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悪魔っ子ミナの魔界冒険譚  作者: minori
第2部 封印の森編
22/25

第22話 魔界の門

母さんと秘密の部屋で出会った翌日。


私たちは祠を出発した。


いつも通り、アークは私をお姫様だっこして空を飛んだ。ノクスは小さな黒猫に変化出来ることがわかったので、私の腕の中に抱かれている。


「ちょっとアーク。あんたの箱には何が入っていたのよ?」


「え? 箱の中身? ……後で教えてやるよ」


それを聞いた私は不服そうな顔をした。


「なんでよ? 今教えてよ」


「そんなの後でいいだろ?」


「だって暇だもん!」


「暇だって??」


アークは大きな口をポカーンと開けたまま、じっと私を見た。


「馬鹿なのか?お前は暇かもしれねえけど、俺は今、お前を抱いて飛んでんの!」


「口は動かせるでしょ?」


「嫌だよ面倒くさい」


「えー! 教えてくれたっていいじゃない! ケチなんだから!」


私がすねて頬を膨らませると、アークは笑った。


「もうすぐ嫌でも見ることになるさ……ほら、着いたぞ」


「着いたの?」


「ほら、正面に大きな岩山があるだろ……あの下に魔界の門がある」


アークはそう言いながら岩山の前に着地して、私を地面に下ろしてくれた。そして、ノクスは私の腕から飛び出し、クルリと一回転しながら着地した。


「まず聞いておくが、ミナ。お前、もらった魔導書は全部読んだんだろうな?」


アークに聞かれて、私は胸を張って答えた。


「当たり前でしょ?あんたたちが寝ている間に、全部読んでしまったわ。すっごく退屈だったんだから」


それを聞いて、アークは笑った。


「そりゃ、良かった。寝てた甲斐があるってもんだな」


そう言いながら、魔界の門を開けた。そして私を振り返ってジッと目を見た。


「この門はある程度の魔力がないと入れなくなっている。弱い奴が入って死なないようにな」


「それじゃあ、ここから先は危険だらけってこと?」


アークは頷いた。


「魔獣がウロウロしてるからな。だが、今の俺たちにとっちゃ、話は別だ」


「別って、何が別なのよ?」


「つまり、お前のお母様の考えはな……魔獣を倒しながら戦闘訓練を積みなさいってことだよ」


それを聞いた私は肩をすくめた。


「なかなかスパルタ教育をする母親ね!」


それを聞いたアークも私の真似をして肩をすくめた。


「せいぜい死なないよう頑張ってくれ」


そんな話をしながら、私たちは魔界の門をくぐった。


門の中は森だった。周囲を見渡しても木ばっかり。何も見えない。


「あれ、中も森よ? 本当に門を潜ってる?」


「ああ、見た目は似てるけど、ここは魔界の森だ。油断してたら魔獣が襲ってくるぞ」


「えーっ!ホントに?」


私は、こんな所に魔獣がいるのか……そして魔獣とはどんな姿をしているのか気になった。


その時である。


私の首にある黒い輪が、急に締まったのだ。


「あああっ!」


私は思わずその場にしゃがみ込み、そして膝をついて地面へ倒れた。


「ミナ!」


アークとノクスが私のそばへ駆け寄ってくる。ノクスが私の背中をさすってくれた。


ギリギリと軋む音を立てながら、やがて締め付けは緩んでいった。


「はあはあ……」


しばらくすると、呼吸が出来るようになってきた。私は大きく息を吸った。


「ミナ、大丈夫?」


「おい、ミナ!」


うずくまって苦しむ私に、二人は優しくしてくれた。私は顔を上げて笑顔を作ってみせた。


「はぁはぁ、もう大丈夫よ……平気」


すると二人とも悲しそうに唇を噛んでいる。私は呼吸を整えていく。


「毎日、毎日締め付けられても慣れないものね」


「こんなの慣れる必要ない」


アークが背中をさすってくれた。息もだいぶ楽になってくる。


「いいかミナ。魔界に行けば何か解決方法が見つかるかもしれない。もう少しだけ、頑張るんだぞ」


私はアークをジッと見つめなから口をギュッと結んで、小さく頷いた。


「そうだ、気分転換に俺の武器を見せてやろう」


アークは立ち上がって腰ベルトの鞘から短剣を抜いた。


「短剣?」


「この剣の名は、ダークネスクリーブというんだ。闇魔法で刃を作り出している。刃の長さは魔力によって調整出来るんだが、長くすると魔力の消耗が激しいから、通常は短剣として使うんだ」


そういうと、アークは剣を抜いた。そして、前方に向かって飛び上がると、草むらへ石を投げた。するとそこには虎型の魔獣が隠れていたのだ。


「ええ!虎?!」


私は驚いて飛び下がった。


ギャオウ!


虎の爪がアークに飛ぶ。


だが、アークは宙を蹴って反転しながら軽く躱した。さすがは重力魔法の使い手だ。


「ほら、魔獣はこんなふうに待ち伏せするから気をつけるんだ!」


アークはまた、それを軽く飛んで虎魔獣の背中へ回り、背中をドンと踏むと、耳を軽く斬ってから地面へ着地した。すると虎の魔獣は飛び上がって森の中へ逃げ去るのだった。


「どうだ、俺の軽やかな身のこなしは!」


「へえ……凄いわねアーク」


「……しかし本当にすごいのはな、この剣はあらゆる光属性の魔法を斬ることができるってことだな」


「光属性の?」


「ああ。天使が使う魔法の多くが光属性だからな。そいつを斬れるってことは……天使たちにとっては、なかなか恐ろしい武器なわけさ」


「へえ~!」


私が感心していると、アークは魔剣ダークネスクリーブの刃を消して、腰の鞘へと収納した。


「じゃあ、次はノクスな」


すると地面でしゃがんでいたノクスが、ピョンと立ち上がった。


「うん、わかったよ」


ノクスがトコトコと先頭に立った。ノクスは母さんに魔力をもらったけど、アークみたいに外見が変わることはなかったみたいだ。


ショートカットに猫耳、小麦色の肌にクリクリっとしたにゃんこの目が可愛い!


「ノクスがもらったのはね、これなんだよ」


ノクスが片腕を上げると、手首にシルバーの腕輪が光った。


「アクセサリー??!」


ノクスは笑った。


「そうだよ!可愛いでしょ?」


「でも、それどうやって使うの?」


「それはね……こうするの……!」


するとノクスはパッと前へ飛んで腕を振ると、手首からワイヤーが飛び出して、茂みに隠れていた魔獣の脚を縛りあげた。


ブモオオオ!


草むらの中から、足にワイヤーを巻き付けたバッファローのような魔獣が現れた。


「えっとね、シャドウ・ワイヤーといってね、太さと先っぽを変えることが出来るんだ。敵を縛り上げたり、鞭として使ったりもできるんだよ」


「……す、すごいわね!」


私が驚いていると、ノクスは腰のホルスターからリボルバー型の拳銃を取り出して、そのバッファロー魔獣の”影”めがけてバンバンと射撃したのだ。


すると、影を撃たれたバッファロー魔獣は、金縛りにあったみたいに身動きが取れなくなってしまった。


「えーー! 影しばり?!」


するとノクスはニコリと笑った。


「この銃はシャドウ・リーバーっていうの。魔弾を撃つことができるんだ」


しばらくすると、バッファロー魔獣はまた暴れ出した。


「これで影を撃たれると、1発あたり2秒間動けなくなる」


「へ、へえ、すごいんだね……」


「これをね、影じゃなくて直接体に当てるとね……」


そういうと、今度はバッファローの体めがけてバンバンと撃った。


するとその被弾した箇所からヒトデ型の触手が飛び出して、体の一部を拘束したのだ。その触手の長さはおよそ20cmのものが5本。人なら1発で行動不能となるだろう。


バッファローの魔獣はブモオオオ!と叫びながら暴れていたが、ノクスが指をパチンと鳴らすと拘束が解除されたので、そのまま森へと逃げ去った。


「へえ……なかなか怖い武器ねえ……でも、リボルバーだから6発しか撃てないの?」


「ううん。これは弾数じゃなくて、6種類の魔法を設定できるってことらしいの。今はシャドウ・バインドしかないの。弾数は魔力がある限り尽きることはないよ」


「へえ!じゃあまた機能を増やせるのね?」


「えっとね、私が成長したら増やせるの。自分の得意でない魔法でも記録できるって」


「それってすごい魔道具じゃない……」


「それで、ミナはどんな武器をもらったんだ?」


アークとノクスが興味深々に見てくる。私は彼らに残念なお知らせをするしかなかった。


「えーとね……私の箱には武器はなかったわ……」


「じゃあ、何がはいってたんだ?」


「えーっとね、魔導書が3冊……」


すると、アークが笑い出した。

「あははは、ミナに武器を持たせると、自分を傷つけるかもしれねえからな」


「あー馬鹿にしたな!」


私は頬を膨らませて拳を振り上げた。だがアークはそれを笑って躱す。


「で、どんな魔法をおぼえたんだ」


「教えてあげないわ!」


「どうせ土魔法だろ?」


「ちがうもん!」


拳を振ってもアークには当たらないと悟った私は、怒ってさっさと歩き出す。


「もう、なんで私にはカッコいい武器がないのよ!」


私は悲痛な叫び声とともに、大きなため息を吐いたのだった。



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