ふたりぼっち、泣いたあと
2人は泣いた。
涙が枯れるんじゃないかと思うほどに。
♢
俺は、またかという思いが強かった。
――なんでこうなっちゃうんだろ。
カヒコとアメワの2人は、確かに俺を認めてくれていたと思う。
それなのに、他の3人の言葉ひとつで、ああも自分たちの意見を変えてしまった。
人の心は弱い――
自分に不利益が来てしまうかもと、ほんの少し揺さぶられただけで、簡単に信念が折れてしまう。
俺は、弱い者を護れる英雄になろう。
たとえ、自分に不利益が押し寄せてくるとしても、
人を傷つけるなら、自分が傷ついた方が良い。
こんな辛い思いは、俺だけで充分だ――
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
私は、こんなに後悔したことはない。
――なんで私は、あんなことを願ってしまったのだろう。
ヒロが、今までたくさん傷ついてきてることは知ってたらはずなのに、自分にとって面白くない事だというだけで、ヒロをまた傷つけてしまった。
人の心は弱い――
簡単に誘惑に負けてしまい、もしかしたら相手が不幸になってしまうと解っていても、自分の事を優先にして、相手のことを考えることを放棄してしまう。
私は、傷ついている人に寄り添える英雄になろう。
たとえ、自分が損をして、相手が得な状況になるとしても、
人を決して傷つけないように。
こんな思いは二度としたくない。
させたくない――
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
『ヒロ……私、あなたの役にたちたい。』
ベルは声を絞り出した。
『私は、精霊たちとお話しができるの。もし、ダンジョンに精霊を連れて行くことができれば、精霊たちにお願いして力を貸してもらうことができると思うわ。』
彼女の話によると、
精霊箱には、火の精霊サラマンダーが、麻袋に詰めている石には、土の精霊ノームが、宿っていて、
さらに
水筒の水には、水の精霊ウンディーネを宿らせる事ができるそうだ。
自分の方が魔力の位が高かったり、仲がよければ、力を貸してもらえるのだそう。
一番仲の良い風の精霊シルフを連れて行く方法がない為、今までは言い出せなかったそうだ。
『でも、これからは貴方の為に、私もがんばるから! 2人だけでもダンジョンに挑めるように、私頑張るから!』
ベルの話からすると、おそらく、精霊に力を借りるにはリスクもあるのではないかと思う。
俺としては、ベルさんに無理はさせたくない。
でも、ここまで必死に協力を申し出てくれたのに、無下に断ることもないだろうと思ったんだ。
「ベルさん、ありがとう。僕ももう少しスキルを使いこなせるようになってみせるから、2人でダンジョンに挑んでもらえますか―?」
『―――。』
ベルさんはまた泣きだしてしまった。
でも、首を何度も縦に振って頷いてくれた。
「いっしょに、強くなろうね。そして優しい英雄になろうね――」
これからは、2人で探索組だ―――
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