ぼっち冒険者、焦る
ヒロは焦っていた――
俺は、せっかくF級冒険者になれたというのに、未だに森で植物採取を続けている。
新しい才能も、スキルも、全く解明できてない。フィリアさんも調べてくれているが、他の街にある冒険者ギルドのデータベースにも全く存在を確認できないらしく、あまり宛てにはなりそうもない。
♢
ある日から、フィリアさんの勧めで、冒険者ギルドのパーティー募集の掲示板に張り紙をだした。
そこに書いた俺の役割はタンク。
とりあえず、自信のある防御面だけをアピールした形だ。
最近は、【障壁】の発動の出し入れにも慣れてきた。自分の意思で障壁を張ったり、止めたりできるようになった事で、魔力を使い切ることなく、逆に貯める事ができるようになった。
おかげで頭痛や吐き気に悩まされることもなくなり、顔色も良くなった。
必要のない時は極力障壁を止めているので、どんどん魔力は貯まっている。どこまで魔力が貯められるのかが解れば良いのだが、ゲームのように数値で見る事はできないので、何か調べる方法がないか探している。
ケインさんが教えてくれた、魔力は使えば使うほどその総量が増えるという話を信じるとすれば、産まれた時から常に限界まで魔力を使い続けていた俺は、かなりの魔力総量になっているのではないかと期待はしている。
♢
パーティー募集の張り紙を出してから、2週間が経った日、ギルドに薬草を納めにいくと、フィリアさんからメンバー募集に反応があったと、嬉しいお話しがあった。
募集に手を挙げてくれたのは、カヒコとアメワ という男女ペアだった。
剣士と魔術師のこの2人は、近くの村から冒険者になる為にこの街へやって来たそうで、幼馴染同士なんだそうだ。新人2人での活動では不安があるので、同じ位の年齢の冒険者を探していたらしい。
「は、初めまして、僕はヒロ。身体は小さいですがタンク役を目指しています。こっちはベル。妖精族で僕の相棒です。よ、よろしくお願いします。」
「へぇ〜っ!妖精族なんて初めて会うよ。俺はカヒコ、剣士を目指してる。よろしく!」
「私はアメワです。魔術師を目指してます。簡単な魔法ですが、火の魔法が使えます。よろしくお願いします。」
ベルさんは、何が面白くないのか、一度顔を見せたあとは、ずっと俺の胸ポケットに隠れてしまった。
「しかし、お前、見たところ盾なんか持ってないみたいだけど、ほんとにタンク役なのか?」
俺は、スキルで障壁を張って身を護る事を伝え、大概の攻撃は防げると伝えた。
「それって魔法も防げるのか?! 凄いな。頼りにさせてもらうぜ。」
カヒコとアメワ、それぞれと握手を交わし、お互いの役割とスキルについて話し合いった。そして、早速、明日からダンジョンの低層で魔石集めをする事に決まった。
「じゃあ、明日の朝、ギルド前の広場に集合な。」
カヒコとアメワが、俺に対して変な感情を持っていなさそうでホッとした。どうしても、他人は自分を嫌っているんじゃないかと心配してしまう。
2人と別れた後、受付のフィリアさんに挨拶しに行く。
「良かったわね、ヒロ君。とうとう初めての冒険ね。でも、初めてというのは特に気をつけないとだからね。 注意はし過ぎても、し過ぎだということはないものよ。だから、しっかり万全の準備して挑んでね。」
一通りの説明と注意点を改めを聞き、気持ちを入れ直した。元気に別れを告げて、テントへと帰る。
何故か、いつもはおしゃべりなベルさんが、ずっと静かなのは気になるけど、どうしても、明日の初冒険が楽しみすぎて、あまりベルさんを構ってあげられなかった。
麻袋に石を詰め込み、木の棒もしっかり準備した。これが、俺の冒険者としての第一歩だ――
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