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ばしっと!




 おずおず進言してくれた従僕のトマに、キーアは首を傾げる。


「……見舞い?」


「はい、あの、おぼっちゃまが1週間もお目覚めにならなかったので、非常に珍しく責任を感じられたのではないでしょうか」


 ……非常に、めずらしいんだ……


 遠い目になったキーアは拳を握る。


「よし、会おう!」


「おぼっちゃま!」


 心配してくれるヨニのお背なをぽふぽふする。


「だいじょぶ、だいじょぶ。ネィトは他の男がいいみたいだしさ、伴侶(予定)じゃなくなった方がいいと思うんだよ」


「……おぼっちゃま……」


 ヨニの目がうるうるしてる。


「大丈夫! 俺もネィトのこと、何とも思ってないから!」


 ざまぁされる(もしくは、むかちゅくしあわせエンドな)悪役令息だもんな。どっちにしたって、こっちの旨味は皆無だ!


 さっさと別れてやる!


 モブはモブらしく、3次元な推しを遠くから鑑賞して異世界転生を楽しむのだ!



 鼻息の荒いキーアの前で、扉が開く。


「……何とも思って、ないんだ……」


 もさもさの黒髪の向こうで真っ青になっているネィトが佇んでいた。






 おじいちゃん執事のヨニが寝台に枕を重ねて、後ろに寄っかかれるようにしてくれる。

 まだかなり痛む頭で、ふかふか枕に埋もれるように半身を起こしたキーアと、お見舞いに来てくれたらしいネィトに、ヨニがお茶を淹れてくれた。


 さっき真っ青に見えたネィトは美味しいお茶とお菓子で復活したらしい。もさもさの黒髪もちょっと元気になったみたいだ。


「なんか幻聴がして、びっくりしたけど。僕のこと何とも思ってないとか、ありえないよね。キーアは僕のこと大すきでしょ」


 おいおい、断定だよ。

 自分の行いを振り返れよ。

 どこに愛され要素がある!?


「ほんとに怪我したの? 僕にお見舞いに来てほしくて、仮病なんじゃ──」


 たんこぶあるよ。

 でっかいよ。

 すんごいよ。


 見えてないとか逆にすごくない?

 見ようよ。


 じゃなくてさ!


 うわあ。

 浮気しまくるのをちょこっと諫めた伴侶(予定)を自分で突き飛ばしておいて、やっとお見舞いに来たと思ったら、言うことはそれなんだ。


 ──控えめに言って、さいあくじゃないか?


 半目になったキーアは、ヨニが淹れてくれたおいしいお茶をすすって、長々とため息をついた。


「伴侶(予定)じゃなくなろう」


「いくらキーアが僕と伴侶になりたくても、成人の18歳にならないと、なれないんだよ。そんな一般常識さえ知らないほど、あんぽんたんなの?」


 ──ブチギレていいかな?


 わなわな震えるキーアの背を、しわの手がやさしく撫でてくれる。


「キーアおぼっちゃま……!」

「ヨニ……!」


 ひしと抱きあった。

 ちっちゃい頃からずっと一緒なヨニの香りは、安心の香りだ。


 よし、落ち着いた!


 ヨニの胸から顔をあげたキーアは告げる。



「浮気して暴行して文句を言いにくるようなきみと、もう関わりたくない。トリアーデ家からの要請で仕方なく受けた、18歳になったら伴侶になる契約を、きみの責で破棄するよう、大公殿下に訴える!」



 ばしっと言ってやったぜ!


 これで伴侶(予定)じゃなくなるよ。


 やた!







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