おしゃべり妖精の提案
『ねぇ、ヒロ? あなたのその障壁、離れた私を障壁で覆うことはできないかしら?』
3度目のゴブリン討伐を終わらせた帰り、なにやら考えこんでいたおしゃべり妖精が俺に聞いてきた。
『あのさ、私ってめちゃめちゃ素早いじゃない? だからさ、このパーティーの斥候役をやろうと思うの。 まぁ、私の実力なら敵に捕まるなんてことはありえないんだけど? ただ、ちょっとだけヒロの障壁があれば安心かなって。ちょっとよ、ちょっとだけそう思ったの!』
実は俺も、俺以外にも障壁を張ることが出来ないかと、練習はしていた。だけど、元々自分が他人を拒絶する為の力だからなのか、自分以外には障壁を張ることができないでいた。
「ごめん、ベルさん。一応、練習はしているんだけど、まだ自分以外に障壁を張ることができていないんだ。」
おしゃべり妖精は一瞬、残念そうな表情を見せたが、すぐに言葉を続けた。
『あんまり便利じゃないのね?! まぁいいわ。私の実力なら、ヒロの力なんか借りなくても大丈夫だから。これからは、私がパーティーの先頭を飛ぶから、任せてちょうだい!』
――いやいや、危険だから!?
「駄目だよベルさん! そんな危ない役目は。 ベルさんはこのパーティーの指揮官でしょ? ベルさんには、パーティー全体を見て、精霊たちを上手く動かす役割をしてもらわなくちゃ!」
『もう決めちゃったから。これからは、魔物を見つけるのが私の仕事ね!はいっ!この話は終わり!』
そう言い放ち、さっさと俺の前に飛んでいってしまった。身体は小さいのに、ベルさんは頑固だからな……。これは、なんとかベルさんに障壁をはれるように練習しなくちゃ。
また一つ、頑張らないといけない事が増えたなと思いながら、でもおしゃべり妖精が一生懸命に考えてくれたであろう事に自然と笑顔になっていた。
♢
――我ながら良い思いつきだったわっ! これなら、私もヒロの役にたてるっ!
悩んでいた妖精は、少年の前を飛びながら、少し軽くなった気持ちがして、いつもより身体も軽いような気がしていた。
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