騎士科、入学試験だよ!
ロデア大公立学園騎士科の入学試験は、毎年同じだ。
過去問とか研究しなくていいのはありがたい。
ニューキーアも対策はかんぺきだ!
まずは筋力試験だ。
腹筋百回、背筋百回のタイムを競い、握力測定する。
これはまあ、途中で挫折しなければ、だいじょぶらしい。
もちろん、毎日やりました!
最初は、ひーひーして
「もうだめだぁああア──!」泣いたら
スーパー従僕トマに
「まだ1回目です、キーアおぼっちゃま」
突っこまれました。ありがとうございました。
そんな日もあったんだよ!
筋肉痛で腹筋と背筋が痛すぎて呼吸さえ辛かったよ! 笑うたびに痛いんだよ!
でも毎日がんばるって、すごい。
継続は力なりだよ!
筋肉は、裏切らない!
1回が2回になり、2回が10回になり、10回が12回になって、ちょこっとずつ100回できるようになりました!
「ふにふにふにふにふにふにふにィイ──!」
「はぇええ──!」
「なんだあのちっちゃいの!」
ちっちゃい言うな!
悪役令息の伴侶(予定)なモブ、後頭部しかない、顔も名前もなく、いらなくなったらポイなモブには、高身長もなかった。残念過ぎる。
でも、ほっぺたとまぶたの肉は落ちたから、青い目は見えるようになったぜ!
ちょっとかっこいーと思うなあ。えへん。
……誰も褒めてくれないから、自讃だよ。
泣いてないよ。
筋力試験の次は持久力試験だ。
学園の騎士科闘技場のなかを延々ぐるんぐるん50周する。
大公国が誇る、かなりおっきい闘技場で内周300メートルくらいなので、だいたい15キロくらいだ。
スーパー従僕トマ監督のもと、走りこんだから、やれるはず!
これも根性試験なので、途中でリタイアしなければ、ぽれぽれ歩いても合格させてくれるらしい。やさしい。
魔法科は学力と魔力があれば受験できるから沢山の人が受験するのだけれど、騎士科は試験がハードなので、受験生は少なめだ。なので、皆で一斉に並んでスタートだ。
それでも最初の列の人と最後尾だとえぐい差が生まれるので、一列ずつ1秒タイムを引いてくれるらしい。
ふらふらで走ってると今何周目なのかあやしくなるので、野鳥の会みたいな人たちが受験生の周回をカウントしてくれるという親切設計だよ。
最終周に入ると名前を呼ばれて鐘を鳴らしてくれるらしい。ありがたい。
「はー、どきどきする」
走れると思うけど!
スーパー従僕兼、監督なトマが一緒に走ってくれたけど!
まあ最後は歩いてもだいじょうぶだ。がんばろー!
ぱんぱんほっぺたを叩いていたら、いー匂いがした。
「わー!」
長い髪をひとつに束ねたレォのうなじが、かっこいー!
思わず拍手したら、振り返ったレォが瞬いた。
「ほんとに受験してる」
イケボだけど、言うことが、ひどいんですけど!
ふくれるキーアに、レォがちいさく笑った。
「ごめん。びっくりして」
『ちっちゃいから』
聞こえた気がするけど、聞こえなかったことにする!
「あきらめさえしなければ、持久力試験は大丈夫だから。がんばって」
やっぱりイケメン!
きらきら3次元イケメンに火照る頬で、ふわふわ笑う。
「ありがとー。レォさまも、がんばって!」
青磁の瞳が、瞬いた。
「……うん」
はにかむように笑うレォが、尊い──!
これも絶対スチルだ、間違いないぃィィイ──!
拝んだ。
こめん、抑えられない──!
リアル3次元な尊過ぎるイケメンを、拝みたい……!
「変な子がいる!」
「ちっちゃ!」
「……50周だぞ、死ぬんじゃねえのか?」
「迷子がいますー!」
うわさになりました。
すみませんでした。
迷子じゃないよ!
 




