私なら大丈夫よ!」


するとリリシアは体を離して私をジッと見つめた。


「偉いわねえ、ミナ……さすがはお婆ちゃんの孫だわ」


「えーと、そうね。ハハ、まあ、早く受け入れなかったら、死んじゃってたかもしれないし?」


私がそう言って笑うと、リリシアは微笑んでくれた。そして彼女はしばらく思案した後…私の方へ向き直った。


「ミナ……人間のあなたが、魔界天界の者たちと渡り合うには、かなり大変なことになると思うわ。私はそんなあなたに贈り物をしたいの」


「贈り物?」


「お婆ちゃんだから、孫に甘いと思うかもしれないけど……私に出来ることってこれくらいだものね」


リリシアはそう言うと、片手を天に向けてあげた。すると、何もない空間に黒い穴がぽっかり開いた。


「出でよ、レガリア!」


リリシアがそう叫ぶと、黒い穴から真白な宝石箱のようなものがゆっくりと降りて来た。リリシアはその箱を掴むと、そっと中を開けた。するとそこには、キラキラと輝く腕輪と指輪、そしてネックレスが光っているではないか。


「ミナ、ちょっと来なさい」


そして、女王自ら私の指や腕……そして首にその宝石を取り付けていった。


「この3つの宝石はね、ストームバウンド・レガリアと言って……魔界の女王により認められし者のみが身に着ける、特別な魔道具なのよ」


私はそれを聞いて胸が躍った。私にもアイテムがもらえるのだ。リリシアはまずネックレスを手に取った。


「これはヴォルトハート・ネックレスといってね、雷魔法の力が、気持ちの乱れに左右されず、コントロールが良くなるの」


私はその時チラリとアークを見た。すると唇を尖らせてお前のことだよって顔をしていた。


「ええ、わかったわ!インバータみたいなものね?」


「え、ええ……その、インバータっていうものが何かわからないけど、多分そうだと思うわ」


リリシアはそういうと、次に腕輪を取り出した。


「次にこの腕輪だけど……ストームクリスタル・アームレットと言って、対雷魔法に特化したアイテムよ。簡単にいうと、相手から受けた雷魔法はすべて自分のエネルギーに出来るわけ」


「へえ!すごーい!」


私は驚いた。ということは、対雷魔法は無敵ということではないか。


そして、最後に指輪をつけてくれた。


「この指輪はサンダーブランド・リングといって、一つだけ強烈な雷魔法を覚えさせることが出来るの。とりあえず、私が強烈なものを一つ覚えさせておいたから、ピンチになった時使いなさい」


リリシアは私の両手をギュッとにぎった。


「この3つが女王の三雷具……ストームバウンド・レガリアよ」


リリシアは私をじっと見つめた。


「ありがとう、お婆ちゃん……」


私は祠で見たタロットの結果を思い出していた。導く者がいる……それはきっとお婆ちゃんのことだったのだろう。


その時、宰相のアイゼルが1人の男を伴って戻って来た。


「リリシア様!リメルを連れて参りましたぞ」


みんなの目が、アイゼルの背後にいるリメルに集中した。リメルは金髪巻毛の背の高い青年だった。


この人がこの首輪を解除してくれるかもしれない!……そう思った時、私は期待で胸が高鳴るのだった。




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