パーティーの初探索
「おはようございます、フィリアさん。」
三度のゴブリン討伐のクエストをこなし、作戦もある程度固まった。長期の探索に挑む為の次の段階として、チーム【アリウム】は、ダンジョンの浅い層に挑むことに決めたのだ。
精霊達は報告していない、というかメンバーとして登録できないので、パーティーメンバーは、俺とおしゃべり妖精の2人だけ。
――でも、俺たちならやれる
ダンジョンに挑む際には、冒険者ギルドに滞在予定やメンバーなどを報告しておかなくてはならない。遭難した場合など、救援に向かう事ができるようにだ。
ただし、ケインさん達【アイリス】のように、最深部を目指すパーティーは、期間を決められない為、基本的にはメンバー報告のみになるようだ。
俺たちは、1日の予定でダンジョンに潜ることを登録した。
「無理な探索はしないこと。ちゃんと引く判断ができる冒険者こそ、一流の冒険者になれるのよ。」
受付のフィリアさんは、いつものように有難いアドバイスをくれる。そのアドバイスを胸に、チーム【アリウム】として、初めてのダンジョン探索へむかう。
大きなリュックを背負い、武器らしいものはリュックの脇に挿してある木の棒のみ。ベルトの右側には麻袋を、ベルトの左側には凝った意匠の小さな箱を括り付け、右肩から袈裟懸けに水筒を下げている。
俺がいた世界でなら、遠足にでも行くような格好の白髪の少年は、頭に妖精を乗せ、ダンジョンの中へと入っていった。
その姿を見たベテランの冒険者たちは指を指して笑ったり、ニヤニヤと馬鹿にしたりしている。また、中には、彼のことを魔物の子供のくせにと陰口をいう者までいる。
でも、少年は気にせずにダンジョンの階段を降りていく。なりたい自分になる為に。
――さあ、英雄になる為の第一歩だ