歓喜の
「キーア、体調は? 本調子じゃないのに、本気で剣を振ってしまって、ごめん。キーアが強くて、つい……」
心配そうに顔を覗きこんでくれるレォに、キーアはとろけて笑う。
「ちょこっと本気になってくれた?」
こぼれたキーアの笑みに目を瞠ったレォは、ほんのり紅いまなじりで、うなずいた。
「……めちゃくちゃ。あんなに速いの、はじめて。ついていけないから、吹き飛ばした。ごめん」
キーアは首を振る。
「謝ったら、やだ。めちゃくちゃうれしー!」
思わず抱きついたら、しなやかなたくましい腕で、軽々と腰を抱いてくれた。
びっくりしたように見開かれたレォの瞳が、うっとりするようにほそくなる。
「……こんなに細いのに、キーア、すごい」
ぎゅ
抱きよせられて、レォの香りに包まれる。
ちっとも汗くさくないどころか、涼やかな香りの奥にひそむ甘さが、いつもより強く薫りたつ。
「レォも細いよ!」
きゅっと絞まったレォの腰に思わずふれて、さわさわしてしまったら、青磁の瞳のまなじりが、ふうわり紅く染まった。
ぎゅ
抱きよせてくれる腕に力がこもって、頭の芯がしびれるような、レォの香りに満たされる。
2次元のスチルも輝いてたけど。
とろけてしまいそうなレォの香りに、レォのぬくもりにつつまれて、青磁の髪がキーアの頬をくすぐる3次元が、尊すぎて、めまいがする。
「……レォさま……」
『きゃー♡ きゃー♡』しちゃう!
思わず、さま付けだよ。
拝むしかない──!
きょとんとしたレォの頬が、ほんのり紅くなって、輝くようなかんばせが近づいた瞬間、悲鳴が襲った。
「先生──! レォさまと、ちっちゃいのが、また! いちゃついてます──!」
「まだ授業中なのに!」
「授業中じゃなくても、いやだぁあぁ──!」
「ひどい、レォさまぁあ──!」
「孤高のレォさまがァア──!」
「あ゛ぁあアアア──!」
皆の絶叫に、あわあわ離れようとしたら、レォの腕に腰を抱かれて止められた。
ぷっくり、すねたみたいにふくれるレォが、可愛すぎて、尊いです。
拝みました。
勿論です。
「あー、うん、反省会をしようと思ったけど、皆、興奮しすぎてて冷静な分析とか無理そうだし、授業はこれで終わることにする」
こほんとガチムチ先生は咳払いした。
「お家に帰ってから、いちゃつきなさい! 授業中は、いちゃいちゃしないように!」
おこな先生に、レォが鼻を鳴らす。
「これは模擬戦の後の、健闘をたたえあう抱擁です。皆するでしょう」
サッカーの試合の後とか、飛び跳ねて抱きあって、もみくちゃになってるよね!
なるほど!
「模擬戦の後は、いちゃいちゃしていーんだ! わーい!」
ぎゅむ!
タックルするみたいに、レォの細い腰に抱きついてみました!
「レォ、すごかった! 長剣って振り抜きにくくて小回り利かないのに、あんなに止められたの、はじめて」
健闘をたたえるよ!
「あんなに速いなんて、キーア、すごい。見えなかった。吹き飛ばさなかったら、やられてた」
ぎゅむぎゅむ!
レォが抱っこして、頭をなでなでしてくれる。
白組の皆で、模擬戦に勝った歓喜とあいまって、とろけるような至福だよ!
「えへへへへえ♡」
「キーア、かわいー♡」
レォのとろける香りに包まれて、なでなでしてくれるレォにうっとりしてたら
「だから、家でやれ──!」
ガチムチ先生に叱られました。
模擬戦後のテンションMaxでする歓喜の抱擁だったのに、しょんぼりだよ。
「うわあん! 心配で見に来たのに、きーちゃんが、浮気してるぅうう──!」
走るのが苦手なのだろうに、短い闇色の髪をほわほわ揺らして、懸命にぽてぽて駆けてきてくれたネィトが、涙目だ。
「体調のよくないキーアに、何してる、レォ──!」
土煙を巻きあげながら、爆速で走ってきてくれるルゥイも、激おこみたいです。
「……あれは、もしかして筆頭貴族であられるトリアーデ家の、ネィトさま……?」
「……大公殿下の第一子であられる、ルゥイ殿下……?」
騎士科の生徒たちと一緒に、ガチムチ先生まであんぐりしてる。
「……お頭、すげえ」
白組の皆が、ぽかんとしてる。




