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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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おしゃべり妖精、企む


 今、俺の装備は、ケインさんに買ってもらった丈夫な上下揃いの服。そこに素材集め用の大きめのリュックを背負い、リュックの右側に木の棒を差し込み、腰ベルトに麻袋、右肩から袈裟懸けに水筒を下げている。


 なんというか、子供が遠足に行くような格好なのだが、頭の上にはおしゃべりな妖精があぐらをかいて座り、ベルトの左側に取り付けた精霊箱には火の精霊、ベルトの右がわに下げた朝袋には小石と土の精霊、肩から下げてる水筒には水の精霊と、その実、5人のパーティーなのである。



―なんだろう、今、俺たち凄い冒険者パーティーになってる気がする。



 実際には、周辺の人に精霊の姿は見えないし、装備も貧弱な白い髪の少年が頭に妖精を乗せて歩いているようにしか見えてないのだけど……。



『さぁ、私が今できる事はやったわ。ヒロどうする? 早速ダンジョンに潜る? 私はいつでも大丈夫よっ!』



           ♢



 ベルさんは、やる気満々だし、俺もはやる気持ちが抑えきれずにいたのだけど、他の精霊たちは冷静だった。


『なによっ! やる気をそぐわね〜っ! でも、あんた達に言われなくてもわかってるってのっ! 指揮官はいつでも冷静に判断するものよ。』


 おしゃべり妖精は、すでにこのチームのリーダーになったつもりのようだ……まぁ、精霊たちの方が冷静みたいだし、うまく扱ってくれるだろう。

 俺も賑やかな妖精の姿を見てたら、ちょっと冷静になれたしね。


 これは、ある意味、ベルさんの才能かも?



「じゃあ、まずは一度テントに帰って、これからの事を考えようか。」


 俺が歩き出そうとすると、


『ねぇ、せっかく冒険者ギルドの前までやってきたんだし、ヒロの才能判定をしていきましょうよ。これからの作戦に、現在の戦力の把握は重要よっ!』


 おぉっ! 指揮官っぽい発言っ! さっきまでのおしゃべり妖精の姿では、想像もつかないな。



『何よニヤニヤして! なんか、失礼な事考えてそうだけど? まぁ、いいわ。 もう一つやりたい事もあるしね……。』


 もう一つのやりたい事? なんだろ……



 飛んでいるベルさんに無理矢理手を引かれて冒険者ギルドに入ると、受付のフィリアさんが、目の前の冒険者とのやり取りをしながら、こちらに気づいて目配せしてくれた。


 フィリアさんの仕事が一段落した所で、挨拶にいく。


「こんにちは、フィリアさん!」


 すると、フィリアさんは、悲しそうな目で俺に話しかけてきた。先日のカヒコとアメワとの件について誰かから聞いたのだろう……。


「ヒロ君……新しいパーティーの件、残念だったわね……気を落とさず、頑張るのよ。」



( 何を頑張ればいいっていうのだろう…… )


 正直、何を頑張れば良いのかわからないけど、フィリアさんの優しさは嬉しかった。



『ヒロなら大丈夫よっ! 私がついてるものっ! だから今日は、ヒロと私のパーティーを登録しにきたのよっ!』


―えっ?パーティー!?



 そりゃびっくりだよ。ベルさんがもう一つやりたい事って、パーティー登録だったの?

 俺もファリアさんも、ドヤ顔で胸を張る妖精を前に固まってしまった……



『なにしてんのよっ! ほら、ヒロ! さっさとパーティー登録しなさいっ!」


 ベルさんに促されて、やっと頭が働き出した俺とフィリアさん。あせあせと動きだす。


「ヒロ君? ベルさんの言ってる事は本気なの?一度くらいパーティーで失敗したからって、焦ったらだめよ?」


 冷静になったフィリアさんが俺に気を使ってくれる。


「――フィリアさん、パーティーの登録よろしくお願いします。」


 よく考えてみれば、あのままダンジョンに行こうとしてたんだし、他に俺とパーティー組んでくれそうな宛ても全くないし……ベルさんと三人の精霊たちのパーティー、いいじゃないか!



 大丈夫なの、と繰り返し問いかけるフィリアさんに、しっかりと返事をした。


「そぉ…わかったわ。メンバーはヒロ君とベルさんの2人ってことで良いのね?」


 素早く立ち直ったフィリアさんが、テキパキと手続きを進め始めた。


「それで? パーティー名は決まってるの?」


 ベルさんの方を見ると、慌てて目を逸らされた……これは、そこまで考えてなかったな……さてどうしようか。



「――パーティー名は【アリウム】。真っ直ぐに信念を曲げない友人の名前からもらいました。」



 そうだアリウム、君も一緒に冒険に行こう!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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