しゅわしゅわ
『ど、どーなつ!』
光さまの目が、きらきらしてる。
『どーなつ!』
闇さまの目も、とろけてる!
想像だけで、夢中になっちゃうどーなつ、すごい!
「もうすぐトマが作ってくれますからねー」
にこにこキーアは、きらきらな精霊さんたちのちっちゃな頭をなでなでする。
微笑んだトマは、胸を叩いてくれた。
「おまかせください、キーアおぼっちゃま!
じゃあこれからどーなつ、つくりますね。精霊さまたちも、ご一緒にどうですか?」
誘ってくれるトマが、やさしい!
『す、するのだ!』
ぴしっと手を挙げたのは、風さまだよ。
『ぼ、僕も!」
キーアの髪の後ろから、闇さまも手を挙げた。
『……俺も、してやらなくもない』
ふんと鼻を鳴らす光さまに、闇さまがビクっとしてる。かわいい。
じゃなかった!
仲良し大作戦を、決行しなくちゃ!
『ぼ、僕も、手伝ってあげても、いいんだから!』
水さまが、ツンデレです。
『……まあ、俺はあまり器用じゃないので、邪魔になるかもしれんが、やってもいい』
地さまが、うむうむしてる。
『僕も、僕も!』
ぴょんぴょん跳ねてくれる炎さまが、かわいい。
「精霊さまたちが、手伝ってくださるって!」
「おお、ありがとうございます」
キーアの言葉に、精霊さんたちがいるだろうところに微笑むトマが、なちゅらるだ!
精霊さんたちも、うれしそうにぴかぴかしてる。
ヨニはのけぞってるよ。腰が心配になってきたよ。
「ではまず材料を量りましょうね」
どーなつを作るための、麦の粉、雑穀の粉、はちみつに、油を用意してゆくトマが、ちっちゃな小瓶を掲げた。
「トゥヤ師匠直伝の、ひみつの粉です!」
「え、麻薬!?」
あわあわするキーアに、トマのほうがのけぞってる。
「そんなのキーアおぼっちゃまに食べさせるわけないじゃないですか!」
「だって麻薬みたいに、おいしくておいしくてやめられないよ、トマのどーなつ!」
強制力に刃向かう気もちがないと、あぁっ! という間に、だるんだるんになっちゃう、誘惑のおやつだよ!
「最高のおやつを、いつもありがとう、トマ!」
「キーアおぼっちゃま!」
ひしと抱きあいました。
ぬくぬくでしあわせになりました。
ヨニがぽふぽふ頭をなでてくれる。やさしい。
『ぼ、僕も!』
ぴとりと抱きついてくる闇さまが、かわいーです。
ちょっと光さまがうらやましそうにしていたので
「抱っこです」
ぎゅむ
抱きしめたら
『う、うむ!』
赤いほっぺで笑ってくれました。かわいー!
トマが小瓶に入った白い粉を振る。
「これは焼き菓子をふわっとさせる粉なんです。ふくらし粉? 師匠のトゥヤが精霊さんにおすがりして開発したって言ってました。どーしても、ふあっふあのどーなつが食べたいって。どーなつを召しあがった精霊さんも、とっても喜ばれてたみたいです」
なるほど。精霊さん印の魔法の粉で、ふあふあのどーなつに!
「どーなつ愛が、爆発してたんだね。これがそのふくらし粉かあ。嘗めてもいい?」
「どうぞ。レモの果実と一緒に混ぜると、しゅわしゅわする、楽しい飲み物になるんです」
しゃしゃっとトマが、酸っぱいレモの果実を絞ってくれて、井戸水で汲んだ冷たい水に白い粉と一緒に混ぜて溶かしてくれる。
しゅわしゅわ、ちいさな気泡が立ちのぼる。
「おぉお!」
こくりと飲むと、爽やかな酸味が、しゅわしゅわ弾けた。
「わー! すごい、レモンソーダだ! ──わかった、これ、重曹だ! 麻薬じゃない!」
ぱちぱち拍手するキーアの髪から、闇さまがぴょこりと顔を覗かせた。
『しゅわしゅわ?』
「すっぱくて、しゅわしゅわ。飲む?」
首をかしげるキーアのほっぺたに両手をあてた闇さまが、飛び跳ねる。
『飲む──!』
不思議そうにグラスを持って、こくこくする闇さまは、めちゃくちゃかわいーけど、ヨニが目を剥いてる。
たぶん、突然グラスが傾いて、中身のレモンソーダが、ちょこっとずつ減ってゆくように見えるんだよ。
精霊さまって聞いてなかったら、間違いなくホラーだ!
『しゅわしゅわ!』
闇さまの目が、きらきらしてる!




