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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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おしゃべり妖精と火蜥蜴

 

 いつもは賑やかなおしゃべり妖精が、目の前にいる火蜥蜴と無言で睨めっこをしていた。


 火蜥蜴=サラマンダーは火の精霊である。


 彼?は、ケインさん達から貰った精霊箱に封じられている火の精霊で、普段、焚き火の火種を準備するのに役立ってくれる、ありがたい精霊だった。


 以前、おしゃべり妖精の主張により、精霊箱から解放しようとしたが、俺の側の居心地が良いとのことで、そのまま精霊箱に住んでくれている。


 ベルさんは、その火蜥蜴に、ダンジョンでの協力を頼みたいと言い、今、何故か睨めっこ状態なのである。



「あの……ベルさん? 火蜥蜴さんは協力してもらえることになりましたか?」


 なんとなく、ピリピリとした雰囲気に、つい敬語になってしまう。



『はぁ? 何言ってるの? そんなのもうとっくに話は終わってるわよっ! 問題はそんな事じゃないの! 邪魔しないで。』


「は、はいっ!?」



 いやいや、睨めっこしてただけじゃないの?

 まぁ、ダンジョン探索に協力してもらえる事が決まったのなら、問題はないような気もするんだけど、他に何が問題なのか……。


 それにしても、火蜥蜴=サラマンダーさんが協力してくれるのはとても嬉しい。今までも、頼めばすぐに火種を用意してくれてた訳だし、なんというか、すでに仲間みたいに感じていたし――


 おしゃべり妖精の話によると、火の精霊は、炎による攻撃力に優れていて、俺たち攻撃力皆無組にとって、とてもありがたい仲間になるとのこと。

 考えてたら、また泣きそうになってしまうが……パーティー結成に大失敗した俺にとってはかなり嬉しい仲間だ。



「ベルさん、その後、どんなもんでしょうか?」


 緊張感からまた敬語で話しかけてしまった。



『待たせたわね、契約は成立したわっ! この子はヒロの事が大好きだから、言われなくても、力なんか幾らでも貸すつもりだったって言うの。でも、ヒロと話せないからずっと待ってたんだって。』


《―――。》


 火蜥蜴は、炎の舌をチラチラさせながら、こちらを見ている。



『だから、なんでさっさと頼まなかったんだって私に言うのよっ! 全く失礼しちゃうわ。』


《―――っ!》


 火蜥蜴が、今度は炎の舌をおしゃべり妖精に向かってユラユラさせる。



『きーーっ! なんですって! もう一度いってみなさい! あんた許さないわよっ!』


 あれ? なんか雰囲気がおかしい?


「ベルさん? どんなお話をなさって……。」


『こいつ、私が鈍臭いからヒロが苦労するんだって言うのよっ! さっさと私に頼まないから悪いって!』


《―――。》



 あ、なんかわかってしまった。多分、火蜥蜴さんがベルさんの事を馬鹿にして笑ってる……。


「あの……ベルさん、落ちついて。」


 おしゃべり妖精をなだめて、火蜥蜴さんに向き直り、改めて挨拶する。


「火蜥蜴さん、ありがとうございます。改めて、協力よろしくお願いしますね。」


《―――!》


 あ、これもなんとなくわかった気がする。任せなさいって感じだ。なんか凄く嬉しい!



『それでね、ちょっとだけ条件があるらしいの。今までもヒロから魔力を貰っていたらしいんだけど、これからもヒロから魔力を分けて欲しいんだって。』


 あら、今までも魔力を食べられていたとは……全然気づかなかったけど、そんなことで良いなら安いもんだよね。


『実は、これは私にも関係あるんだけど、私自身は魔力は少ないの……だって、この身体でしょ? キュートな私は魔力もキュートなのよ……。だから、火蜥蜴が力を使う際には、ヒロの魔力を使わせて欲しいの。』


 なるほど。


『実際に火がある所なら、精霊はそこから力を利用することができるんだけど、ダンジョンには火が無いでしょ? だから、ヒロの魔力を使いたいの。』


 なるほどなるほど。OK、OK、問題ないね。



『あと、もう一つ。これには私は反対なんだけど、ヒロのそばから離れたくないから、火蜥蜴は、名前をつけて欲しいんだって。』



 へぇ〜。精霊も名前欲しいのか。


「そんなことで良いなら、お安い誤用だよ。」


『お安くなんかないわよっ! 精霊に名前を付けるってことは、あんたと魔力で繋がるってことなのよ!? そんな事したら、私よりも火蜥蜴の方があんたのパートナーみたいじゃない!』


《―――。》



 あ〜、これ絶対煽り合ってるよ……


「ベルさん、落ち着いて! ベルさん、僕が火蜥蜴さんと魔力で繋がっても、ベルさんが居ないと話もできないんだし、2人?とも僕の大切な仲間なんだからさ、名前くらいつけてあげようよ。」


『む〜っ!』



 ベルさんを優しく掌で包み込み、俺の目の前に近づけた。


「僕の初めての友達はベルさんだよ。こうして火蜥蜴さんを説得してくれたのもベルさんだ。だから、ベルさんは特別な存在で、ほんと頼りにしてるんだ。だから、そんなに怒らないで。」


『――っ! わかったわよっ! でも火蜥蜴よりも私の方がヒロの一番なんだからねっ!』


 ベルさん、ありがと――



 さて、名前か……どんなのがいいかな?


「じゃあ、さっきの条件でよろしくね。 火蜥蜴さん、どんな名前がいいかな〜。」


 やっぱりカッコいい名前が良いよね。


「なら、カグツチでどうかな? 別の世界の火の神様の名前から取ったんだけど? カッコいいでしょ?」


《……………》



 あれ?気に入らなかったかな?


『ねぇ……もしかして、その神様、男じゃないの?』


 えっ!?

 


『………この子、女の子よ?』


 火蜥蜴さん、まさかの女の子でした!?

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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