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悪役令息の伴侶(予定)に転生しました  作者:   *  


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突撃




 きゅっと白いはちまきを頭に結んだら、戦いだ。


 大きくキーアは、息を吸う。



 キーアの白組の陣形は、防御に特化した方円陣だ。


 最初から突撃の陣を組んでいると警戒されちゃうから、万一の場合のレォの突撃に備えて、中央の将を何が何でも全方位から守る、まるい円の陣形だよ。


 レォの組の陣形は、将を固く守りつつ、中央突破も狙えるという攻守のバランスのいい魚鱗の陣だ。レォという最大火力がいるから、負けることはないだろうし、順当な陣だと思う。



 備えてはみたけれど、たぶん、レォは突撃してこない。

 そんな必要、ないからだ。


 いつ出ようと、いつでも勝てる。


 団体戦の模擬戦ということを考えても、クラスメイトたちに実戦の機会を与えるという意味でも、最初からレォが突撃とか、たぶんありえない。一瞬で終わってしまうからだ。


 だからこそ、こっちは突撃するんだよ!


 せっかくの模擬戦なんだから、勝機をつかみたいよね!



 白組の皆で、円陣を組んだ。


「絶対、勝つ!」


 キーアの闘志に応えるように、皆も叫んだ。


「絶対、勝つ!!」



 ほんのさっきまで死んだ目をしてた、背中のまるい人たちは、もうどこにもいない。


 おなじ人なのに、目は闘気に満ちて、盛りあがる筋肉に闘志がみなぎる。



 何の鍛錬も試練もなくても、ただほんの一瞬で


 ひとつの言葉で

 ひとつの気もちで


 人は、こんなにも、変われる。



 昨日までの自分とか、明日からの自分とか、振りかえることも、待つこともなく


 今、変われる。




「よかった。皆、元気になって」


 ふにゃりと笑うキーアに、皆の顔がちょっと赤くなる。



「皆で、勝とうな!」


 ちっちゃな拳を、キーアは掲げる。



「おかしらを、死ぬ気で守るぞ──!」


「おぉおオオオ──!」


 皆が掲げる拳が、輝いてる。






 ガチムチ先生が、手を挙げる。


「これより、ロデア大公立学園騎士科、特別講義第一回、団体戦をはじめる!」


 ブォォオオオ──!


 角笛まで吹いてくれたよ。先生も、やる気だ!



「闘え──!」


「おぉおおオオ──!」


 闘気が、噴きあがる。



「いっくよ──!」


 白の長いはちまきをなびかせて、キーアがちっちゃな拳をかかげる。



「突撃する! 白組総員、全力で走れ──!」


「盾を構えろ! お頭にふれさせるな!」


「うおぉおおオオオ──!」


 地響きをたて、土煙を巻きあげ、白組の全員が全速力で駆けだした。





「はァア──!?」


 余裕しかない感じで、ぶっこいていた青組の全員が、あんぐり口を開けた。


「ちょ、待て、方円陣だっただろ! 守りに徹するんじゃなかったのかよ!」


「なんだよ、鎧を着てるくせに、全力で走ってくるぞ!」


「はっや──!」


「おいおいおいおい、死んだ目をしてたくせに、なんでそんなにやる気なんだよ──!」


 青組の全員がのけぞる暇もなく、最前線に配置された青組の生徒たちが悲鳴をあげた。


「ちょ、突っこんでくるぞ──!」


「走りながら陣形を変えてやがる!」


「突撃特化の、くさび型になりやがった!」


「くそ、皆、防御を──!」


 あわてて盾を構えるが、ガタガタだ。



「白組、突撃──!」


「ぎゃあぁあァアア──!」


 死に物狂いの白組の猛攻に、青組の前衛が一気に崩れた。



「お頭を、前に──!」


「突撃しろ──!」


「しかばねは拾ってやる──!」


「突っこめ──!」


「うおぉおオオオ──!」


 皆が一丸となって、進路を切り開いてくれる。

 盾を掲げて、守ってくれる。



「行け、お頭──!」


「いってきます!」


 どんと胸を叩いたキーアは、全力で加速した。



「キーア──!」


 レォの切れ長の青磁の瞳が、見開かれてまるくなる。


 最奥にたたずむレォの背後へと一瞬で回り込んだ。




 レォのはちまきだけを切り裂こうと、キーアの双剣が風を斬る。



 入学試験のとき、キーアの双剣を現役の騎士さえ止められなかった。


 あの時より更に、トマ師匠のもと、キーアは懸命に鍛錬を重ねた。



 あの時より、ずっと速い。


 ずっと、高い。


 一瞬で、レォに届くほど。



 シャ────!


 刃に裂かれた風が鳴る。



 ギィイイン────!


 鋼の削れる音をたて、レォが掲げる長剣が、キーアの双剣を止めていた。


 すさまじい衝撃に、キーアの腕が、びりびりふるえる。


 切れあがるレォの青磁の瞳が、爛々してる。



「来てくれると思ってた、キーア」



 刃を交えながら、とろけるようなあまい声で、ささやかないでください──!



 うっとりして、拝んじゃうから!











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