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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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気付きの日


俺は、朝の日課の棒振りをしている


 優しい剣士から教わった剣術の基本の型を繰り返す。

 

 上段から右袈裟斬り、左から薙ぎ払い、右下段から逆袈裟斬り、正面からの突き、上段から左袈裟斬り、右からの薙ぎ払い、左下段からの逆袈裟斬り、正面からの突き――


 この動きを繰り返してから、今度は投石の練習だ。


 木の的に向かって、石を投げる。集めておいた石が無くなるまで。


 朝から、カン、カンと石が的に当たる音を響かせていると、モゾモゾとおしゃべりな妖精が起き出してくる。



『ちょっと、ちょっと! まったく毎日よくやるわね〜っ! カンカンうるさいのよっ! おちおち寝てもいられないわっ!』



 騒々しく文句を言いながらも、彼女は可愛らしい笑顔で飛び回っている。



「おはよう、ベルさん。今日はよく眠れたかい?」



           ♢



 俺は、今までは無意識のうちに自分以外のものを拒絶し、自分の周りに【障壁】を貼り続けてしまっていた。だから、常にスキルが発動し、魔力を使い続けてしまうことになり、四六時中、魔力不足による頭痛に悩まされることになっていた。

 でも、先日、俺の中に起きた邂逅により、【アンチ】という自分の才能は、自分次第で解除することができると理解できたのだ。

 そうすると、周囲への拒絶の気持ちを抑え、障壁を消すことが出来るようになり、それからは、魔力不足による頭痛が起きることがすっかり減った。


 以前は、頭痛のせいで、いつでもしかめ面をしていた俺に対して、孤児院でも、街中でも、愛想が悪いと疎まれ続けていたのだが、今ではその頭痛の苦しみからも解放され、おそらく穏やかな表情をしていることだろう。青白かった顔色も、少しは良くなった気がする。


 そして、意識して【障壁】を消してみると、とたんに周囲の気配が敏感に感じられるようになったのだ。


 今までは感じられなかった、そよぐ風や降り注ぐ光の感触。そして、暖かさや、冷たさといった温度。今まで忘れていた、ありとあらゆる感覚が一気に俺の中に流れ込んできた。

 そう、俺は元々知っていた。前世の頃には感じていたはずの感覚が蘇ってきたのだ――



 おしゃべり妖精が、元気に空を飛びながら俺に語りかける。


『――風が気持ちいいわね。シルフたちも楽しそう。』



 俺には、風の精霊を見ることはできないが、精霊が運んできた風を感じることができるようになった。うん、風が気持ちいい。この感覚は、とても懐かしい。


 じっと気配を探っていると、何かがそこに居るのかな? くらいには精霊たちを感じる事ができるようになってきた。いつかは、精霊たちと話してみたい。そう思えるようになっている。


 人にとって、何かを『感じること』とは、なんと素晴らしく、なんと大事なことなのだろうか――

        


            ♢



 その日、俺には、色々な変化が生まれた。

 今の俺が俺であると気づいた時から、色々と経験して、やっとここまで変わることができたのだ。

 さまざまな感覚を思い出し、心が安定した感覚だった。

 そして、この『気付きの日』から、実はもう一つ変わった事があった。不思議なことが起こるようになったのだ。



 俺は、毎晩、必ず同じ夢をみるようになったのだ――


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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