激
ルゥイが連れてきてくれた馬たちは、真っ白だ。
傍にゆくキーアを、やさしい瞳で見つめてくれる。
「馬、かわいー」
「ヒヒン!」
まっしろなたてがみが、さらさらしてる。
かわいー!
うっとりなでなでしたら、キピア家の栗毛の馬さんが、すねてる!
「ご、ごめんね。いつもありがとう。今日はお休みね」
「ヒヒン」
頬と首をなでなでしたら、ちょっとふくれながらも、うなずいてくれました。よかった。
「おぉお……! こんな高そうな馬車と馬、はじめてです!」
御者席に乗りこもうとするトマの手が、ぷるぷるしてる。
「トマなら大丈夫だよ。よろしくね」
微笑んだルゥイが、馬車の扉を開けてくれる。
「どうぞ」
きらきらのはちみつの髪を揺らして手をとってくれるとか、さすが攻略対象! 輝いてる!
勿論、拝みました。
尊い──!
ちょっとぶっすりしたレォとネィトと一緒に、ロデア大公立学園へ登校です。
白馬が牽いてくれる白い馬車に乗って登校だよ。
ありえないよね?
ルゥイの馬車と馬っていうのもありえないけど。
レォとネィトと一緒っていうのも、さらにありえないよ!
「今日は僕の馬車だから、キーアは僕のおひざ抱っこね」
にこにこして、ひょいとキーアを抱きあげて、おひざに乗せてくれるルゥイが、誤作動してる。
「あ、あのあの、俺、もう元気だから!」
あわてて膝から降りようとするのに、しなやかな腕でがっちりホールドされてて、逃げられません。
おかしい。
でも、あったかくて、ルゥイのいー匂いがして、うっとりしちゃうよ。
これは攻略対象なルゥイに抱っこされた場合の仕様です。
悪役令息の伴侶(予定)も、うっとり!
さすが攻略対象!
とろけるキーアに、ぶっすりしたレォが、高い鼻を鳴らす。
「明日は、俺の馬車だから」
「明後日はうちの馬車を借りるつもりだけど、僕、きーちゃんを、おひざに乗っけたら潰れちゃうよ!
だからきーちゃんが、おひざだっこしてほしいな♡」
ルゥイにおひざ抱っこされているキーアの膝に、ネィトが乗ってきた!
「何やってるの、僕が潰れるから! 重いんだけど、ネィト!」
あ、ひどい!
はちみつポジと思えない発言だよ!
涙目になったネィトが、ぷっくりしてる。
「ぼ、僕、きーちゃんより、かるいもん! ……たぶん」
はっと、ルゥイが鼻で笑った。
………………。
鼻で笑った……!?
ルゥイが!?
あんぐりするキーアの前で、ルゥイの若葉の瞳がほそくなる。
「キーアは羽のようにかるいよ。ネィトは大岩より重いから、どいてくれないか」
涙目でぷるぷるするネィトの頭を、よしよしした。
「今度、ルゥイのおひざに乗ってない時にね」
「ほ、ほんと!? きーちゃん、ありがとー!」
ぎゅう、と抱きついてくるネィトをぽふぽふする。
まあ、伴侶(予定)だからね。
それくらいはね。
ひざは、ちょっとやばいと思うが。
たぶん同じくらいの体重じゃないかなー。
頑張って鍛えてるぶん、ニューキーアのほうが重いかも?
10キロの米袋を5つ、おひざに載せるのを想像してみてほしいな。
かるくしぼう。
耐えてるルゥイが、すごすぎる!
尊敬の目で見あげたら
「俺ものせて」
ひょいとネィトをどかしたレォが、キーアのおひざに乗ってきました!
「おっも──! 死ぬから! 潰す気か──!」
ルゥイが、ばたばたしてる。
た、たしかにこれは、重い──!
レォは身長が高いうえに、ほぼ全身が筋肉だからね。脂肪より筋肉のほうが重いらしいよ。
しかし、あったかいし、レォのいー匂いする!
思わず、手を回して抱っこしてしまいました。
「しあわせの重み?」
「キーア♡」
振り向いて抱きつくレォの耳が紅くて、とびきりかわいーです!
「だ、か、ら、降りろ──!」
いつもとろけるようにやさしいルゥイが、激おこです。
「ご、ごめんなさい!」
あわあわ降りたら、ルゥイの唇がすねたみたいに尖る。
「キーアはいいの」
またおひざに乗せてくれるルゥイが、激あまです。




