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悪魔っ子ミナの魔界冒険譚  作者: minori
第2部 封印の森編
23/25

第23話 ミナの魔法

「カンコネルが死んだだと!」


セラフィムが叫んだ。


イサルフェは、セラフィムの部屋を訪れて、先日の戦いを報告していた。カンコネルの死を知って、セラフィムの怒りは相当なものだった。


「あの、リリアの娘はそんなに強大な力を持っているのか!」


「いえ……彼女自身はただの人間……握れば潰れる程度の弱い存在でした。まともに戦えばカンコネル様の敵ではなかったのですが……」


「奴はミナを完全に舐め切っていたのだろう」


イサルフェは頭を下げる。


「その通りでございます」


「イサルフェ、お前もお前だ。よくノコノコと帰ってきたもんだな」


セラフィムの嫌味も、イサルフェの胸には響かないようで、彼は涼しい顔をしている。


「私は元々戦闘向きではありませんし……

闘って死ぬより、情報を帰る方が良いと判断致しました。しかし、処分ならいかようにでも……謹んで御受けしますが」


セラフィムは眉間に皺を寄せながらため息をついた。


「……もう良いわい。それよりあの娘はなんであんな森の中へいたのだ?」


「リリアが魔導書を隠していたのですよ」


「魔導書だって?」


セラフィムはギロリとイサルフェを睨みつけた。


「まさか、雷魔法じゃないだろうな?」


するとイサルフェはニコリと微笑んだ。


「その、まさかです」


セラフィムは何か心当たりがあるのか、小さく頷きながら唸った。


「やはり、血は争えんということか」


「油断はなりません。ですが、コントロールも未熟で、魔法の種類も初歩の初歩です。熟練する前に始末した方が良いでしょう」


セラフィムは眉間に皺を寄せながら無言で頷いた。


「しかし、よくそこまで調べあげたな。どうやって探ったんだ?」


「そりゃあ、こっそり覗いていたのですよ、セラフィム様」


それにはセラフィムも少し驚いた顔をした。


「なるほど、大胆だな……お前の本気は良くわかった」


イサルフェは少し頭を下げながら微笑む。


「私も手ぶらでは帰れませんから」


セラフィムはニヤリと笑った。


「それで従魔はどうなんだ?」


「それが、カンコネル様との戦いで負傷したらしく、まる一日眠ったままです」


「治癒魔法は?」


「初級が使えるようで、ちまちま治しておりました」


「それで、お前は奴らの動きは把握しているのか? 今後どう動くと見ているんだ?」


「もちろん、彼女たちは必ずルカリエルの遺跡に向かうはずです」


「なぜそう断言できる?」


「今、彼女たちは魔界へ向かって出発しました。つまり、そこで遺跡の情報を手に入れるとすれば、ミナは、まずルカリエルの遺跡に関心を示すはずです」


「だが、根拠としては少し弱いな」


「もちろん推測の域は出ません。ですが、少し手は打っております」


「何をしたのだ?」


「ヴェルグリーズの部下と接触して、世間話をしながら情報を流しました」


セラフィムの目がギラリとした。


「堕天使ヴェルグリーズを利用するつもりなのか?」


「彼らは魔界の中でも、反女王派として勢力を集めております。そんな中で女王の孫でもあるミナの登場は気になるはずです」


セラフィムは顎に手を当てて思案する。


「ようし、その件に関しては、私の方から別ルートで工作しておこう」


イサルフェは頭を下げた。


「お前はあの小娘を追跡し、逐一動向を報告せよ。遺跡でも待ち伏せはバタネルにやらせる」


「承知しました」


イサルフェは、伏せた顔をニヤリとさせた。




私たちは魔界の門をくぐってから、1週間くらいかかって魔界の首都、パンデモニウムに到着した。


アークの話だと、今いる森を抜けると、パンデモニウム城のある首都の中心部に到着するという。


アークは日暮れまで到着したいと言うので、3人は少し早足で進んでいた。


「ねえアーク……空を飛んで行った方が早いんじゃない?」


「馬鹿いうなって、この森で闘いながら魔法の技を磨くのが目的なんだぞ」


アークはわざわざ振り返って私の顔をジッと見ながら言った。


「お前の魔法の技をな!」


「ふえええ……」


「それにしても、お前が雷魔法使いに進化するとはなあ……驚いたぜ」


「う、うるさいわね! カッコいいでしょ? 私にピッタリじゃない!」


「しかし、もう少し他にも無かったのか? 使えそうな魔法がよ」


しかし私は首を横に振った。


「それが全然ダメなの」


「そっか……しかし、覚えた技はなかなか使い所の難しいものばっかだな」


すると私は顔を真っ赤にした。


「や、役に立たないって言うの?」


「いや……そういうわけじゃないけどさ……新しく覚えた技は3つあったろ?」


私は頷く。アークは続けた。


「一つ目は”エレクトリック・トラップ”だ。あれは水たまりなどへ電流を流して、一時的に蓄電させ、それを踏んだ奴を感電させるもいう技だ」


「いいじゃない、罠の使い道は多いでしょ?」


「だけど、あれは時間が経つにつれて放電して、最後は効果がなくなってしまう」


「いいじゃないの! 後片付けが不要だわ!」


私は必死で抗議する。


「2つ目はサンダー・アーマーだったな」


「あれは私を守ってくれる電気の鎧じゃない?何が悪いの?」


「いや、守ってくれるのはいいんだが、近くにいる俺たちが触れても感電するじゃないか」


「ま、まあ、そうだけど!」


「そうなると、俺たちはお前に何かあっても助けられない」


「うぐぐ……それは困るわね……」


「3つ目のサンダーワイヤーは使えそうだな。……でもなあ、これも敵を拘束するっていうより、縛り上げて感電させるって感じの魔法だしなあ……」


「う、うるさいわね! テーザー銃みたいに使えばいいでしょ?!」


「いや、文句ばっかり言って悪いが、決定的な攻撃手段に欠けるってところが、俺は心配なんだ」


私は大きなため息を吐いた。


「あーあ、私にも、何か魔道具が入ってればよかったのに」


するとアークは私の髪をちょっと触って言った。


「ミナにはその髪飾りがあるだろう。それも魔道具じゃないか」


「あ、これ?」


私は今や髪飾りと化している、この天使の輪みたいなものを思いだした。


「でも、最近、ウンともスンとも言わないのよね」


するとアークは何か言いたげな顔をしたが、何も言わなかった。


そこへノクスがやってきて、ミナ見上げるようにニコリと笑った。


「でもミナは、道具なんかなくても雷が撃てる」


すると私は指先をピストル型に変えて構えて見せた。


「これのこと?」


ノクスは頷く。


「道具は無くしたり、取られたりしたらもう終わり。だけど、身についた魔法は奪えないの」


「うーん、確かにそうだけど」


ノクスにそう言われると、なんだかそんな気がしてきた。まあ、これで良かったのかも。私は少し嬉しくなった。


「とにかくお前は、サンダーボルトの命中率を上げることに専念しろ」


「ば、馬鹿にしないでよ!これでも随分と当たるようになったんだから!」


私が顔を真っ赤にしながら抗議すると、アークは珍しくあやまった。


「ゴメンよ、ミナ。君のことを悪く言うつもりはないんだ。サンダーボルトの威力も相当なものだから、それは君の切り札になるだろうからね」


私はアークが珍しく私の事を褒めるので、意外に思って聞き入った。


「だけどね、君は感情に左右されやすいんだ。すると魔法の矛先がブレるんだ。そのうち僕やノクスを巻き込むことになるだろう。もうちょっと落ち着きを身に付けた方がいい」


それを聞いて私は頭に血が上った。


「この、馬鹿アーク!」


私はアークの顔面に拳を叩き込んだ。だがアークはひらりと拳を躱した。


「まてまて、ミナ! ほら、あれを見ろ!」


「もう!あれって何さ!」


「ほら、城だ、城に到着したぞ!」


私が顔をあげると、夕焼け空をバックに、真っ黒な城のシルエットが浮かび上がった。威厳のある黒い城……パンデモニウム城だ。


私はその夕日と城の美しいコントラストに感動していた。


「あそこに、私のお婆ちゃんがいるのね……」


アークは頷いた。


「ああ。もうすぐ会えるよ」


私の目から涙がこぼれた。父さんも母さんもいなくなったけど、まさかお婆ちゃんに会えるなんて……。


私の中に、白髪交じりの老婆のイメージが浮かぶ。


世の中の、たいていのお婆ちゃんは孫に優しい。


きっと、私のことも可愛がってくれるだろう。


私は期待で胸をワクワクさせた。そして、オレンジ色に染まった空と城を見上げて、ニコリと微笑んだのだった。



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