ちゃんと
……最愛の推しゼァル将軍に、めちゃくちゃ頑張って、ようやくお逢いできたニューキーアでしたが、対象外だったようです……
ちょっと、いや、かなり、いや、ものすごく、しょんぼりした、とかだめだと思う。
最愛の推しの登場に紀太が全面に出ちゃって、ニューキーアの意識が飛びかけたよ。
真剣に浮気まっしぐらになりそうだったよ……!
キーアは、反省する。
いちおうキーアは、悪役令息ネィトの伴侶(予定)だ。予定は未定だけど、攻略対象に『きゃー♡ きゃー♡』するのは、まだゆるされるかもしれないけれど、本気で恋をしたり、愛をささやくのはだめだと思う。
推しへの愛は、可、な場合もあると思うけど、手の届かない推しと、手の届く推しは、ちがうと思うのです。
そして、手の届く推しは、恋愛対象になってきちゃう可能性が、とても高いと思うのです。
いや、隣にいてくださっても、大公兄殿下であられるゼァル将軍は、はるか遠い存在ですが……!
それでもやっぱり、目のまえにいる推しに、伴侶(予定)の目が♡になっちゃうのは、ネィトがしょんぼりするかもしれない。
やっぱり伴侶(予定)なので。
そこは、ちゃんとしないとと思うのです。
ネィトが『やっぱりルゥイが最高!』とか『レォさまがいー!』とか『クノワ先輩しか勝たん!』とかになって、伴侶(予定)でなくなった場合は、潔く身を引いてゼァル将軍に思う存分萌えを爆発させていいと思うのですが!
伴侶(予定)のうちは、自分から思いきり裏切るのはひどいと思うので、自重しようと思います。
ぎゅ、と拳を握ったキーアは、ちょこっと首をかしげる。
いや、今までも散々ルゥイやレォに抱っこしてもらってきたから、抱っこくらいならいいんじゃ……?
「きーちゃんが、浮気しようとしてる──!」
涙目なネィトに抱きつかれました。
ごめんなさい。
ぽんぽん抱きとめたら、ルゥイとレォ、ハゥザ学園長の頬がぷっくり膨れて
「……いーなー」
マェラがうらやましそうに指をくわえて
「……うわあ……レザイのぼんぼんだけじゃねえのか……」
ガダ先輩があんぐりして、ゼァル将軍の目が、遠くなってる。
「……ハゥザ、真剣に、こんな子どもたちを前線に連れてゆくのか」
ぼそりと、たまらなくいい声でゼァルが呟いて、ハゥザ大公弟殿下は眉をあげる。
「兄上のわるい癖です。見た目のお子さま具合で見くびらないほうがいいですよ」
お子さまって言われた!
…………反論できない。
「いや、強いのはわかるが、ちっちゃいだろう。吹っ飛ばされるぞ?」
ちっちゃいって言われた!
これから成長するんです──! って言いたいけど、魔物の討伐にゆくのは今なのです……
………………反論できない。
くぅう!
くやしく唇を噛むキーアを守るようにレォとルゥイが前に出る。
「俺が、キーアを守る」
「僕が、キーアを守る」
大きな背中で守ってくれようとするとか『ちっちゃいから』というだけの理由で降ってきた、おひめさまポジにうっとりして目が♡になっちゃうよ!
勘違いしてしまいそうなキーアも、あわあわ前に出た。
「俺も、レォとルゥイを守るから!」
ちっちゃな拳を掲げてみました。
『ぼ、僕も、がんばる……!』
髪のうしろがもしょもしょして、闇さまも、ちっちゃな拳を掲げてくれました。
それだけで勝てる気がするよ。
『まあ、きーなら……守ってあげても、いいけど……』
ぽそぽそ呟く光さまが、キーアの頭のうえにちょこんと座る。
『べ、別に? 守ってあげても、いーけど?』
ツンデレな水さまが、キーアの肩に乗って、ふいと顔を逸らした。
『まあ、何とかなるだろ』
ぽんぽん肩を叩いてくれる地さまが、てけとーだよ!
『いってみよー!』
ぱちぱち弾ける火花と現れた炎さまが、やる気だ!
『きーに、最初に呼ばれたのは、俺なのに……』
キーアの髪につかまった風さまが、すねてる。
かわいい。




