石ころと土小鬼
結局、火蜥蜴さんの名前は【サクヤ】に決まった。
やっぱり火の女神さまにあやかってつけました。
しばらく、ご機嫌とるのに苦労したけど、これから一緒に戦ってくれると思うと、とても頼もしい。
サクヤの能力については、ベルさんがしっかり把握してるみたいなので、いざ戦いとなった時は、ベルさんに指揮してもらうことになった。
でも、さっきからベルさんとサクヤでバチバチの睨み合いをしてるような……上手く一緒にやっていけるのか、ちょっとだけ不安。
♢
ベルさんはしばらくサクヤとやり合っていたんだけど、急にかしこまって話し始めた。
『さて次ね。もう一人の精霊と契約の話をするわっ!』
ほぉ、ベルさんや、もう1人精霊を仲間にできるとは、ありがたや、ありがたや。
『ちょっと、あんた誰よ……まあ、いいわ。』
そう言いながら、普段俺が腰のベルトから吊り下げている麻袋を引きずってきた。袋の中には、俺が投石に使っている石が入っている為、身体の小さな妖精には、ちょっと重すぎるかも。
途中からは俺が代わりに麻袋を運び、ベルさんに指示されて、麻袋を開いた。
『さぁ、土小鬼、さっさと出て来なさいっ! ヒロに挨拶するのよっ!』
えっ、この袋の中に精霊がいたの?!
それはびっくり! 今まで全く気づかなかった。
ベルに促されて、三角帽子に手足が生えてるような小人の姿が現れた。
彼は土小鬼=ノームだという。土の精霊だ。
『この子もヒロの魔力が心地良くて、勝手に石と一緒についてきちゃった精霊なの。だいぶ前から麻袋の中に住んでたんだけど、恥ずかしがり屋だし、勝手に住み着いちゃったから顔をだしづらかったみたいなの。』
へぇ〜、そんなことってあるんだね?
そういえば、俺の周りには精霊が集まってくるって、ベルさんが言ってたっけ。
「じゃあ、その土小鬼さんも、僕らに力を貸してくれるのかな? ベルさん、説得してくれたの?」
『ちょっと待って。これから話すから。』
ベルさんはそう言うと、麻袋から出ている三角帽子に向かって説得し始めた。
♢
『ふ〜っ、全く石と同じで固い頭で困ったわ。まさに石頭ねっ! でも安心してっ! なんとかヒロを助けてくれる事に納得してもらったわっ!』
なんと!これで、火の精霊に続いて、土の精霊まで仲間に。ベルさん凄いっ!
『この子、さっきのサクヤとのやり取りを見てたみたいで、自分も魔力を分けて欲しいっていうのと、やっぱり名前が欲しいんだって。まぁ、この子は男の子だから、契約したって私は全然かまわないわ。』
かまわないって言うけど、魔力をあげるのは俺なんだけど……。というか、もしかしてサクヤの時に反対してたのって、サクヤが女の子だったからなの?
どういう……。
「僕に反対する理由はまったくないよ。土小鬼さん、ぜひよろしくお願いします。」
名前か……土の神様といえば……
「なら、君に送る名前は【ハニヤス】。違う世界の土の神様の名前だよ。いいかな?」
《―――っ!》
おっ、今回はすんなり受け入れてもらえたみたいだ。良かった〜。もしかして、これから精霊さんと仲良くなる度に名前を考えなくちゃならなかったりして。
ハニヤスは、土の精霊らしく、石を動かしたりできるみたい。ただ、自分の力だとあまり大きなものは動かせないから、例えば俺が石を投げた時に威力を上げる手伝いをしてくれるらしい。
まぁ、コミュニケーションは、ベルさん任せになるわけだから、やっぱり指揮はベルさんにやってもらおうと思う。
「ハニヤス、これからよろしくね。」
《―――っ!》
体よりも大きな三角帽子が上下に揺れて、なんとなく喜んでるようにみえる。
ああ、俺も精霊たちと話ができればいいのに。
でも、これで攻撃力の無かった俺でも、投石で魔物を倒したりできるかもしるない。
たくさんの可能性ができた。
それもこれも、ベルさんのおかげだ。
散々泣いたんだ。これからは笑って冒険するぞ!
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