8 病室から見える風景。
そんな時・・「お前ら!勉強のじかんだろう。サッサと教室に戻れ!」と言う男性の声がしたかと思うと【30代のイケメン】が腰に手を当てて仁王立ちしていたのだった。
俺は思わず・・「憲明・・」と小声でつぶやいてしまった。
その男性は俺の【実子】なのだ。
実は俺が【この】病院を作ったのは、俺の心臓が損傷した事もあるのだが、小学校教師になった息子が【同じ病気】で倒れた事が一番なのだ。
「先生!勉強しても退院出来ないんじゃ・・何の意味も無いじゃん。」と相変わらず【ヒネ】たチイさんだが・・
「大丈夫、医学の進歩を信じなさい。それに【魔法】が使える時代が来て病気なんかも【ヒール】一発で治るかもしれないじゃあないか。」と言う息子の言葉に、チョット俺も感心したのだった。
息子は当然【俺の顔】は知っているのだが、自分は【有名人】だからと、知らないフリをしてくれているのだろう。
【ドブロク】が俺に小声で話し掛ける・・「あの先生も箱を埋め込んでいるのだが、実は【神銀】の一人息子なんだとよ!」と。
俺は<ドキッ>として・・「刑事さんは彼を監視しているんですか?」と聞くと・・
「馬鹿言え!死にぞこないの俺にそんな気力なんて無いぜ!ただ・・不憫だと思ってな。」と言ってくれた。
昔、家族で焼肉店に行った時・・<神銀死ねや!>と叫んで刺客が襲って来たのだった。
それ以来、妻と息子とは別々に暮らす事とし、妻は旧姓に戻したのだった。
しかし、息子が小学校教員となり東の都で【女子アナウンサー】と結婚してから事件が起きた。
息子が自分の妻に対して<自分は影のフィクサーと言われる【神銀】の息子だ>と告げたのだ。
当時、アナウンサーをしていた息子の妻は、スクープが無くて焦っていたのだろう・・
「お父様に御挨拶したい!」と息子にお願いし、俺は【承諾】したのだ。
その後・・<スクープ!謎のフィクサー【神銀】を初撮影!>とテレビで流してしまったのだ。
当然、息子の勤務する学校にも・・<犯罪者に子供を任せられない> <反社教師は出て行け>等と父兄が押しかけ、迷惑電話が鳴りやまず・・
息子は<バタリ>と倒れて救急搬送されたのだった。
それから10年以上が経過しているが、何とか【箱】のおかげで生き延びていたので安心していたのだ。
俺が昔を思い出していると・・<あのう!>と言う息子の声で我に返った。
息子は高齢者2人に対して・・「お爺さん方・・あなた達もどうですか?一緒に【異世界】を作りませんか?」と声を掛けたのだった。