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ぼっち冒険者と元魔術師


 冒険者だった頃の装備に着替えたアメワは、長くなった黒髪を後ろにまとめ、凛とした表情で歩いている。

 なんとなく、アメワの横顔に見とれていると、おしゃべり妖精に頬をつねられた……。


( まったく……、これじゃ、前世の嫁さんに怒られてるみたいだ……。)



 「あそこがゴブリンの巣よ。かなりの数になっているみたい。」


 頬をさすりながら、ゴブリンの住処を除くと、洞穴の前に5匹のゴブリンが屯していた。


――こんなに村の近くに巣を作ってるとは……村の人達は、今まで何もしなかったのか?


 あまりの村との距離の近さに、俺の眉間にシワが寄る。冒険者ギルドに依頼をだしても、見入りの少なさから、引き受けてくれる冒険者がなかなか居ないのだろう。


 本来、国内の住民の安全を維持するのは、国の仕事なのだろうが、中心部から外れた田舎の村には、あまり力を入れないのだろう……。

 警察官や消防士に街の安全を守ってもらえた前世からは、考えられないことだ。



           ♢


 

「攫われた子供の事を考えると、時間に余裕がない。子供がいれば炙り出しの手段は使えないし、出口に誘導して各個撃破では時間がかかりすぎるだろう。」


 今回は強行手段でいく。

 アメワもいるし、スピード勝負だ。



「巣の外にいる5匹のゴブリンは、外で生活しているのかも。そうだとしたら、巣の中からあぶれたのかもしれないわ。」


 もしそうだとしたら、かなりの数のゴブリンがいる事になる。しかし、子供の事を考えればのんびりしていられない。

 


「先頭は僕、ベルさんは僕の頭の上から全方位監視、アメワは僕の後で後方の警戒で。」


 まずは外にいる5匹。


 土小鬼に石礫を指示する。今の俺のコントロールは高校野球のエース並だぜっ……プロ野球選手と言えないのが、まだまだだけど。


 投げた石礫は、しっかり5匹のゴブリンの頭を貫き、巣穴の前は血溜まりができている。血と死体を見てもアメワは平気のようだ。さすが、ゴブリン退治でウデをみがいていたと言っていただけはある。



「突貫する!」


 俺たちは一気にゴブリンの巣穴に走り込んだ。

 中は、それなりの広さになっているようだが、全体を見渡すと奥はそこまで深くないようだ。一番奥には、祭壇のような物が見える。


『一番奥にホブが一匹! となりに変な仮面を被ったゴブリンが一匹! その奥の祭壇みたいな物の前に女の子が寝てる!』


 うちの斥候は優秀だ。もう攫われた子供を見つけてくれた。



「まずは子供の確保が最優先! 真ん中を突っ切る! ミズハ!ハニヤス! 左手に泥沼っ!」


 波の乙女と土小鬼の複合技で、洞穴の左手側の地面を泥沼に変える。突然巣穴に侵入してきた俺たちに驚き、そのまま泥に足を取られたゴブリン達は動けない。



「次っ! サクヤ!右手に炎の息吹!」


 俺たちに気づいたゴブリン達が動きだす前に、火蜥蜴の炎がゴブリンを焼く。



「アメワ、右手にファイヤアローで追撃!」


 走りながら魔法の詠唱をしていたアメワが、火蜥蜴の炎を逃れたゴブリンに炎の矢を打ち込む。



『左手、泥沼にゴブリン12匹っ! 右手、ゴブリン残り6匹っ!』


 素早く周囲を確認した妖精が、頭の上で叫ぶ。



「押し通る! サクヤ!ミズハ!前方に濃霧だ!」


 子供の位置をしっかりと把握した上で、火蜥蜴と波の乙女に複合技で濃霧を生み出させる。

 視界が突然効かなくなり混乱しているゴブリン達を弾力の意思を込めた障壁で弾き飛ばしながら、寝かせられている子供をの前を確保して陣取る。



「アメワ!子供の縄を外して! ハニヤス!サクヤ! 火山礫飛ばすぞっ!」


 子供を確保したことにより、今の俺たちの持つ最強の攻撃手段を使うことができるようになった。

 

 俺がばら撒く石に、土小鬼と火蜥蜴が同時に性質変化を施すと、真っ赤に燃えたぎる石の完成だ。

 その石は、ボブゴブリンと仮面のゴブリン、その他、弾き飛ばしたゴブリン5匹を巻き添えにして降り注ぎ、貫かれた部分からは炎があがった。

 


 状況をよく理解できていなかった左右のゴブリン達は、霧が晴れ、俺たちの姿を確認すると、殺到してくる。


 しかし、ボスを失い、バラバラに動いて集まるゴブリン達ならば、俺の剣の実力でも充分で捌くことができる。



『ゴブリン、残り21匹! あぁ、もう! 数が多いわね! 嫌になっちゃう!』


 数が多いと嘆きながらも、余裕の出てきたおしゃべり妖精は、持ち前の毒舌の回りもよくなってきた。


「ちょっとアメワ! あんた、もっと働きなさいよ! 私ばっかり目立っちゃうでしょ!」



 いやいや妖精さん、君は叫んでるだけでしょ……。まぁ、かなり助けられてはるんだけどさ。



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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