真ん中の村
――新月村、そこはリンカータウンの西、レッチェタウンの東、二つの街の丁度真ん中に位置する村である。
♢
俺たちは、三日月村から北西へ歩き、新月村に着いた。ここは、俺が初めてのゴブリン討伐を請け負った村だ。ただ、その時は、1人の少女とその母親以外、村人の顔を見ることは出来なかったんだっけ……。
村の入り口には、それぞれが思い思いに持ち寄ったであろう、不揃いの武装に身を固めた男達が立ち塞がっていた。
「おい、お前たちっ! どこから来た!」
どうにも殺気だった男たちは、俺たちの姿を見つけるや否や、武器を構えて大声で呼びかけてきた。
「ぼ、僕たちは、冒険者ギルドからゴブリン討伐の依頼を受けてやって来たものです。一年程前にもゴブリン討伐でこの村にやって来たのですが……。僕と話しをした少女が居たはずです。その子に僕の事を聴いていただければ。」
「前にこの村に来たって?………あの白い髪?!」
「――おい! あいつ、例のダンピールのガキじゃないか?!」
ダンピール? 初めて聴く言葉だ……。
俺のことを言っているのか?
もしかして、この村の人間が俺のこと避ける原因がそれなのか!?
俺は知らない言葉に動揺した。
「私たちは、冒険者です。ここの前に三日月村でもゴブリン討伐を成し遂げてきました。こちらでもゴブリンが大量発生していると聞いています。どうか、まずは村に入れてください!」
動揺して話ができない俺に代わり、アメワがしっかりと交渉してくれた。
それにしても、こんなに殺気立ってるなんて、よほど状況が悪いのか?
「――わかった。信用しよう。中にはいれ。」
(くそっ、よりによって助けに来たのが忌み子のダンピールだなんて……。)
♢
ヒソヒソ声というのは、案外遠くまで聞こえるものだ。ましてや一人や二人じゃなく、その人数が多くなれれば、かなりの音量になる。
――悪口は言われ慣れているけど、この村の人たちの悪口はなんか心にキツいな……。
こちらに聞こえていないと思って話しているから、益々タチが悪い……。
♢
「ヒロ君……とにかく情報を貰ってゴブリン討伐にさっさと向かいましょう。」
『なんなのよっ! 相変わらずムカつく村ね! こんな村助けることないんじゃないの!?』
アメワは俺のいつもと違う様子を見て、早々に村から離れる事を提案し、また、いつものように、俺のことで怒ってくれる優しい妖精は、顔を真っ赤にして拳を振り上げている。
正直、吐きそうなくらいの悪意を感じ、自己防衛反応なのか身体がこわばっている。でも……、ナミちゃんの事もある。何か情報を掴めるかもしれないし、なんとか村人の視線をやり過ごして、ゴブリン討伐に向かおう。
最近、魔力の放出を抑えることができるようになったことで体調が良くなり、顔色もだいぶ良くなっていたヒロだったが、これでもかと強烈にぶつけられる悪意に、以前のような青白い顔になって、村の中へと入っていった――