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悪魔っ子ミナの魔界冒険譚  作者: minori
第2部 封印の森編
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第15話 追っ手


アークが黒猫を救出して、地上へ上ってきたのは、ミナと別れてから3時間ほど経った頃だった。


アークは重力魔法を駆使しながら落盤を防ぎ、宙に浮かぶ岩をかき分けながら通路を抜けだしたのだ。


地上に出ると、アークは白熊の姿を解いた。元の人化した姿に戻ったアークは、猫岩の影から出てきて広場を見渡した。


「ミナ! ……おーい!ミナ!」


アークはあたりを見渡したが、ミナの姿がない。


アークは嫌な胸騒ぎがした。


広場を調べてみると、土魔法の修行をした跡以外に、強烈な雷魔法がいくつも放たれた跡があった。それを見たアークの顔は青ざめた。


「まさか天使が来たんじゃねえだろうな……」


アークは広場の端まで行くと、森に向かって叫んだ。


「おい!ミナ!近くにいるなら返事をしろ!」


森の方へ、何度も声をかけたが返事はない。


アークは今すぐミナを探しに行きたかったが、黒猫という厄介な荷物も抱えている。


「ああ、もう、どうすりゃいいんだ」


アークは唇を噛みしめた。





その頃、カンコネルは歓喜していた。


探していたミナを発見したのだ。


「ついに見つけたぞ!」


彼はすぐにセラフィムへ、念話で報告する。するとセラフィムからの回答は、必ず生きて捕らえよということだった。


念話を切ってから、3人の部下が駆け寄って来る。


「カンコネル様……セラフィム様は何と?」


するとカンコネルは大きなため息を吐いた後、3人の顔を見て言った。


「必ず生きて連れ帰るようにとのことだ……」


この3人の天使は、長年カンコネルに仕える若い天使で、名前をラキエル、グリエル、フェザエルという。彼らもカンコネルと同じく、風魔法を得意とする天使だった。


リーダー格の天使・グリエルが口を開いた。


「カンコネル様……あの娘、どうやら1人のようですね」


「従魔とはぐれたのか?」


「……これはチャンスです!」


カンコネルとグリエルは顔を見合わせて頷いた。


そこでイサルフェが口を挟んでくる。


「ラキエル様ほどの方なら、あんな従魔ごとき敵ではないと思いますが……従魔なんていないに越したことはありませんからね」


非戦闘員のイサルフェの言葉は、なぜだかグリエルの気分をイライラさせた。まるで従魔がいると、グリエルたち3人では手に負えないと聞こえたのである。グリエルは、少し自分の力を誇示したくなった。


「従魔がいようがいまいが、それほど大したことではありません。だが、従魔がいなくて小娘の確保がやりやすくなったのは確かです。……カンコネル様、どうでしょう、あの小娘は、我々3人でサッと捕まえて参りましょうか」


するとフェザエルが前に出て来る。


「セラフィム様のご希望通り、無傷で捕らえて見せましょう」


それを聞いたカンコネルは、顎を撫でながら頷いた。


「まあ、娘だけだし、お前たちだけで十分かもしれんな。だが、決して侮るなよ。人間とはいえリリアの娘。どんな力を隠し持っているかわからんからな」


「はいっ!」


「よし、行ってこい。場合によっては片手、片足くらい斬っても構わぬ!」


「ははっ!」


カンコネルはそういうと、手を振って出撃を指示した。


すると3人の天使は獰猛な山犬のような顔をして、森の中を走りはじめた。走りながら、ラキエルが2人に指示を飛ばす。


「いいかグリエル、フェザエル!私はこのまま小娘の正面から接近する!お前たちは左右から挟み込むようにして突っ込め!」


「オウ!」


3人はついに翼を広げて宙に舞った。そして、鷹のように木々の間を飛んで、一瞬にしてミナの元へと接近した。





私は森で迷って泣きべそをかいていた。


「もう、ここはどこなのよぉ?!」


私は大イノシシに追いかけられて、逃げに逃げて森の中を駆けまわっていのだ。


幸いなことに、土魔法の天才である私は、アースウォールという技で大イノシシの突進を受け止めた。


イノシシは前にしか走れないから、私が作り出した土壁にドーンとぶつかると、そのままぶっ倒れてしまったのだ。


「イノシシを退治したのはいいけど……ここがどこかわからないわ……」


だって、森ってどこへ行っても同じ景色じゃない?


どこをどう行けば戻れるかなんて、わかりっこないのだ。


「あー、もうどうしよう。アークに怒られるよ」


私は少し憂鬱になっていた。


その時である。


また、あの嫌な感触が私を襲った。


そう……首輪が締まり始めたのだ!


「ああっ!…また!」


私は膝を折ってうずくまった。


「ホントもうやめて!」


私は青ざめながら、しばらくの間その締め付けに耐え、解放されるまで待った。


しばらくすると締め付けは解かれたが、私の体力はもう限界まで削がれていた。


「もうやだあ……。アークぅ、迎えに来てよお……」


私はもう歩く気力も失って、腰をかけられそうな岩の上に座り込んだ。


「はぁ、疲れた……」


私は空を見上げた。


木々の隙間から、少しだけ青空が見える。


「今頃アークは祠から出て来たかな……」


そんなことを考えながら、空を見上げた。


聞こえてくるのは、小鳥のさえずりと葉っぱの揺れる音だけだ。


そうしているうちに、ボーッと30分ほど過ごしてしまった。


「ああ、いけない!そろそろ帰る道を探さないと……」


体は疲れ果てていたけど、このまま森の中で夜になってはたまらない。私はそう思って立ちあがった。


その時である。


私の正面の、ずっと向こうの方から、何かがこちらへ飛んでくるのが見えた。


色は白だ。翼がある。鳥なの?


そんなことを考えてボーッと見ていると、その鳥がだんだんと大きくなってくる。


「ん?私に向かって飛んで来てる??」


思っている以上に大きなものが飛んできているというのが解った時、私は立ち上がって逃げる準備をした。


「わわわわ!」


ここへ至って、ようやくわかった。


「あれは天使だ!」


私は彼の突進を防ぐために、土魔法を唱えた。


「お願い! 彼の突進を防いで!……アースウォール!」


すると目の前に、一瞬で土壁が立ち上がり、飛んで来る天使の姿が土壁に隠れた。


私が祈りながら土壁を見つめて、1,2,3秒……


ドカーン!という音と共に、その土壁が粉々に破壊されて、壁の向こうから筋骨逞しい天使が現れて、ミナの正面に着地した。


「ひいいー!何なのあなた!」


「私か!私の名はラキエル! お前がミナだな? 私と一緒についてくるんだ!」


「い、嫌だぁ!」


すると私は土魔法で地形を操作して、ラキエルの足元にズドーンと大きな穴を空けた。


「ああああ!お前ーーっ!」


突然開いた穴に落ちていくラキエル。私は落ちていくラキエルをチラリと見ながら、すぐさま穴から離れた。


「ひいい!今のうちに!」


私は森の中を駆けだした。


すると後ろから、ミナァ!という低い声がする,


振り替えるとそれはラキエルだった。


「ひいい、なんで? あんた落ちなかったの!」


「馬鹿かお前は!私には天使の翼があるのだぞ!」


「あー、忘れてた!」


その時、後ろから急に両腕を掴まれてしまう。


私が振り替えると、左右から2人の天使が私の腕を掴んでいるのだ。


「あんたたちなんなの!離しなさいよ!」


「うるさい、我々と一緒にくるんだ!」


「い、嫌よ 離して!」


するとラキエルが、私の目の前へ降りて来てニヤリと笑った。


「グリエル、フェザエル、作戦どおりだな!」


「まあ、余裕でしたね」


「ははは!」


それを聞いて私はイライラした。


「何が作戦どおりよ!ムカつくわね! こうなったら……」


すると、天使たちは鼻で笑って私を馬鹿にする。


「こうなったら……どうするんだ?」


私は腕を押さえているグリエルを睨みつけた。


「こうするのよっ!」


その時、3人の天使の足もとから、土の槍が天使たちを串刺しにしようと飛び出てきた。私の土魔法、アース・ランスが数十本、雨後のタケノコのように飛び出してきたのだ。


「わっ!」


「痛ててて!」


土の槍と言っても、その先端は尖っていて、肉をも切り裂く刃と同じだ。


さすがに3人の天使は、翼を広げて飛び上がった。


「逃がさないわよ!アース・ランス!伸びなさいっ!」


私の言葉を聞いて、天使たちは上空へと飛び上がった。


私はアース・ランスを伸ばして突き差そうとしたけど、10mくらいしか伸びなかった。見上げると、天使たちは上空で翼を羽ばたかせながら私をニヤニヤみていた。


「き、効いてないの?」


するとラキエルはニヤリと笑った。


「馬鹿め、そんな初級魔法が、我々上級天使に通用すると思っているのか!」


「えええ!」


「それにここなら土の槍も届かんだろう!」


あーっ!そうだった。土の槍は地面から離れられない。


「生意気な小娘には、御仕置きが必要だな」


「ええ、やめてよ、ちょっと! 今のは冗談なんだから」


すると天使たちは、それぞれ魔法を詠唱しはじめた。私は焦って大声を出した。


「女の子にそんなことしちゃダメでしょ!」


だが、天使たちは、魔法の準備をやめない。


「やめなさいっ! やめなさいって! ヤメロ! いやああ!」


天使たちは、空中から風の刃を飛ばしてきた。


上腕くらいの大きさの、風の刃がヒュンヒュンと飛んでくる。


私は以前、自宅の焼け跡で、悪魔がバラバラにされた風魔法を思い出していた。


「嫌あ! 降参! 降参よ! 降参するから!」


風の刃は、雑木林をバッサバッサと斬り倒す。


「こんなの 私の知ってる天使じゃない!」


私は森の中を逃げ回るのだった。




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