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悪役令息の伴侶(予定)に転生しました  作者:   *  


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16/123

ないないない




 拝んでる場合じゃなかった!


 あわあわキーアは、直角に頭をさげる。


「ご、ごめんなさい、レォさま、俺のせいで」


 頭の撫で方は、試験前に教えることじゃなかった!


 深々と謝罪するキーアに、ふるふる首を振るレォの長い髪が、さらさら揺れる。


 試験官の目を盗むように伸ばされたレォの手が、ぐしゃぐしゃキーアの頭を撫でた。



「……消毒」


 笑読??


 今、本がどこに?


 ひねる頭が、ごつごつの手で、ぐらんぐらんに──!


「あがががが」


 さっき教えたのにー。

 上手にできてたのにー!


 また、ごんがんする撫で方に戻ってます、レォさま!


「頭がもげるから! やさしく!」


「……うん」


 こくりと頷いたレォが、ほんのり朱い頬で、頭をなでなでしてくれる。


 おお、ちょっとやさしく、なめらかになってきた!


「上手になってきましたよ!」


「そうか」


 ふうわり笑うレォに、びっくりした。



 あれ? 確かレォって、ほんのり微笑むくらいで、あんまり笑わないキャラだったんじゃ?

 笑顔スチルって、かなり親密度が上がらないと出てこなかった気が……?


 試験前に、ごほうびスチルとか、うれしすぎて泣いちゃう!



「尊い──!」


 拝もうとしたら、戻ってきたガチムチ試験官に頭をぽこぽこされた。


「こりゃ。いちゃつくのはお家に帰ってから! 試験だぞ!」


「すみません、ごめんなさい!」


 あわあわ謝るキーアの隣で、レォがぶすくれてる。



「俺が、わるいので。叱責は俺に。さわるのも、だめ」


 切れあがる青磁の瞳に、きょとんとした試験官が吹きだして笑ってる。



「すまん。つい、ちょうどいいところに頭があるから」


 肘が90度な感じで、ぽんぽんできるとか言いたいの?

 む、むかちゅく……!


「ちっちゃくないから!」


 くそう! これから毎日牛乳を飲みまくってやる!

 ……あるのかな? 栄養成分一緒かな?

 鉄棒か何かに、ぶら下がってたら背が伸びる?

 何でもできるトマに聞いてみよー!




「それでは大公立学園、騎士科、剣術試験をはじめる! ひとりずつ、騎士と対戦してもらう。3本勝負だ。判定は試験官が行う!」


 並んだ受験生、皆の顔に緊張が走った。


 騎士科に入学したい者と現役騎士では、実力に圧倒的な差がある。それでも3本勝負をするのは、圧倒的な強者を前にして、向かってゆけるか、怖じ気づいて剣を手放したりしないかを見るためらしい。


 騎士科の試験すべてが、根性試験だ。

 投げだしたりせず、喰らいついてゆく気概のある者なら、合格できる。


『根性だけ持っておいで。入学してから鍛えてあげる』スタンスだよ。やさしい。



「がんばろー!」


 拳を掲げたら、周りの受験生が、どよめいた。



「迷子じゃねえのか」


「いや、いちゃつきに来たんだろ?」


「応援する振りして見せつける、あれだよ」


「しかもレザイ家の孤高のレォさまと、いちゃつくだなんて……!」


「爆発しろ」



 うお!


 おかしい。


 モブのはずなのに、悪役令息ポジになってる!

 ……いや待て、これ、むかちゅく主人公ポジじゃないか……?


 いつも『爆発しろ!』叫ぶ方だったのに、叫ばれちゃった!



 え、もしかしてリアルが充実してる……?


 そんなこと、前世っぽい時も、微塵もなかったよ。


 まあ、理想が高すぎるともいう。

 イケメンが大すきすぎるともいう。


 2次元の、顔よし、身体よし、声よし、性格よし、頭よし、魔法まで使える! すんごいイケメンばっかり見てると、3次元『……えー……?』ってならない?


 だからBLゲーム大すきだったんじゃないかァア──!



 さらに夢の異世界転生まで果たしましたが!



 リアルが充実だなんて……!


 ないないないないない!


 顔も名前もない悪役令息の伴侶(予定)だから!



 身長は、これからだもん。

 まだのびるもん。





『爆発しろ』


 初めて叫ばれて、あわあわしてるキーアが緊張していると思ったのか、レォが屈んでくれる。


 目の高さを合わせようとすると、レォが長身を折らないとだめなんだな。


 キーアが、ちっちゃいからじゃない。

 レォの背が、高すぎるからだ!


 けしからんほど長い足と、近づくかんばせにどきどきしてたら、レォの瞳が細くなる。



「殺す?」


 ………………え。


 ──何を? 蚊でもいた? 冬だけど?









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