ぼっち冒険者、反省する
女の子はまだ気を失っている。
アメワはまだ動けない。
――なら、ここから後ろにはゴブリンを通さない!
「石がもう無い! サクヤ!泥にハマってるゴブリンに炎の息吹! 正面は俺が受ける!」
まだ距離のある泥沼にいるゴブリンが燃え上がり、生き物の焼ける匂いが再び充満する。
正面から襲いかかってきたゴブリンは、袈裟斬りに一匹、返す流れで横薙ぎにもう一匹、最後に逆袈裟に一匹、何度も繰り返した基本の型で続け様に倒した。
しかし、その後までは続かず、二匹のゴブリンに取りつかれる。
『ミズハ! ヒロにゴブリンが取り憑いてるっ! 窒息させちゃって!』
ベルの指示で、取り憑いたゴブリンの顔に波の乙女が作り出したウォーターボールが張り付く。息ができずに苦しむゴブリンは、捕み続けることができなくった為、思いっきり蹴り飛ばした。
目の前に立っているゴブリンはあと4匹。
泥沼に足を取られていたゴブリンは、火蜥蜴と、いつの間にか詠唱を終えていたアメワがファイヤーアローで全滅させていた。
「よしっ!」
あとは落ち着いて迎え撃てば大丈夫だ。
足元に落ちている石を拾い、土小鬼との連携
でゴブリンを投げ貫く。
――なんとかなったか………
流石に今回の数のゴブリンの群れに突撃するのは危険すぎた。子供が攫われたりしていなければ、こんな作戦はぜったいに取れなかったな……。
「ヒロ君、ナミが目を覚さないわ……。身体に傷とかは見当たらないけど、何か薬でも飲まされたのかしら……。」
♢
攫われた村の子供であるナミちゃんが目を覚まさない為、休憩がてら巣の中を調べながらゴブリンの死体を焼いて回ることにした。
今回、倒したゴブリンは、ボスであろうボブゴブリンが一匹、仮面を被った不思議なゴブリンが一匹、そして雑魚ゴブリンがなんと30匹だった。
正直、終盤は危なかった。
奇襲で撹乱し、ホブと仮面を先に倒せた為、統率の効かない雑魚ゴブリンだけにできた所までは良かったが、やはり途中から手数が足りなくなった。
朝袋の石を使い切ったのも不味かった。
余裕のある時なら、その辺に落ちている小石を補充しながらやっていけるのだが、今回のように石を拾う余裕の無いケースでは致命的な状態になりかねない。
もっと、攻撃の手段を増やさなくては……。
「この祭壇って、なんだか気持ち悪いな。ゴブリンが神に祈るなんてことあるのかね。」
不思議な仮面は冒険者ギルドに調べてもらおう。
祭壇にしても、報告が必要だろうな。
子供を攫って、祭壇の前に寝かせていたのは、何か生贄みたいなものだろうか……。
♢
女の子は目を覚さない。呼吸はあるので、心配はないとは思うが、とりあえず村に連れて帰ることにした。
「なんで、目を覚さないのかしら……。」
ナミちゃんは、アメワが読み書きを教えている子供の一人だそうだ。心配そうにナミちゃんの頭を撫でるアメワは、色々と思案しているようだった。
「僕らではどうしようもないね。村には医者はいるのかい?」
「医者はいないけど、薬師はいるわ。とりあえず、親元に届けて薬師に診てもらうしかないわね。」
専門家に頼るのが一番か……。