ふっかつ!
キーア・キピア完全復活どころか、前より身体がかるいです!
わーい!
思わず、なつかしい、すきっぷしちゃったよ。
皆、今もできるかな?
やってみようとすると、足が、あわわわってなるよ。楽しいよ!
騎士科の特別講義が行われる、ロデア大公立学園の闘技場へと向かったら
「キーア!? 寝てないとだめじゃないか──!」
長い青磁の髪が地面と平行になるくらいな光速で、レォが飛んできてくれました。
「闇さまが回復してくださったんだよ。元気!」
ちょこっと力こぶを盛りあげてみました。
レォが、ちいさきものを見る目になってる。
「……闇さま?」
首をかしげるレォの、ひとつに結ばれた髪が、さらさら揺れる。
「精霊さまだよ」
切れ長のレォの瞳が、まるくなる。
「……さすがキーア」
形のよい唇が、ぽかんとしてる。
闘技場には、たくさんの生徒が詰めかけていた。
魔法科の特別講義は少人数、20人くらいだったけど、騎士科の特別講義は大人数だ。百人はいるのかな?
多すぎるんじゃ、と思ったけど、模擬戦とかするには必要な人数なのかもしれない。
「おぉ、キーア・キピアか! 欠席と連絡を受けていたが、もう大丈夫なのか? 無理しなくていいぞ?」
いかにもガチムチな騎士の講師が、心配そうに長身を折り曲げるように屈んでくれる。
……今のちっちゃさに切なくなりながら、キーアは拳を握った。
「だいじょぶです! キーア・キピア、全回復しました!」
『闇さまのおかげで!』は言ったらいけないような気がするから控えたよ。
『闇さま、ありがとうございます!』
心のなかで感謝したら、肩でちらちら闇が揺れた気がした。かわいい。うれしい。
「おお、回復が速いのは、魔法使いとしても、騎士としても有用なことだぞ。えらいえらい。しかし、聞いていたが、キーア、ほんとに騎士科か!」
頭をなでなでしてくれた先生が、キーアのちっちゃさを実感したようにのけぞった。
「入学試験、がんばりました!」
ロデア大公立学園、騎士科の入学試験に特化した鍛え方をしたからね。
合格できたあとは、トマがさらに騎士科向けに鍛えてくれたから、さらにバージョンアップした、はず!
ちっちゃな拳をにぎるキーアに、先生もレォも、ちいさきものを見る目になってる。
「なんだよ、あのちっちゃいの。騎士科の特別講義だぞ?」
「お前、入学試験で見なかったのか?」
「やべえの来た」
ガチムチで長身な騎士科の皆さんが、ざわざわしてる。
どちらかというと、むさくるしく、汗くさい感じの騎士科のなかで、レォは異色だ。
ひとりで涼やかで、しなやかで、ほっそりしていて、なのに剣の腕も持久力も随一で、めちゃくちゃいー匂いがするんだよ!
3次元、最高!
「キーアと一緒に講義を受けられてうれしいけど、無理しないで。つらくなったら、すぐに言って」
「ありがとう、レォ」
はじめましてスチルより、心配そうに顔をのぞきこんでくれる3次元レオのほうが、きらっきらだよ!
拝みました。
勿論です。
「武術、防衛術、戦術、すべてを理解して動ける優秀な騎士を輩出するのが、ロデア大公立学園、騎士科の目的である。皆は入学試験で優秀さが認められた者ばかりだ。基本は既に会得しているものとし、特別講義は実戦を行う!」
……基本、できてるのかなー……
ちょこっと、キーアは不安だ。
トマが教えてくれたけど、騎士っぽくないような気も……いやでも、トマが言うとおり、今のちっちゃい身体でタンクとか無理だし、正面からぶつかったら負けちゃうし、やっぱりトマの講義が最高な気もするんだけど……だいじょぶかな?
そわそわするキーアの隣で、レォが微笑む。
「キーアなら大丈夫。でも今日は体調がよくないから、無理したらだめ」
「ありがとう、レォ。ちょっとやってみて、無理だったら休むね」
闇さまのおかげで完全回復だけど、急激すぎたから、身体に負担があるかもしれない。
辛くなったら、すぐ休もう!
「よし、では軽くほぐして走って身体をあたためてから、実戦に移る。緊張などで気分がわるくなった者は無理をしないように!」
実戦……!
どきどきするけど、がんばるよー!




