とくべつ?
「却下って、魔法科に通えということですか?」
そうっと、キーアは聞いてみた。
『いやです! 騎士科に行って、最愛の推しの将軍にお逢いするんです──!』
言ったら絶対に逢えなくなる気がする……!
なんとなく。
ハゥザ殿下の、かわいくてちっちゃなお尻に、真っ暗な♡のしっぽが、ふよふよしてる気がするから──!
逆らったらいけないひと、ハゥザ殿下。
たぶん、BLゲームのラスボス。まちがいない。
推しと愛を育みたくても、ハゥザ殿下が出てきて、いじわるされたり、邪魔されたりしちゃって『えぇ!?』って思ってる間に『ハゥザ殿下、かっこいー♡』ってなって『……あれ? 気づくとハゥザ殿下のこと、考えてる……♡』って略奪愛されちゃうんだよ!
間違いなくラスボスだ!
…………………………。
……最愛の推しより早く、ラスボスが出てくるって、どういうことかな?
はやすぎない?
BLゲームが始まるのが入学式だから、始まる前からラスボス出ちゃったよ?
バグ?
バグなの──!?
こわい……!
でもたぶんハゥザ殿下はラスボスだ……!
あんまり逆鱗にふれないように、慎重に受け答えするのですよ。
緊張の拳をにぎるキーアを、面白そうに見つめたハゥザは、完璧な造形の唇を開いた。
「きみの魔法の才を潰すのは、惜しいから。闇魔法と一緒に他の属性の魔法も使えるだなんて、この大陸でキーアひとりかもしれないんだよ。魔法を学ばないなんて、ありえないよね?」
微笑むハゥザの顔力の圧が、ものすごいです……!
きゃ──!
『無理です!』とか、絶対言ったらだめな感じだ。
こわい……!
「……おかしいな。どうして僕が微笑むたびに、おびえるの……?
真っ白なうさぎみたいでかわいいけど……えぇ……?」
ハゥザ殿下が、引いてる!
……まあ、うん、よしとしよう!
ひいてください、思う存分!
そして興味を失ってください、ハゥザ学園長の毒牙にかからないように……!
ぷるぷるするキーアを守るように、レォが前に立ってくれる。
「あれだけ優秀な成績で騎士科に合格したのに、騎士科で学ばせないのは、納得できません。キーアはとても優秀な騎士になります」
断言してくれた!
「うわあん! レォ、ありがとうー!」
『レォって呼んで』言ってくれたから、呼びすてちゃったうえに、感激のあまり、抱きついてしまいました……!
顔も名前もないモブなのに、ごめんなさい!
「…………キーア…………?」
ルゥイ殿下の声が、大地をえぐってる。
「……これはちょっと……楽しい……?」
クノワ先輩が、楽しくなってる!
ハゥザ学園長は、にこやかに微笑んだ。
びくっとするキーアに、不服そうに形のよい唇がとがる。
なんですか、その可愛い顔は──!
バリエーション増やすの、やめてください!
圧倒的な顔力が、さらにきらっきらになってるよ!
「騎士科も、魔法科も、キーアが欲しいと言って困ってしまってね。たしかに両方の才があるし、基礎はできているようだから、応用と発展分野だけを学習すればいいという案に落ちついたんだ」
……本人の了承もなく?
いやいやいや、応用と発展だけって、無理じゃね?
魔法科は1週間の詰めこみですよ──!
「魔法科と騎士科の双方に、ルゥイやレォのような特に優秀な生徒だけを集めた組をつくって、特別講義を行う。
ルゥイやレォはそれぞれの科で一般講義も受けるけど、キーアは特別講義のみ。それだと無理なく受講できるだろうって教授たちが」
優秀な人たちと一緒に特別講義だけって、拷問じゃないの──!?
ぎゃ──!
泣きそうなキーアをよそに、ハゥザが続ける。
「一般講義を受けない分は、ルゥイやレォが教えてあげればいいって教授たちは言ってたけど……」
ハゥザの唇が面白くなさそうに、きゅっと尖る。
なんですか、その、ちょっとすねた、キス待ち顔みたいな可愛すぎる顔は──!
顔面の攻撃力が、すごすぎる……!
「ルゥイやレォの負担になるし、僕でいいんじゃない?」
「だめでしょう──!」
異口同音なふたりの猛抗議に、ハゥザがちょこっとひるんでる。かわいい。
ラスボスの可愛いところとか、きゅんとするよね!
ちょっと、攻撃力が半端ないですよ、ハゥザ学園長!
しかも、さらっと言ったけど、騎士科も魔法科も、両方教えられるんだ……さすがラスボス……!
「キーアに教えるなら、よろこんで」
「俺も、全く問題ない」
微笑んで了承してくれるルゥイとレォが、やさしすぎる!
「あ、あのでも、俺、ちょっと、両方は無理かなーって……」
ひかえめに、進言してみました。
逆鱗にさわらないように、そうっとね!
「じゃあ僕が教えてあげるよ。手とり腰とり、イロイロ、ね……?」
とろけるような微笑みで近づかないでください、ハゥザ殿下──!
きらきらエフェクト出てる!
さわると、すきになっちゃうとか、そういうの!?
もしかして、トラップなの!?
さすがラスボス……!
「僕に」
「俺に」
「教えてもらうよね?」
ルゥイとレォに覗きこまれたキーアは、涙目でうるうるしながら、ぶんぶんうなずいた。
「……ちょっと、楽しい……?」
クノワ先輩が、楽しくなってる!




