第21話 第二の鍵
戦いの後、私たちは祠のある猫岩へと戻った。
第二の鍵を試す時が来たのだ。
「鍵を開けるのは、祠でやるべきだろう」
というアークの言葉に従って、私たちは落盤のあった洞窟へと入って行く。
そして、落盤した洞窟を、ギリギリ通れる程度に片付けた。その作業は本当に大変だった!
私は、女の子にこんな作業させないでよ!ってアークに文句を言ったわ。まあ、ほとんどアークが片付けたんだけどね。
「さあ、ここだ。ここだけ、かなり広いホールになっている」
3人でホールの奥にある祠へ向かう。祠の前の祭壇に、カードを広げる台があるからだ。
「ミナ……この台の上に紫の布を広げて」
私は頷いて、紫色の包みをといた。そして、カードを取り出して脇に置くと、台の上に布を広げた。
「じゃあ……触れるわよ?」
アークとノクスはコクリと頷いた。私は指先を布に触れた。
すると今度は前回とは違ったラインが光輝く。
「見て、今度は6枚よ」
6枚のカードを山形に配置するように、ラインが示している。これは確か、ピラミッド・スプレッドと呼ばれるものだ。すると、ノクスが目を大きく見開きながら声をあげた。
「ミナ……番号が浮かんでいる……」
「何番か教えてくれる?」
「えっとね、0、7,6,11、17、9……すべて正位置なの」
「ありがとう」
私はカードを探し始めた。するとアークが口を開いた。
「この、ピラミッドスプレッドはどう見たらいいんだ?」
私はカードを探しながら返事をする。
「下段の3枚が現状を現わしていて、中段の2枚がどのような変化が訪れるか……そしてピラミッドの頂点は最終結果……つまり未来を現わしているの」
すると、ノクスが興味深そうにのぞき込んでくる。
「それで……どんなメッセージが出ているの?」
「えーっとね、まず現状は愚者と戦車、恋人ね……これは旅立ち、勝利、仲間を意味しているわ」
するとアークが驚いた顔をした。
「当たってるじゃん!」
「ええ、ホントね」
私は微笑んだ。
「それで、中段は正義と星だから、真実への道……希望の光が見えるってことかしら?」
するとアークが頷く。
「これから進むべき道が見えて来るってことかな?」
「そうかもね。……それで最後の結末だけど……隠者なのよね……」
「それがどうしたんだ?」
「 導き手、知恵を持つ者が現れるって出ているわ」
するとアークが腕を組んだ。
「誰か、導き手が現れるのかもしれねえな」
私は頷いて、手に持っていたカードを並べていく。
「触れるわよ……」
そして、改めて布地に触れると、布地の模様が変化して、布地の中央に六芒星の印
と、新しいメッセージが現れた。
「……今度は私たち3人で触れるように言ってるわ」
アークとノクスは頷いて、人差し指を六芒星の上に置いた。そこへ私が人差し指を置くと、布地がパアッと明るくなって、あっという間に部屋全体が光に包まれていった。
「また、あの空間に行くのね……」
私たちはゆっくりと光に包まれていく。私は光が収まるのをジッと待った。
光が収まると、そこは以前と同じ……宇宙空間のような場所だ。
気が付くと、目の前に母さんが立っていた。羊のような角のある紫のショートボブが悪魔っぽかったけど、それ以外はいつもの優しい母さんだった。
「母さん!」
私の目に涙が溢れてきた。
「ミナ……また天使たちに襲われたのね……。でもよく頑張ったわ。みんな無事で良かった」
「ええ!ホント大変だったんだから!」
私は涙を拭きながら、笑顔で自慢した。
「どう?少しは強くなったでしょ?」
私は涙を流しながら、母さんに微笑む。
「ミナ……頑張ったのね」
「そうだよ、私頑張ったんだから……いっぱい褒めてよ」
すると母さんは嬉しそうに笑った。次に母さんはアークの顔を見つめる。
「アーク……あなたはかなりの魔力を失いながら、ミナのために骨を折ってくれたのね。本当に感謝しかないわ」
「いえ、ミナのためになることは、リリア様のためになること……こんなものは苦労のうちにも入りませんよ」
アークはそう言って胸を張った。それを見たリリアは微笑んだ。
「逞しくなったわね」
褒められたアークは、照れて顔を赤くした。へえ、アークってそんな顔をするんだ。
次に母さんはノクスの顔を見つめた。
「あなたがノクスね……ミナを助けてくれてありがとう」
ノクスは嬉しそうに微笑む。猫耳がぴょこぴょこと嬉しそうに動く。
そして母さんは私のそばへとやってきた。
「ミナ……あなた、ちゃんと初級魔法が使えるようになったのね……わかるわ」
「うん……ちゃんと魔導書を読んだよ」
「そして、ノクスを仲間にした……」
私は微笑んだ。
「ええ、とてもいい子で、私も嬉しいの」
すると母さんは優しく微笑んだ。
「良かったわ。これからあなたは、アークとノクスを連れて、お婆ちゃんの所へ行くのよ」
「お婆ちゃんのところへ?」
私は目を丸くして驚いていた。
「母さん! 私にお婆ちゃんがいたの?」
すると母さんはハハハと笑った。
「隠していてごめんなさいね、ミナ」
「どうして?私、お婆ちゃんがいるなら会いたかった!」
「でも、そうもいかなかったのよ……なにせお婆ちゃんの家は魔界にあるんだから」
「へえ魔界なの……って、魔界!???」
母はニッコリ笑った。
「ええ、魔界よ? だから、人間の身じゃ行くのは難しいからね」
「母さん、私は人間よ? 人間よね? そう、まだ人間だわ!」
すると母さんは笑った。
「当たり前でしょ? あなたを産んだ時、母さんはもう人間になってたんだから」
「ああ、それなら良かった!」
私はホッとため息をついた。
「でもねミナ、あなたをお婆ちゃんの所へ連れていくには、あなたが少し弱すぎたのよね。だから、魔導書を読んでもらったの」
「そうだったのね……それならそうと言ってくれたら良かったのに」
「時間がなかったのよ……ああ!そうだわ時間!」
母さんは何か思い出したように時間!時間!と叫んだ。
「え?どうしたの?時間って!」
「ああ、どうしよう、もうお別れの時間なのよ」
「お別れの時間って母さん……まだ何も聞いてない!」
「いい?これから3つの箱を渡すわ。1人1箱よ……いいわね?」
「ええ、そんなざっくりとした説明じゃわかんない!」
「それからアークとノクス……あなたたちには、私の魔力を与えるわ……近くに来て」
アークとノクスが母さんに近付くと、母さん慌てた様子では丸い球のようなものを、二人の胸に押し込んでいった。
「ああっ!」
「んゃあっ!」
アークとノクスは胸を押さえて苦しそうにしている。
「アーク! ノクス!」
私は二人のそばへ駆け寄った。
見上げると、母さんは光に包まれて消えようとしていた。
「ミナ! おばあちゃんのところへ向かいなさい」
「母さん!」
「アークに道案内をしてもらって」
「母さん、待って!」
「時間だわ……」
「母さん!」
すると母さんは、キラキラと輝く光に包まれながら、静かに消えていった。
「愛してるわ、ミナ」
私はその消えゆく姿を泣きながら見送った。
「……母さん……私も愛してる」
光が消えてなくなると、私は元いた場所、祭壇のあるホールに立っていた。すぐそばには、アークとノクスが床で眠っている。
私は暗闇に手を向けて、ライト!と唱えてみた。すると、光の球が宙に浮かぶ。足元を見ると、大きな箱が3つ置いてあった。
箱を調べてみると、それぞれに名前が書いてある。私はミナと書かれた箱を開けた。
少しドキドキした。
武器かしら? それとも魔法の杖?
「まさか魔法の指輪とかなら可愛いんだけど!」
期待に胸を膨らませながら、そっと箱を開けると、そこには3冊の魔導書が置かれてあった。
私の顔から笑顔が消えた。
私は本の上に置かれていた手紙を手に取ると、中を開いてみた。
”ミナへ。この本を読んで、魔法の勉強をしなさい”
「クソっ!」
私は怒って箱の蓋を乱暴に閉めた。
「また勉強しなきゃならないなんて!最悪!」
私のテンションは一気にダダ下がりしたのだった。




