ふたりでひとり
「――フィリアさん!! お願いします! 才能判定させてくださいっ!!」
俺は目が覚めてすぐ、冒険者ギルドへ走った。
自分に新しい才能が産まれた感覚があったから。
「まぁ、ナナシ君、そんなに慌ててどうしたの?」
「――なんか感じたんです! 2番目の才能を授かったような感じがしたんです! 判定やらせてくださいっ!」
息を切らせて駆け込んできた俺の言葉に、ファリアさんは、そんな事あるのかという顔をしていたが、拒否せず、急いで石板のある部屋まで案内してくれた。
♢
「――お待たせ。さぁどうぞ。」
俺は心を落ち着けるように深呼吸をしてから石板に手をかざした。
「――石板が反応したわね。どうなったかしら?あら!? 本当に2つ目の才能が生まれてるわ!?おめでとう!ナナシ君!」
フィリアさんは、自分の事のように喜んでくれている。
「それにしても、また不思議な才能を授かったわね。この名前も、今まで見たことも聴いたこともないわ……。」
石板はしっかりと俺の魔力に反応し、そこには新しい記載が増えていた。
▼
クラス 無し
才能1 アンチ/エンパシー
(反対、拒絶 対抗/共感、同情)
才能2 ダブル
(2重、2倍)
スキル 障壁 LV56
同調 LV1
剣術 LV1
投石 LV1
採取 LV1
▲
第二の才能【ダブル】、これはきっと、アリウムの存在を理解して、2人で一緒に進んでいく事を決めたから。
そして、今まで隠れていたステータス【エンパシー】は、俺が過去にアリウムと全く同じような経験をしてきたことにより、共感できたから。
ヒロ と アリウム のという2人の存在がお互いに認め合い、ひとつになれたことで授かった才能だと確信できた。
♢
「――改めておめでとう!ナナシ君。これで晴れて冒険者登録ができるわね。そしてお誕生日おめでとう! 」
そう、2番目の才能を授かったという事は、13歳を越したと証明できる。冒険者になれるということ。
「さっそく冒険者登録の事務手続きをするわね。」
フィリアさんがテキパキと書類を準備する。
「ここに名前を買いてね――あら、登録の名前はそれでいいの? 一度登録しちゃえば、簡単には変えられないわよ?」
「――はい、これでお願いします」
♢
手続きを終え、冒険者の身分証でもある冒険者証を自慢げに首から下げてテントへ帰ると、慌てて飛び出した俺に、すっかり置いて行かれたおしゃべり妖精が、頬をこれでもかと膨らませて怒っていた。
『ちょっと、ちょっと! 私を置いてひとりで何処に行ってたのよっ! まさか、自分だけなんか楽しい事してきたんじゃないでしょうねっ!』
そこで、俺は誇らしく " Fランク " の表示の入った冒険者証を持ち上げた。
「ベルさん!とうとうやったよ! 僕はとうとう冒険者になれたんだ!」
これで目標に一歩近づけた。
そう、これからが、俺たちな新しいスタートだ!