6 休憩スペースから見える、何気ない風景。
<カツン カツン>と、松葉つえを突きながら【休憩スペース】に行くと・・・
「もう酒は止せ!」「いいや死んでも辞めない」等と話をしていた男達が居たので、俺は声を掛けた。
「どうも。新入りの【神尾】です【東の都】から検査入院で来たはずが・・ワインを飲んでいた時にぶっ倒れてしまいまして・・」と話す。
座っていたのは【50代後半の男性】【30代の男性】だったが、どちらも胸が四角く膨らんでいた事が薄い浴衣から透けてみえたので、俺の先輩だと思ったのだ。
50代の男は・・「ああ俺は【ドブロク】だよ。こいつは【ドラッグ】だ。」と、話相手の男を指さすのだった。
「初対面の人に【ドラッグ】ってバラすなんて・・ヒドイなあ!」と笑いながらも・・
「俺は、ドラッグで体を壊してしまい【終焉のフロア】の一員になりました。」と言うので・・
「その【終焉のフロア】と言うのは何?ですか。」と尋ねると・・
【ドブロク】と名乗った男は・・「言葉のとおりさ。一度入れば~二度と娑婆には出れない
人生の終焉!だ。」と答えたのだった。
【ドラッグ】は・・「俺は犯罪者だから別にいいのだが、あんたは【東の都】の殺人課刑事だったのだろう?不公平だよね。」と言う。
俺が【刑事】と聞いて<ドキッ>として動揺を隠せないでいると・・【ドブロク】が「余計な事を言うなって。みんな警察が大嫌いなんだから!ゴメンね【お爺さん】どうせ退職まで入院なんだから大丈夫。」と寂しく言うのだった。
俺は「この箱って説明してもらえるんですよね?」と聞くと・・2人は「「え?」」と驚いた顔をする。
【ドラッグ】が「説明を受けていないですか?早く【ナースセンター】に行って聞いた方が良いですよ!人それぞれ【重度】が違うのだから。」と教えてくれたので俺はその場を去った。
【個室】に戻った俺は部屋の内線電話を取ると・・「久しぶり【院長】!胸の箱は何なんだ?
と尋ねるのだった。
暫くして【70歳位の白髪・白髭】病院院長が、俺の部屋に往診にやって来た。
そして「久しぶり【神銀】さん。」と、シワだらけの顔をくしゃくしゃにして<ニコニコ>と笑うのであった。
「あんたに救われて院長などと言う、大層な役を仰せつかって疲れるよ。」と言いながら【箱】について説明するのだった。
「つまり【箱】が無ければ俺の心臓は止まってしまう訳か?」と、納得するしか無かった。
「緊急だったのだ。あんたの心臓は【破裂寸前】だった。拳法の達人に昇竜拳でもくらったのかね?」と聞く。
俺は「うっ!・・個人的な事だからな。」と言うも、当たっていただけに焦った。
院長は「まあ・・いいさ。その【箱】も万能では無いので、激しい運動はダメだよ。」と言う。