いじめられっ子、思い出す
♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎
あれ……ここは家かな……
「パパ、もう帰ってこないの?」
ただいま……パパはここだよ……
「パパは、遠い所に行ってしまったの…ごめんね。」
……俺は……遠くってどこ……
「嫌だよ、パパが居ないなんて嫌っ!」
……君の側にずっといるさ……
「ママも、パパがいないなんて、嫌よ…でも、パパはもう戻ってこれないの…」
……………
「なんで!嫌だよ!イヤっ!」
……………
♢
妻と娘が泣いている姿をずっと観ていた――
♢
ああ……、俺は2人の前に帰れないのか。
俺は2人を残して消えてしまったんだ。
俺は家族を泣かせてしまったのか。
晩御飯一緒に食べるって言ったのに。
あぁ、娘のランドセル姿見たかったな。
嫁さん娘と三人で、楽しく過ごしたかった。
君にはいつも迷惑かけてばっかりだ。
なんでこんな事になってしまったんだろう……
ありがとうも、さよならも言えないなんて……
2人ともごめんな……
ごめん……
ごめ……
ご……
……
…
♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎
冷たく薄暗いダンジョンの中で目が覚める。
微睡んでいた俺は、身体の痛みのおかげで徐々に意識が覚醒していく。
痛みを堪えてゆっくり目を開けると、滲んだダンジョンの天井が見えた。
何故か、頬には涙が伝っていた。
…………。
その時、はっきりと思い出した。
そうだ、俺は家族を残して死んだのだと――
あれは夢ではない。紛れもなく俺の後悔が見せた「現実だったこと」だ。僕の中にある前世の記憶が徐々に溢れ出してきて、涙が止まらなかった。
そう、俺は俺として生き、そして死んだのだ。そして確信した――
今、この世界に
今、この身体で
ナナシと言う人間として、ここに存在しているのだということを――