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悪役令息の伴侶(予定)に転生しました  作者:   *  


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ゆくのです




「……あのう、そろそろレォさまの新入生代表のあいさつ、いけますか」


 空気を読んで、待っていてくれたのだろう司会の人が、おずおず聞いてくれるのに、皆で、びくっとなった。


 キーアだけじゃなかった。うれしい。


「行けます」


 汗をぬぐったレォが、キーアを振りかえる。


「キーアのおかげで」


 照れくさそうに、うれしそうに、まなじりを朱く染めて笑ってくれる。


「えへへ。俺のこと、レォが守ってくれたから。おかえし」


 ぎゅ


 ごつごつのレォの手を握ったら


 ぎゅうう


 握りかえしてくれる。


 後ろで司会の人が拡声魔道具の前に立った。



「ルゥイ殿下のあと、待ち時間、長くない?」


「次、騎士科の首席あいさつだよな?」


 ざわざわしていた講堂に、よく通る声が響きわたる。


「皆さん、大変お待たせいたしました。準備ができたようですので、新入生代表のあいさつを続けたいとおもいます。

 騎士科首席合格、レォ・レザイさま」


「わあ──!」


 あふれる歓声と拍手が広がってゆく。



「早く行ったほうがいい、皆待ってるから」


 もっともなことを告げるルゥイが、ぐいぐいレォを押しだした。


 ぶっすりふくれたレォが、ひとつに束ねた長い青磁の髪をひるがえす。


「すぐ戻る」


 魔道具の明かりに照らされた壇上へと進みでるレォは、まさしく3次元生スチルだ──!


 きゃ──ぁ──あ──!


 拝みました。


 尊い!



「レォ・レザイです。ロデア大公国の盾となり、剣となり、大公殿下を、民を、守り支えられる騎士となるよう、皆とともに励めることを、心からうれしく思います」


 低く澄んだ声が講堂を染めあげる。


 うっとり見惚れていたら、長い髪が床と平行になりそうな勢いで、しゃっと帰ってきちゃったよ。


 はや!


 ルゥイも早かったけど、レォも、はや──!


 3次元生スチルが、一瞬で終わっちゃったよぉおおお──!


 でも、ほんとに、すごくすごくかっこよくて、きれいで、うっとりでした!


 さすが攻略対象! って思っちゃうけど、でも、この世界でルゥイもレォも生きてて、懸命にがんばってて、だからこそ輝いているんだと思ったら、泣けてきた。


「キーア!? どうした!」


 光の速さで駆け寄って抱っこしてくれるレォが、やさしい。


「レォが、かっこよすぎて、泣けてきた」


「………………は…………?」


 レォが、耳まで真っ赤になってる。


 かわい──♡♡♡♡♡


「………………キーア、僕のときには、泣いてくれなかったね…………?」


 ルゥイ殿下の声が、大地をえぐってる!


「あのときはハゥザ殿下でわたわたしてて、でも、めちゃくちゃ感動しました! ルゥイ殿下も、レォさまも、すごくかっこよくて、そうなるために、どれだけ頑張ってこられたんだろうって思ったら、勝手に涙が──」


 あわあわ目をぬぐうキーアを、ルゥイの腕が抱っこしてくれる。


「そんな風に言ってくれるのは、キーアだけだよ」


「皆、俺たちは生まれながらにできると思ってるから」


 ため息をつくレォの隣で、ハゥザが不思議そうに首を傾げる。


「僕、生まれながらに何でもできるけど?」


「ハゥザはな」


 大公殿下の肩が落ちてる。



 しかし、このままじゃ、入学式があっという間に終わっちゃうよ!

 皆、せっかく気合を入れて、おめかしして来たのに!


 司会の人も、青い顔だ。


「そ、それでは、次に、魔法科次席合格、騎士科次席合格というロデア大公立学園始まって以来初めての快挙を成し遂げ、双方の特別講義を受講することとなった、キーア・キピアさま」


 前振り、長──!

 自分のことだと思えないよう!


「がんばって、キーア」


「応援してる」


 ルゥイとレォが、頭をなでなでしてくれる。


「……僕も、応援してる、から」


 きゅ♡


 そっと小指を握ってくるとか、そんな可愛い萌え技を使わなくても、その顔だけで、ものすごい攻撃力ですよ、ハゥザ殿下──!


 あばばばするキーアに、クノワがちいさく笑う。


「頑張れ」


「気を楽にな」


 大公殿下も、頭をぽんぽんしてくれた。


 豪華すぎる励まし、ありがとうございます──!


 留年 → 退学 のときのスチルみたいだよ。びっくり!



「……キーア・キピアさん……?」


 司会の人の顔が青いよ!

 ごめんなさい!


 ぴょこんとキーアは跳びあがる。



「は、はい! 行きます!」


 何かが間違っているとしか、思えないけど……!



 あわあわ袖から、壇上へと踏みだした。








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