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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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パーティーの底力


――まずは、あの二人を助けるのが優先だろ!


 俺は込み上げる怒りを抑え、2人に駆け寄る。

 人数が減って防御編成が組めなくなったことにより、狼達は周りを囲もうと動き出した。


「サクヤ! 左側の狼に息吹だ! 蹴散らして!」


 俺は、右手で木の棒を抜き、障壁に力を込めながら残された2人の前に出る。左側に回り込もうとした狼二匹が火蜥蜴の火の息吹によって、火だるまになりながら消滅した。


『残りは、7頭みたいっ! 気をつけてっ!』


 妖精がリュックの中から魔物の正確な数を叫んでくれる。うちの指揮官、頼もしいじゃないか!


 残された2人の冒険者を、消滅していく狼を飛び越えさせて壁際に立つよう誘導し、俺はその前に立つ。

 狼よ、お前たちの攻撃は経験済みだ。俺には通用しない!



「えっ! ヒロなのか!?」



 後の剣士が発したその声に、俺も驚いた。

 なんと、残された2人はカヒコとアメワだったのだ。すると、2人がカヒコとアメワと気がついた途端、俺は頭が真っ白になり、何故か緊張で身体が固まってしまう。


 俺が悪いことをしたわけでは無い。


 ただ、また悪意に晒されるのではないかとの恐怖で身が竦むのだ……。


 ただただ、心が防御反応を起こしてしまうのだ……。



『――ヒロっ!! しっかりしなさいっ!!』



 いつの間にか頭の上に陣取ったおしゃべり妖精が、俺の頭を蹴り飛ばした。


 痛くはない。


 でも、俺の怖気を見事に吹き飛ばす。



「――ごめん! ベルさんありがとっ!」



 考えるのは後だ。先ずは目の前の危機を乗り越えなくては。

 アメワは戦うのは無理そうだ。カヒコは、何ヶ所か血を流してはいるが、剣は震えるだろう。



「カヒコっ! 行けるか?!」


「ああ、任せろっ!」



 よし、行くぞ! あと7頭――



 俺は波の乙女に指示した。


「ミズハっ! 打てるだけの数を狼達にウォーターボールを撃って!」


 波の乙女は、同時に5つの水の球体を作り出し、狼へ向けて飛ばす。フッと魔力を一気に奪われた感覚が襲うが、魔力切れを起こした訳ではない。


 水の球体は狼達の前で止まり、空中に浮き続けている。それに警戒した狼は5m程距離を取った。


 そこに遠距離攻撃を畳みかける。


「サクヤ、左の2頭に息吹っ! ハニヤスっ!石礫頼むっ! 」


 火蜥蜴の火の息吹は、左側に展開した狼の一頭に当たる。一番左手の狼は息吹を益々距離を取って避けた。

 俺は右側に展開している狼に連続で石を投げる。土小鬼の能力が間に合わなかったのか、石の当たった3頭のうち2頭だけが消滅した。


『残り4頭っ! 来るわよっ!』


 陣形を崩された狼は、一斉に距離を詰めてくる。

 左手を顔の前に盾のように構え、右手に棒を持ち下段に構えて狼を迎え撃つ。

 出遅れた1頭を除く3頭が同時に俺に噛み付く。

 2頭が俺の足に、1頭が俺の左腕に。狼達の連携に、とてもじゃないが避けられない。


 しかし、彼らの牙は障壁によって通らない。


「カヒコっ! 今だっ! 殺れっ!!」


 反応したカヒコが左足と左手に噛みついている狼を切り伏せる。しかし、ダメージは与えたが、一撃では消滅には至っていない。


「もう一度だっ! カヒコっ!」


 俺の叫びに反応したカヒコは渾身の一撃を繰り出し、左手に噛みついていた狼を消滅させた。


 右足に噛みついていた狼の顔には、妖精の指示で発動した水の乙女のウォーターボールが張り付いている。窒息寸前で噛む力も弱まった。


 カヒコは、左足に噛みついた狼にも渾身の一撃を叩き込み、消滅させた。


 あと2頭っ!


 その瞬間、出遅れていた最後の狼がカヒコに飛びかかった。俺に噛みついていた狼に全力で斬りつけていたカヒコはまったく反応できていない。


 カヒコは左肩に噛みつかれてしまった。骨をも砕く一撃だった。その勢いまま狼に組み伏せられたカヒコは激しい呻き声をあげた。

 俺は右足に噛みついていた狼を振り解き、カヒコに噛みついていた狼に木の棒を振り下ろす。しかし、俺自身の力では全く狼に通用しなかった。



( どうするっ! どうすればいいっ!? )



 動揺する俺の目に、自分の頭ほどの石を持ち上げて飛んでいる妖精の姿が映った。



『ハニヤスっ! 石礫よっ! 特別重くしてちょうだいっ!』


 妖精は、狼の背中に石を投げ落とした。

 絶妙に土小鬼によって重さを増した石が背中に落ち、狼が悶絶する。

 噛み付く力が弱まり、やっとの事で反応したカヒコが狼を剣の柄頭で叩き伏せ、狼は消滅した。


 左肩から血を流すカヒコをアメワに任せ、残っていた、気絶している狼を木の棒でたたき伏せ、消滅させた。

 

 連続して大量の魔力を喰われた為、気が抜けた途端に軽い脱力と目眩が襲う。しかし、動けない訳ではない。急いでカヒコとアメワを連れてダンジョンから脱出しなくては。



「―ヒロ……すまない。ありがとう。」


 そのままカヒコは気を失った――



 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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