トレーサー
瀬能「腹が立つ、腹が立つ。ああ、腹が立つ。」
皇「おちつけ、おちつけ、どうどう。」
瀬能「もう、物凄い腹が立つ事があったんです。聞いて下さい。」
皇「嫌だよ、面倒臭い。お前の話なんか。」
瀬能「そんな事、言わないで、聞いて下さいよぉ~」
皇「ひっつくな、もう、うざったいなぁ。・・・・それで、なんだよ、腹が立つって?」
瀬能「さっき、スーパー行ったら、何度も、何度も、同じ人と出くわすんです。私の後、ずっと、尾行しているに違いありません!」
皇「・・・・・引き籠もりのアホ女、尾行して、何が楽しいんだよ?」
瀬能「瑠思亜! 引き籠もりはいいですけど、アホ女は、撤回して下さい、私、アホ女じゃありません!」
皇「・・・・・・・ああ、すまん。クソ女だったよな。」
瀬能「ひどい! 瑠思亜、私のこと、そうやって見ていたんですね! ひどい!」
皇「お前なんか目クソ鼻クソだろう?」
瀬能「いやぁ、もっと酷い!酷過ぎますぅ!」
皇「だからくっつくなって言ってるだろ! 暑苦しい。」
瀬能「いくら私が箱入りだからって、お嬢様だからって、そんな言い方、ひど過ぎますぅぅぅぅ・・・・およよ。」
皇「およよじゃないよ、ばか。あのなぁ、なにも出来ないのと、なにもしないのは、別なんだよ。」
瀬能「そんな事、言ったってぇ。・・・・面倒臭いですもん。瑠思亜さまぁ~、瑠思亜さまぁ~、これからも私を、助けて下さいぃぃ~」
皇「離せバカ!どさくさに紛れて腹を揉むな!腹を!」
瀬能「痛っ! ちょっと、じゃれただけじゃないですか。痛い。アサリちゃんですか?タタミですか?」
皇「それでどうしたんだよ、スーパーで?」
瀬能「行く所、行く所、先回りして、出くわす女がいたんです。私が買おうとしていたお弁当、取られちゃうし。・・・・・・私が買おうとしていた食玩、先に、取られちゃうし、・・・一応、狙っていた奴、キープしておいたら、それを横取りされたんです。レアの奴。たぶん、あれ、レアなんですよ。」
皇「お前は小学生か?」
瀬能「いぃいオバサンです。・・・・いや、私じゃなく、相手が」
皇「お前もオバサンだろ?」
瀬能「えぇぇぇ、まだ、せめて、お姉さんにして下さい。まだ、お姉さんで。じゃあ、私がオバサンなら瑠思亜も、もれなくオバサンじゃないですか!」
皇「・・・・ババアァにババアって言われたくねぇなぁ。」
瀬能「妖怪小銭拾い、潮吹きババアのくせに。」
皇「おい、クソニート、潮吹きババアってなんだ? 小銭拾いはまぁ、いい。置いてといてやる。」
瀬能「なんですかぁ! こっちはたまにニキビが潰れる事も、いまだ、あるんですよ!」
皇「・・・・・お前なぁ。ニキビが潰れるのは若いアピールじゃないからな。不衛生だから菌が繁殖して肌が炎症するんだ。・・・・・ちゃんと顔、洗え!やさしく顔、洗え!」
瀬能「・・・・潮吹きババアに正論を言われましたぁ。今日から優しく顔を洗いますぅ。私も潮、吹きたいですぅ。」
皇「うるさいよ、バカ、死ね! そんなに潮ばっか吹いてられるか!」
瀬能「でもぉ、気色悪くないですか?」
皇「・・・・お前の顔か?」
瀬能「私は世の中で、美人で、通っていますぅぅ。あしからずぅ。・・・ちがいますよ、ちがくないですけど、ちがいますよ。狭いスーパーの中で、行く先、行く先で、その女と遭遇するのが気色悪くないですか?って話です。」
皇「その、おまけ付きのお菓子を、いい歳した女が、箱を振ったり、重さを確かめたりして、玩具を選んでいる方がよっぽども、気味、悪いわ。」
瀬能「瑠思亜さん、お言葉ですがぁ、そりゃぁそうでしょう? 食玩はけっこう良い値段がするんですから、狙ったフィギア、出さなきゃ、ゴミが溜まる一方なんですよ。私、別に、ネットオークションで売ったりするのが目的じゃないんで、純粋に、それをコレクションしているだけなんです。フィギアはシールと違って、ある程度、選別が可能ですから。私のオーラパワーで。」
皇「・・・・・無駄な能力を身につけやがって。せめて、その能力を世の為、人の為に使えよ。」
瀬能「それは、その、出くわす女にも言って下さいよ。私より”引き”強そうなんだから。あ、そう。それで、お弁当、買えなかったんで、今日、冷凍食品になっちゃったんです。半額ですよ、半額。半額になるまで育てていたのに。クソ。あの、アマぁぁ。」
皇「割引シール、貼ってもらうの待ってただけだろう? セコいんだよ、お前は。」
瀬能「そうは言いますけどねぇ、瑠思亜。あれだって、いつ、半額になるか分からないんですよ。半額になる前に全部、売れちゃったら、それは私の負けじゃないですか。市場原理と私の戦いなんです。」
皇「うるさいよ。」
瀬能「はぁぁぁあ? これだからブルジョアは。ブルジョアは困るんです。一円でも安いもの買った方がいいに決まっているじゃないですか!弁当とスーパーと顧客のチキンレースですよ、ハードラックとダンスっちまったんですよ!」
皇「その女?・・・・お前と気が合うじゃん?お前達、友達になれば?なかなかそんなに気が合う奴なんていないぜ?」
瀬能「はぁぁぁ? 私の話、聞いてました? 嫌ですよ、そんな、弁当、半額になるまで待ってる女とか、子供を押しのけて、本気で、食玩、選んでいる女なんてぇぇぇ!」
皇「全部、お前じゃねぇか。 お前の事だよ。」
瀬能「え?」
皇「お前、鏡でも見てたんじゃねぇのか? もしくは、イマジリーフレンド。」
瀬能「なんですか、その、イジリー岡田みたいな奴は? もしかして、・・・・・イマジナリーフレンドの事ですか? もしかして、瑠思亜さん? イマジナリーフレンドの事ですかぁぁぁぁぁあ?」
皇「・・・・・殺す。お前、殺す。お前、生きていたら世の為にならねぇわ。お前は、ここで死んだ方が世の為だわ。・・・・・いいぜぇ、好きなだけ潮、吹かせてやるから。それで死ねぇぇぇぇ!」
瀬能「わぁぁぁぁああああ! 待って、待って、待ってぇぇぇぇ! やめてぇぇぇぇぇ! 落ち着ていてぇぇぇぇえ! 瑠思亜、待って、分かりました、分かりました! 謝るから、謝るから許してぇぇぇぇえええええええ!」
ユア「それで、朝まで、揉んでたの? からだ?」
瀬能「はい。チチが重たいって、肩が凝るからって、ずぅぅぅっと、背中と足と、手と、もう、体中、揉まされました。もう、手が、痛いです。むしろ、腰が痛いです。」
ユア「仲良しねぇ、杏子ちゃんと瑠思亜ちゃん。」
瀬能「仲良しじゃないですよ、女王様ですよ、あれは。」
ユア「下僕はつらいねぇ。」
瀬能「はい、辛いです。・・・・・助けて下さい、ユアちゃん。」
タイガ「お前もさぁ、こんな所であぶら売ってないで、帰れよ? 昨日の今日だろ?」
瀬能「なんですかぁ、・・・・・タイガ君が偉そうです。歳下の人に、お前、とか、言われたくありません。私、ちゃんと名前がありますぅ。」
タイガ「お前、バカか? 子供相手になに言ってんだよ?」
瀬能「今度はバカって言った!」
タイガ「お前・・・・バカだろう?」
瀬能「酷い、二度も言った! ユアちゃん、タイガ君が酷いですぅ。」
ユア「タイガ君。杏子ちゃんは辛いの。優しくしてあげなきゃダメでしょう?」
タイガ「お前、こんなバカ、相手にしてたら、お前までバカになるぞ? いつも言ってるだろう?」
ユア「タイガ君。私、名前があります。お前、なんて、言わないで!」
タイガ「ああ・・・・・ユア、悪かったよ。ゴメン。」
瀬能「・・・・・・ぷぅ。怒られた。怒られた。ぷ。」
タイガ「おい。・・・・・・杏子、お前、やんのかぁ!」
瀬能「おお、タイガ君? やるんなら、やりますよ! 相手になりますよぉ! 私、子供相手でも手加減、しませんのでぇ!」
ユア「ほぉあらぁ、二人共、ケンカしないのぉ。いぃい?」
タイガ「ッ・・・・・いいか!杏子、今日は、ユアに免じて、大目にみてやる!」
瀬能「それはこっちのセリフですよ、ユアちゃんの前で恥、かかなくて、良かったですねぇ!」
タイガ「なんだとぉ、コノヤロウ!」
ユア「ほら、言っているそばからぁ。仲良くしてぇ!」
タイガ「あ、そうだ! この前、変な女が来たぞ? それぇ、お前の仲間か?」
瀬能「私、変な女の仲間なんて、いませんよ?」
タイガ「嘘つけぇ、いつも、変な仲間、連れてるじゃねぇか! お前の友達はみんな、変な奴ばっかりじゃねぇか! あの、オッパイ丸出しの奴とかぁ、毎日、本場のハロウィンみたいなカッコしてる奴とかぁ、・・・・まともな奴、いねぇじゃねぇか!」
瀬能「・・・・・瑠思亜と御影の事でしょう? あんな、見た目、異常者でも、中身はいい人達なんですよ? たぶん」
ユア「・・・・杏子ちゃん。怒られるわよ。」
タイガ「こんな場所に、大人が来るのは、だいたいお前の友達だろ?」
瀬能「まぁ。・・・・・それは否定しませんが、でも、最近は、カードゲームくらい、大人もやりますし。流行してますし。全部が全部、私の知り合いって訳じゃぁないと思いますけど。」
タイガ「なんか、手慣れてる奴が来たんだよ。」
ユア「タイガ君。・・・・デュエルして負けたんだよね。」
タイガ「そこはいいだろ?そこは。まぁ。負けたのは負けたけど。」
瀬能「タイガ君は弱いから、負けるのは仕方が無いと思いますけど」
タイガ「ああ゛あ゛ぁ゛もういっぺん、言ってみろ!」
瀬能「本当の事だから怒らないで下さいよ、でも、その、大人? 気になりますね。」
ユア「女の人だったよね?」
瀬能「・・・・女、だったんですか?」
ユア「そう。女の人。・・・・・杏子ちゃん、瑠思亜ちゃん、御影ちゃんに比べたら、普通の人だったけど。」
瀬能「なんですか、それ?」
タイガ「ああ、ユアの言う通り、普通の人だったぞ。」
瀬能「・・・・・・・・・」
タイガ「どうしたんだ?」
瀬能「いや、ぁぁ、・・・・・最近、よく、私が行く、先々で、会う、女がいるんですよ。」
ユア「えぇぇ? 怖い。 怖い話?」
瀬能「怖い話じゃないんですけど、スーパーとか、古本屋とか、私が行く所に、よくいる女で、出くわす確率が高い女がいるんですよ。」
タイガ「友達か、なんかか?」
瀬能「いやいやいや。まったく赤の他人で、知らない人です。知らないけど、よく会うから、顔は覚えましたけど、でも、・・・・よく会うんで、気味が悪いんですよ。」
タイガ「ストーカーか?」
ユア「タイガ君。・・・・・杏子ちゃんをストーカーしても、なにも、面白くないでしょう?」
タイガ「あ、そうだな。それもそうだな。」
瀬能「失礼ですね。ユアちゃんもタイガ君も。・・・・・でも、ストーカーにしては、自然過ぎるし、私が行く前からいる場合もあれば、後から、来る場合もあるんで、必ずしもストーカーとは言えません。本当に、行く場所が同じだけかも知れません。」
タイガ「ああ、それなぁ、杏子、あれだ、トレーサーだ。」
ユア「トレーサー?」
タイガ「お前、大人なのに、知らないのか?」
瀬能「えぇぇ? 知らないです。知らない事に大人も子供も関係ないじゃないですか!」
タイガ「それもそうだな。・・・・・いや、俺もクラスの奴に聞いたんだけどさ、」
瀬能「また、又聞き。タイガ君はいつもそうですよね。オリジナルが無いっていうか、独自性が皆無ですよね。」
タイガ「うるさいよ。働いていないお前に言われたくないよ。」
瀬能「それで、独自性が足りないタイガ君。それで、なんですか?」
タイガ「お前・・・・・ほんと、あとで、ぶっ飛ばすからな。覚えておけよ? トレーサーっていうのはな、”追跡者”って意味なんだ。」
ユア「追跡者? ストーカーと何がちがうの?」
瀬能「そうですよ、急にオリジナリティぶち込んでくるから。」
タイガ「ストーカーっていうのはアレだろ?後を付いてくる奴の事だろ? トレーサーっていうのは、後を付けてくる奴の事を言うんだ。」
ユア「??? タイガ君。なに言ってんの?」
瀬能「タイガ君。・・・・・なにか悩み事があるなら、相談に乗りますよ。一回、十円で。」
タイガ「・・・・・・・。そういう事じゃないんだよ。」
ユア「どゆこと?」
瀬能「タイガ君が自分で言ったんですよ?」
タイガ「いや、だからな。お前達、よく、聞けよ? ストーカーは後を付けてくる奴なんだ。トレーサーは後を付けてくる奴なんだ、違うだろ?」
ユア「ユア。・・・・・・・・・タイガ君が心配。」
瀬能「杏子。・・・・・・・タイガ君の将来が心配。」
タイガ「あああああああああああああああ! わかれよ、お前等ぁぁぁああ!」
瀬能「キレた、キレた、タイガ君がキレた!」
ユア「どう、どう。どう、どう。」
タイガ「・・・・・・」
ユア「よし、よし。よし、よし。」
タイガ「もう、いい。お前等には話さない。」
ユア「あれよ、タイガ君には、語彙力がないのよ。」
瀬能「ユアちゃんはさらっと酷い事を言いますね。」
ユア「トレースっていうのはね。後をつけたり、なぞったり、真似するっていう意味があるの。」
瀬能「ユアちゃんは博識ですねぇ。」
ユア「モノマネって、モノを真似るって意味じゃない? オリジナルにどれだけ近づけるか、オリジナルに近づけば近づくだけモノマネ、いわゆるコピーの精度が上がるって言うでしょ?」
瀬能「言います。言います。」
ユア「その精度を上げる作業をトレースって言うの。形を真似たり、色を真似たり、行動を真似たり、声を真似たり。トレースも様々。ほら、漫画を描く人でも、最初は、好きな漫画の、線をなぞって、絵を描いて、似せる練習から、やるでしょう?」
瀬能「ああ! 以前、某なかよしの付録に、漫画をそのまま写せる漫画練習キットがついてました! あれが、トレースなんですね!」
ユア「某も何もないじゃない。」
瀬能「私も昔、吉住渉の絵をトレースして、練習した記憶があります。あ、ママレの前ですよ。私、ママレ、原作二話で挫折したんで。・・・・ああ、ハンサムが好きで吉住渉ファンを語ってはばかられていたのに、次回作ママレで、脱落するとは思ってもいませんでした。ほら、私、萩原未央っぽいでしょ?」
ユア「・・・・・杏子ちゃんまで、なに、言ってんの?」
瀬能「じゃぁ萩原未央のモノマネします。『京極さぁ~ん、京極さぁ~ん』、あ、間違えました。これは、玉川さんじゃなくて松井さんでした。」
ユア「声優ネタやめろ」
瀬能「って事はですよ、私の行く先々に現れる、謎の女。そいつはトレーサーで、玉川紗己子の声マネが出来るって事ですか?」
タイガ「知らねぇよ!」
皇「・・・・トレーサーねぇ」
火野「モノマネって言うのは百パーセントコピーじゃない。トレースっていうのは軌跡をなぞって、取り入れる。上辺だけのコピーじゃなくて、本質的な、行動のコピーだから余計、質が悪いのよ。」
瀬能「ああ、モノマネのコージー富田方式ですね。」
皇「コージー?」
瀬能「ほら、コージーって見た目、似てないモノマネじゃないですか、でも、モノマネをしだすと本人、そっくり。コージーは、モノマネを行う時に、思考からモノマネするんですって。だからテレビで見たワンシーンを再現するモノマネじゃなくて、一挙手一投足がモノマネ。余白すら似ているって評されるモノマネなんです。だから、やりそう、言いそう、って思える芸なんだそうですよ。」
火野「トレースってそういう事よ。思考をコピーされたんじゃ、見た目は違っていても、中身は、本人なんだから、似てて当然。行動だって同じ事、するに決まっているわ。」
皇「・・・・気味悪いな。そっちの方が。」
瀬能「でしょ?でしょ?」
火野「でも、なんで、杏子なんか、トレースするのよ? こんなクソニート女、トレースしたところで、何の価値もないじゃない。」
瀬能「さらっと酷い事を言いましたね。御影は。」
火野「ホントの事じゃない。怒る話じゃないでしょ?」
皇「前はドッペンゲンガー、それに、ジェネリック。次は、トレーサー。お前、呪われているんじゃないのか?」
火野「よく似た人間が世間に三人いるっていうけど、三人揃っちゃったじゃない。あんたが仮にオリジナルだとして、これで四人。あんた、死ぬわ。」
瀬能「やめてよぉぉぉぉぉ! 縁起でもない!」
火野「コピーロボットとかいないの?」
瀬能「誰が星野スミレだ!」
皇「お前はなんで自分の事だけ良い風に言うかなぁ。・・・・・不二子世界の永久アイドルだぞ?お前と一緒にすんな」
火野「まぁ杏子の事はどっかにうっちゃっておいて」
瀬能「うっちゃるな」
火野「トレーサーの怖い所は、コピーにも言える事だけど、オリジナルの利益を大きく損なう事なのよ。権利侵害とかもあるけど、金銭に直結する話だからね。」
瀬能「どゆこと?」
皇「ヒット商品とかあるだろ?ある一つの商品がヒットして、うんと儲けられている。そこに、類似した商品が出てきたら、購入者が分散して、利益が半分になる。オリジナルの利益が棄損した事に成る。」
火野「本来、得られるはずだった利益を得られなくなったってこと。その、類似した商品。いわゆる、コピー。トレース。・・・・・そういうのは、この世界じゃ日常茶飯事だもんね。類似商品、コピー商品、専門の弁護士だっているくらいだから。」
皇「何億って金が棄損しちまう世界だってあるからな。弁護士、雇っても、安いくらいだ。」
瀬能「NHKスペシャルで見たけど、ああいうのって、イタチゴッコなんでしょ? アメリカのニンテンドーがドンキーコングの時に、死ぬ程、叩き潰したって。」
皇「そりゃぁ、悪い奴は、悪いなんて考えてないさ。儲かればそれでいい。常に、儲かる物を見つけているんだ。イタチゴッコにもなるぜ?」
火野「言い換えれば、コピーされているって事は、人気がある証拠なのよ。・・・・見向きもされなくなっちゃぁ、お終いって話もあるけどね。」
瀬能「って事は、私。・・・・・何かしら、ニーズがあるって事ですよね? トレースされているってことは! やっぱり私、星野スミレじゃないですか!玉川紗己子なんですよ!」
皇「だから・・・・・お前、何、言ってんの?」
火野「あんたにどんなニーズがあるのか、よく、分からないわ。そのトレース人間も何の意図があって、そんな事しているのかも、謎よね。」
皇「謎過ぎる。」
瀬能「そもそも、コピーとトレースって、なにがどう、違うんですか?」
皇「コピーは複製。トレースはその過程だ。」
瀬能「・・・・あのぉ、いまいち、なにを言っているのか。それで、それが、何か、問題なんですか?」
皇「・・・だぁかぁらぁ、その行為自体に何も問題はねぇよ。ただし、その行為によって、不利益を被られる場合があるってだけの話だ。お前、そのトレース女に、弁当取られたり、お菓子取られたりしたんだろう?」
瀬能「そういう意味では不利益を被りましたが。」
火野「社会的にはアウトなだけよ。特に利権が絡めば、莫大な損害を産むわけだから。」
皇「簡単な話、ドロボーだからな。」
瀬能「ドロボーですか。」
皇「さっきも話したけど、オリジナルが百万円だったとして、コピーが十分の一の値段だとするわな。安い方がいいだろう?そうなれば、安い方が売れる。本来、オリジナルが得られる利益をコピー品が邪魔したわけだ。しかも買った人間が、コピーと知った上で買ったなら、まだ、いいが。本当は良くないぞ?騙されて買ったなら、ニセモノを掴まされた事になる。ようするに詐欺だ。・・・・本物と思って買ったのに偽物だった訳だからな。」
瀬能「はぁ。なるほど。でも、それって、複製じゃないじゃないですか。」
皇「ん? どういう意味だ?」
瀬能「オリジナルが百万円で、コピーが十万円ですよね。まったく同じ物が、十分の一の値段で買えるなら、得じゃないですか。反対に言えば九十%をオリジナルが搾取していた事になりませんか?」
皇「それはそこの会社の問題だろ?原価を幾らでやりくりするかは自由だし。仮に十分の一で出せたとしても、出さないのは、それが利益だからだ。嫌なら買うな、って話だからな。」
火野「あんたの言いたい事は分かるわ。まったく同じ物が十分の一で売られていたらそりゃぁ、そっちの方が得よ。でも、大概の場合は、劣化コピーなのよ。」
瀬能「・・・・劣化。」
火野「見た目だけ真似した、まるっきり違う、偽物。一般的に考えて、百万円ものが十万円で作れるわけないじゃない。百万円には百万円の理由があるの。安い人件費で、安い物、使って、作れば、そりゃぁ、十分の一だって、相当、利益を産むわ。だってニセモノなんだから。偽物を本物と偽って、商売するから、違法になるんじゃない。」
皇「お前が言う通り、まったく同じもの。百%同じコピーだったら、それは、もう、本物だ。物質的に本物なんだから、本物だろう?」
火野「・・・それもどうかは、ちょっとグレーだけどね。」
皇「なんでだよ? 百パー同じだったら、同じだろ? 細胞レベルで同じなら、同じだろうが?」
火野「物質的にはそうかも知れないけど、社会的には、そうとは言えない。それが同じものだって言える”信用の担保”が必要なのよ。」
皇「は?」瀬能「はぁ・・・・」
火野「例えば、例えばよ。ブランドバックの職人が、ブランド時代に作ったバックと、辞めてから同じ物を作ったとしても、それは社会的には同じものじゃない。ブランドの信用の担保が欠如しているんだから、物質的に同じであっても、社会的には同じじゃない。・・・・・難しいのよ?」
瀬能「私、何言っているか、分かりません。」
皇「じゃ何か?私ら消費者は、ブランドの”信用”を買っているだけであって、本質的な物は、買っていないという事になるのか?」
火野「その通りよ。本質的な、物質的な価値より、多くの人間が、”ブランド”を買っているだけに過ぎない。馬鹿なのよ。」
皇「・・・・・お前、怖いモン無しだな。」
火野「有名な絵画、彫刻なんかは、本物は博物館に厳重にしまってあるけど、コピーを取る事で、その版権で、利益を得ている。コピーを取らせるっていうだけで、莫大な利益よ。・・・・まぁ、おかげで、私らは安く、その、雰囲気だけを味わえるんだけどね。」
瀬能「絵画なんかは生と印刷じゃぁ、同じ見ているのでも、まるで違いますけどね。肉厚さ加減なんかは、表現できませんし。」
皇「美術品は駄目だ。湿度と温度を完全にコントロールしないとすぐ駄目になる。外に出しちゃ駄目なんだ。ああいうのはコピーでいいんだよ。コピーで。どうせ見ても分からねぇんだ。」
瀬能「いや、分かりますよ、瑠思亜と一緒にしないで下さい。」
皇「・・・・お前はまず家から出て、それから、ものを言え。」
火野「昔は、今みたいに写真とって、すぐ、コピーなんて出来なかったから、オリジナルの前で、オリジナルを見て、永遠、模写してたらしいわね。」
瀬能「それ、コピーじゃないですか。」
火野「コピーだけど。ちゃんとしている人は、模写だって分かるように、模写したって書いてあるから、絵に。それはそれで、価値がついて、値がつくのよ。」
皇「お前は金の話、ばっかりだなぁ。」
火野「うるさいわねぇ。・・・・あの有名な作家が、無名時代、あの作品を模写した。その模写作品。ってだけで。模写として価値が生まれるの。・・・・こじらせた収集家はそういうの集めるの、好きみたいだし。」
瀬能「漫画家さんが、奥付で、他の漫画に寄稿する際、そのキャラクターを描く場合のアレですね。あの漫画家があの漫画のキャラクターを。・・・・秋本先生は誰かいても秋本先生っていう。」
皇「・・・・漫画家なんてみんなアクが強いんだから、当然だろ?」
火野「ほら、鑑定団の渡辺先生。あの人も、横山先生の模写から始めて、大先生の修復なんかも、お弟子さんだから出来たって話だし。模写して勉強したから、それが出来るんであって。模写も悪い話ばっかりじゃないのよ。」
瀬能「晴海の頃のコミケで、同人誌みてると、そういうのばっかりで、アシスタントの先生かと思えば、実は、本人だったって話、たまに聞きますよね。・・・・萩原先生の同人誌とか。まさか本人が自分のセルフパロディを描くなんて思わないですもん。」
皇「掘り返すな。蒸し返すな。」
火野「あんた達はねぇ、私が、アカデミックな話、しているとすぐ、漫画の話、する!」
瀬能「はぁぁぁっぁ? 御影さんは、私達と違って」
皇「お前と私を一緒にするな」
瀬能「ご教養がおありだそうで。おほほほほほほほほほほ。」
火野「ジョーシキでしょ! ジョーシキ!」
瀬能「常識がない人間に常識って言われました!」
皇「お前は無いよ。常識。」
瀬能「いやぁぁぁああん。」
皇「いやんじゃないよ」
火野「あのねぇ、べつに絵とか美術だけの話じゃないのよ、模写っていうのは。文章だって、文壇歌壇にだってあるんだから。」
皇「まぁ、大学のえらい先生が、日夜、研究しているくらいだからな。」
瀬能「え? そうなんですか」
皇「当然だろう? コピーだよ、コピー。美術品も含めてだけど、既存の偽物が出回った時もそうだけど、新作が見つかった」
瀬能「古いのに新作?とはこれ如何に。」
火野「・・・・歴史にうもれた未発見の作品が突如、見つかることなんて、多々、あることよ。」
皇「そういう時に、作家の研究をしておかないと、本物か偽物か、判断できないだろ? それこそ”信用”が担保になるんだ。・・・・あそこの大学の先生がお墨付きをつけたぞ!ってな話でな。」
火野「既存の文章やらのクセだったり、言い回しのクセだったり。そもそもねぇ、同じ、作家だって、初期と晩年だとまるで作風が変わる人もいるんだから、そういうのも加味しておかないと、真贋は見極められないのよ。」
瀬能「オー!マイ、ゴッドテス! 藤島先生の悪口はそこまでですよ!」
皇「誰も悪口なんて言ってないだろ?」
瀬能「・・・・私、水色時代のやぶうち先生が好きだったのに。それが。それがあんな少女漫画少女漫画した絵にチェンジするなんて。」
皇・火野「しらねぇよ」
瀬能「ま、りぼん、ちゃお、なかよしあたりのページ数が少ないギャグマンガは、だいたい初期と現在だとまるで絵が違うんですけどね。そこがまた醍醐味で面白いと言うか。まず単行本にならない事があるので、それを含めてチェックしておかないといけません。」
皇・火野「しらねぇよ」
瀬能「そこいくと、最後まで絵がかわらなかった、さくら先生は神ですね。」
皇「バカお前、1巻と19巻あたりだと、ぜんぜん違うぞ。スッキリしてるから見比べてみろ。ごちゃごちゃした感じが無いから。」
瀬能「有名な作品は、それ自体、アイコン化しているわけじゃないですか、漫画もそうです。絵画も、そして、小説も。有名だから、ネタにする。リスペクトしてネタにする。・・・・そういうのはオマージュって言われて、許されるのに、コピーとか、トレースとか言うと、悪者みたいになっちゃう。・・・・その線引きって、なんなんですか?意味わかんないです。」
皇「まぁなぁ。」
火野「そこらへん、ほんと、難しい話よね。・・・・表現の自由とか、そういう話に飛ぶし、二次創作、三次創作はどうなのか?って話もなるし。」
皇「・・・・三次創作はアウトだろ?」
火野「いや、原型を留めていないからセーフって話もあるわ。」
皇「ああ、なるほどな。三次までいくと、確かに、ネタありきで、元ネタ、知らない場合もあるしな。」
火野「そうなのよ。」
瀬能「だから、オマージュがよくて、コピーがダメって、どういう事なんですか? それって全部、受け手の気持ちひとつじゃないですか。トレースもそうです。
例えばですよ? アジアの工場で、リスペクトして、レ点マークみたいなスポーツブランドのアパレル、猫科の動物のマークのアパレル、アルファペットのNのマークのアパレル。リスペクトして、作ったとしましょう。リスペクトして。尊敬の念を込めて。そりゃぁ世界規模のアパレルですから、誰しも、尊敬しますよ。それはアウトですか?」
皇「・・・・・アウトだろ。百パーセント、アウトだろ?」
瀬能「どうしてですか? リスペクトしてオマージュして、作っただけですよ?それなのに、違法なんて。かわいそう過ぎませんか。」
皇「ああいう有名ブランドのものは、商標登録されているから、アウトなんだ。」
火野「レ点じゃなくて、へ、ン、シ、ツ、ならセーフよ。」
瀬能「ヘンシツ? 変質?」
火野「たまたまでしょ?たまたま。あのレのマークじゃなければいいのよ。」
瀬能「ああ、見た事あります。地方のお土産物売り屋さんで売っている、リスペクト商品。ああ、あれがそうだったんですね。」
皇「お前・・・・・・分かっていて言っているだろ? お前の方が悪質だわ。」
瀬能「オタキングの実家が、ワニのマークを、リスペクトして、作って、大儲けしたって、アオイホノオに書いてありました。」
火野「馬に乗って、ボールたたく競技の、それがマークになっている奴とか、傘のマークとか、熊のマークとか、ペンギンのマークとか、・・・・・みんなリスペクトしているのよ。」
瀬能「リスペクト天国ですね。」
皇「私、・・・・・お前等と関わり合いたくない。こっちくんな!」
瀬能「瑠思亜! あなただって、もう、見た目からして、粗製乱造のアスカじゃないですか!髪の毛の色が違うだけで、アスカのキャラデザイン、そのまんまじゃないですか!」
皇「お前だって貞子だろ! 貞子の流用だろう!」
瀬能「私、貞子じゃありません! クランプです。よくいるクランプの女受けが悪い女キャラです!」
皇「お前バカだろう? ホンマモンのバカだろう!」
火野「・・・・だから、キャラデザインなんて、誰かに似てきちゃうものなのよ!」
瀬能・皇「植田先生のモブ女みたいなツラ、してる奴に、言われたくねぇ!」
火野「誰がモブよ!」
瀬能「キャラが立ってない女に何言われても、痛くも、痒くもないですが。」
皇「ま、そうだな。」
瀬能「その、あたまの、シャープみたいな、アレ、そう、それ、なんなんですか?」
皇「なんで頭に、シャープ、つけてんだよ?」
瀬能「コピープロテクトでしょ?その頭のシャープ。」
火野「・・・・・・・・・・お前等みんな殺す! 殺す! 殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううう!」
瀬能「シャ、シャープ女がキレましたぁぁぁああ!」
皇「お前がシャープ、シャープ、言うからだぞ?」
火野「死ね、死ね、死ね、死ねぇぇぇぇえええ! 死ねぇぇぇぇぇえええええ!」
額賀「あははははははは。それは大変だったねぇ。」
皇「笑い事じゃありませんよ。」
額賀「まぁ僕等も、上の先輩から、仕事は目で見て覚えろ。盗んで覚えろ、ってよく言われたよ。それも一種のトレースだよね。」
皇「それをトレースって言うのか、・・・・分かりませんけど。」
額賀「先輩と同じ動きして、同じ仕事して、それで仕事覚えて。でもやっぱり、そうやって覚えた仕事の方が、早く、身に付く気はするけどねぇ。」
皇「それはそうかも知れないですけど。」
額賀「トレースっていうのも、悪いばっかりじゃないと思うけどね。」
皇「それはそう思います。コピー、トレース自体が悪で、違法って、事じゃありませんから。」
額賀「特にトレースは、扱いが難しいね。表現手法自体に、権利がある訳じゃないからね。」
皇「表現手法ですか?」
額賀「そう。たとえばぁ、、、、ほら、これ。写真。週刊誌の写真。」
皇「はい。」
額賀「ほら、寝そべって、お尻、突き上げて。」
皇「女豹のポーズとか、言いますよね。」
額賀「これ、イエローキャブの伝統的な、ポージングらしいんだ。」
皇「野田、社長の。」
額賀「そ。この人が開発したと言われている。このポーズで、事務所のタレントを世に輩出してきた、と言われている。これだって、このポーズ自体に、商標登録がされている訳じゃない。みんな、このポーズを真似して、やっている。他にも、歯を出して笑う、これだって若槻千夏が発明したって言われているんだ。それまでは白い健康的な歯を見せるなんて、グラビア的にはご法度だったけど、反対に、歯を見せて笑う事で、一世を風靡したと言われている。今じゃ歯を出して笑っていないグラビアの方が少ないだろう?」
皇「・・・そうなんですか。額賀さん。詳しいですね。」
額賀「当然だよ。そういうお客さん、いらっしゃるからね。」
皇「へぇ。」
額賀「だから、ポーズや構図自体に、権利がある訳じゃない。真似するのも、法的に、悪い事じゃない。ただ、そのポーズをトレースした、という行為に、良心の呵責が耐えられるかどうかなんじゃないかな。」
皇「良心の呵責ですか。精神的な話になってしまいますね。」
額賀「悪いと思っていない人間に、問うだけ無駄な事はないよ。ただし、有名になればなるほど、プロになればなるほど、経歴が積みあがって行く程、過去の行為が、のちのち、ボディブローの様に、響いてくる事もある。過去は消せないからね。あの時、こうしておけば良かったと思っても、今更、どうにもならない。
真似するんなら、真似したんなら、堂々と、責任をもって行えばいい。それだけだと僕は思うね。」
皇「確かにそうですよね。トレースも、コピーも、自分の行った行為ですもんね。いつか問われた時に、自分を肯定できるか、どうか。」
額賀「・・・・ま、それが出来ないんなら、頭、下げて、謝るしかないんじゃないの? 昔の自分に対してね。」
皇「・・・・・せめて、昔の自分くらいには、胸張って、堂々と、していたいもんですよね。堂々と、トレースしたって言いたいですよ。」
額賀「そう言える人間でありたいもんだよね。・・・・お互いに。」
瀬能「けっきょくニッポンなんて模倣品の国じゃないですか!」
皇「・・・・お前、仕上がってんな。もう飲んでるのか。」
火野「そうだ、そうだ、中国とかの事、言えないじゃない!」
皇「お前等、仲良しだな。」
瀬能「アメリカからクスねてきた物を分解して、真似て、同じモン作って、安く売って、そうやって大きくなってきた歴史があるわけじゃないですか!」
皇「・・・クスねてきたとか、言い方、言い方。」
火野「途上国が経済的に大きくなるには、そうやって、大国のモノマネをして、技術を盗んで、自国の発展の為に、利用する。当然でしょう?」
皇「・・・昭和の時代なら許されたけど、そういうの、世界的に、厳しくなってきたからなぁ。」
瀬能「コンプライアンスですか?話題のコンプラ? 英語?英語かよ! 日本人にわかりやすく日本語で話せ!」
火野「我々はぁ、インスパイアされて、リスペクトしぃ、たまたま似たような物を作り、場合によっては、オリジナル以上の性能のものを、作ってしまった、わけでぇありますぅ!」
瀬能「悪意は無いのでありますぅ!」
火野「ちょっと真似したからって、人の首を取ったみたいな、言い方、それは無いんじゃないの?って思わない?」
皇「・・・まぁ。まぁ、な。」
瀬能「あのねぇ、コピーするんだってねぇ、それなりに技術がいるのよ? 文房具屋でトレーシングペーパーを買ってぇ、カーボンシート買ってぇ、」
皇「なつかしぃなぁ、おい。いつの時代だよ?」
火野「トレーシングペーパーなんて、トレースするのに必要な道具じゃない。トレースする気まんまんじゃない! トレースは悪くない!」
皇「トレースは悪くないって言ってるだろ?」
瀬能「じゃ何が悪いんですか!」
皇「トレースをしたことを公にしない事だ。」
瀬能「気づかない方がバカなんですよ!」
火野「見ている方にも、教養を試されるのよ? それがオリジナルなのか、トレース、コピーなのか? 分からない時点で、負け。分かる?」
皇「・・・・・暴論だなぁ、おい。」
火野「まぁ、今はね。ボタンひとつで何でもコピーできちゃう時代だから、コピーするのも時間がかからないし、安易に行えちゃうし、倫理観、道徳観も確かに、低くなっているのは確か。それは言える。」
瀬能「デジタルが悪いんですよ、デジタルが! デジタルが悪い! アナログならコピーされずに済んだものを! アナログでもやりますけどね。」
皇「レガシーって言うかさぁ、デジタルでデータ、取っておけば、劣化しないで、そのまま残せるわけだろ? あらゆる物を未来に残せる。小説だって絵画だって、建造物だって、なんだったら生物のDNAデータだって、残せるんだ。」
瀬能「うわぁ、複製人間じゃないですか! マモー!マモーですか!」
火野「羊のクローンとか、コピーとか、もう、現在でもいるしね。私達が食べている野菜、果物なんかも、データで複製している遺伝子、使っているみたいだし。」
瀬能「怖い、怖い、怖い、世の中です。もう、誰も信用できません! ある日突然、自分の本物が現れて、お前はコピーだ、とか、言うんでしょ?」
皇「・・・・・そういう映画、あったけどさぁ。もう、何十年も前に。お前、古いよ。データが。」
火野「でも、コピーだったら、同じじゃない? あなたも私も、同じ。同じ、火野御影。細胞レベルでDNAレベルで同じなら、同一人物じゃない。」
皇「・・・・・不二子先生の短編集か、お前は。」
瀬能「じゃぁ、私一号が働いて、私二号が買い物に行って、私三号が風呂掃除。私四号である私が、昼寝をすると。・・・・もしかしたら良い世の中になりそうです。」
皇「・・・・・お前ら同士で、クーデターが起きるだけだ。それも昔のSF小説であったわ。古いんだよ、話が。」
瀬能「・・・・コピーしても、されても、良い事ないじゃないですか。つまんない。」
皇「お前が面白くなくても、世の中、関係ないんだよ。」
火野「結局さぁ、思うんだけどさぁ、なんだかんだ言って、オリジナルには勝てないわけよ。」
皇「・・・・どうした急に?」
火野「コピーしたりさ、トレースした所で、上っ面だけじゃない。オリジナルを作った人の、経緯であったり、労力であったり、その人しか得られていない経験は真似できないのよ。お金に換算できない物がオリジナルにはあるのよ。」
瀬能「オリジナルには勝てないって事ですね。そりゃそうですよね。苦労して、そこに辿り着いた訳だから。この形に辿り着いた意味は、誰も、理解できるものじゃありません。技法は真似できても、過程は真似出来ないんですよ。」
皇「・・・・良い事、言った風に、まとめんなよ。」
ファ「神に仕える私が言うのもおかしい話ですが、人間。いえ、生物、生命全般に言える事ですが、あらゆる生命は、過去に、経験した行為しか、行う事が出来ません。あなたが行っている全ての行為は、過去、経験した行為だけなのです。
あなたが、自ら、無の状態から誕生させたものが一つでもありますか? 無いと思います。いえ、ありません。断言できます。
それが、真実。それが、理。
思いあがってはいけません。あなたが行っている事、発想した事は、あなたが、過去、経験した事に基づいているものです。過去の偉人が残した経験を、真似ているだけなのです。先人の知恵を、まるで、自分が考えた事のように振舞っているだけなのです。思いあがってはいけません。
当然、新しく始めれば、また、その新しい事が、あなたの経験となり、糧となるでしょう。いかに経験を多く積むか、それが、あなたの人間としての、生命としての、豊かさに繋がってくるものなのです。
神が人間を作り出した、というのも、あながち嘘では無いんですよ。無から有を作れるものは、神しか、いらっしゃいませんから。」
皇「お、今日は、弁当、買えたのか?」
瀬能「あ、はい。今日は、買えました。」
皇「トレース女はどうした? 先越して買えたのか?」
瀬能「いえ。トレース女はいませんでした。・・・・・・やっぱりぃ、何かの勘違いだったのでしょうか。たまたま、あの日、居合わせただけだったのかも知れません。」
皇「向こうもそう思っているだろうよ。変なのと出くわしたって。」
瀬能「変なのって何ですか?変なのって。美少女に向かって。」
皇「・・・・・・」
瀬能「少女は言い過ぎました。美女。美女に向かって。」
皇「まぁ。いいけどさ。ま、こんなけSNSとか、ちまたで出回っていて、生活様式とか発信している時代だからな。一人や二人くらい、生活のスタイルが同じ奴が出てきてもおかしくないだろうよ。理論上な。」
瀬能「・・・ええ。そういう事にしておきます。」
皇「でもお前。半額になって、百、九十円くらいの弁当、買えた所でさぁ、・・・・なんか、他に、する事、あるだろ?」
瀬能「はい。・・・なんか、ちょっと、はい。なんか、負けた気がします。試合に勝って、勝負で負けた気がします。人間として負けた気がします。こんな半額な弁当。こんな半額な弁当、食べていても、・・・・食べますけど。食べますけど、人生、負けている気がしますぅ。」
皇「・・・・わかった。わかったから泣くな。」
瀬能「だってぇ。だってぇ、せつないんですもん。みぃ~んな、半額の弁当、買っている人、さもしぃ気がしてぇ。人間的にダメな気がしてぇ。」
皇「サスティサブルだ、フードロスだ。誰かが食ってやらなきゃその弁当だって捨てられちまうんだ。お前が食ってやって、その弁当も成仏?できるんだ。いい事してるんだぞ?」
瀬能「そうですよね、そうですよね、私、この弁当?を助けてあげているんですよね?」
皇「そうだ。お前は良い事をしている。」
瀬能「ああ、なにか、救われた気がしますぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んなわけぇ、あるかぁぁぁぁああああああああ! ふざけんなぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」
皇「とりあえあず、メシ、食おうぜ?」
瀬能「はい。そうします。」
※全編会話劇




