入学式です
「キーアおぼっちゃまの晴れ姿を、ぜひこの目に!」
ヨニも一緒に、大公立学園の入学式に来てくれることになりました!
馬と馬車を預かってもらったトマと一緒に、来賓席で見守ってくれるらしい。
照れくさいけど、とてもうれしくて、熱くなる頬でキーアは笑う。
「ありがとう、ヨニ、トマ」
「キーアおぼっちゃま、ほんとうに立派におなりになって……」
涙目なおじいちゃん執事ヨニを、ぽふぽふする。
「ヨニと、トマのおかげだよ。
いつもほんとに、ありがとう」
「めちゃくちゃかわいーですよ、キーアおぼっちゃま!」
ふわふわの栗色の髪を揺らして、トマが笑ってくれる。
「『かっこいー』がいー」
ぷくりとふくれたら、ふたりが笑う。
血が繋がってなくても、ほんとの家族だ。
トマが、がんばる馬と一緒に送ってくれた大公立学園は、たくさんの着飾った新入生であふれかえっていた。
皆、キンキンギラギラしてる!
貴族とか、裕福な商人の子とかが多いのかな?
一世一代の晴れ姿? 成人式? みたいな感じで、皆、めちゃくちゃ張り切ってるよ!
そう、大公立学園は入学は比較的簡単というか、根性があれば入学させてもらえるのですが。
卒業は難しいのです──!
BLゲーム『悪役令息と決闘だ!』でも、成績が悪いと、留年してしまう。
ひどくない? そんな厳しいゲームある? 攻略対象と離れちゃうんだよ?
さらに攻略対象たちと遊び呆けていて、悪役令息ネィトとの勝負に負け続けていると、退学という切ないエンドを迎えてしまう。
肩をぽんぽん慰めてくれる攻略対象が勢ぞろいという、かなり豪華なスチルになっていて、意外に人気のあったエンドだよ。
もちろん紀太も獲得した!
やさしいレォやルゥイやガダ先輩が輝いてた!
しかし現実で 留年 → 退学 コースは切なすぎる──!
でも、残念ながら可能性は非常に大きい。
卒業式は出られないかもしれないから、入学式に気合が入るんだよ! わかる!
『大公立学園に入学したんです♡』
卒業はできなくても、魔道具で撮った入学式の画像を手に、一生言い続けるんだよ! わかる!
なので、皆、めちゃくちゃ気合が入っていて、門の前は人だかりだ。皆、魔道具を掲げて画像を撮ってる。
白と青の衣のキーアは、おとなしい部類だ。
「……よ、よかった……」
ひとりでめちゃくちゃ浮かないみたいだよ!
ほっと息をつくキーアと新入生たちの向こうから声がする。
「新入生は、こちらにどうぞー!」
長机を前に腰かけた先輩たちが、新入生の名簿と出席を記録してくれているらしい。
どこに座ればいいかを教えてもらい、胸に白い造花をつけてもらっているようだ。
にこにこやさしげな先輩が手招きしてくれる隣で、ひとりで凍気を発してる人がいる。
たぶん、魔力が無意識に漏れてるのか、わさど漏らしているのか分からないけど、ほんとに冷たい。
せっかくほんのり寒さの緩んだ春なのに、さっぶい冬に戻してくれなくていいんですよ──!
突っ込めないほど『話しかけるな』オーラがすごい。
これはあれだよね、いやだって言ったのに無理に入学式の受付をやらされて激おこな感じ?
皆、そーっと見なかったことにして通り過ぎてる。
キーアもさわらないように、そーっと通りすぎようとしつつも、興味が勝ってしまって、凍気を発する人を見あげてしまった。
さらさらの藍の髪が、あふれでる魔力に舞いあがるように揺れている。
冷たさを引きたてるように眼鏡の縁が輝いた。
透きとおるレンズの向こうで切れあがる藍の瞳にまで、凍気が滲む。
ぴょこんとキーアは跳びあがる。
「クノワさま!」
きゃ──!
イケメンインテリ眼鏡枠の攻略対象、クノワさまだ──!
平民だけど物凄く頭がよくて、次期宰相候補、筆頭だ。
自分が身を立てて苦労した両親を支えたいという気もちから、一番野心が高い。
懸命に頑張っているだけなのに『愚かな貴族を軽蔑してる』とか、『周りを威圧してきて怖い』とか、冷たい見た目から誤解されたりしちゃう、かっこよくて可愛くて、かわいそうで、攻略せずにはいられない攻略対象だ──!
髪、さらっさら!
眼鏡、輝いてる!
はー♡ いー匂いするー♡
3次元のクノワさま、尊い──!
拝みました。
反射です。




