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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
60/455

いじめられっ子、本質に至る


            ♢



――なんでだよ! 悔しいよ! 悲しいよっ!



 俺は、普段青白い顔色を赤くしていた。

 孤児院での出来事を、自分がいじめられていたこと以上に怒っていたのだ。


 ドワーフの彼がいじめられていた事にももちろん怒っている。だが、それ以上に、常にいじめる相手を探している、そんな狡い存在達に大きな怒りを感じていたのだ。


 生きて行く上で全く必要の無い、不毛な行為を繰り返している存在達に。



――なんて、愚かな生き物なんだろう……。



 やりきれない思いをなかなか消化できぬまま、俺は無言で歩き続けた。いつもは騒がしいおしゃべり妖精は、テントに着くまでの間、無言で俺の頭に座り、ずっと撫で続けてくれた。


 ベルさんの温かい手の温もりが、自暴自棄になりそうな俺の気持ちをなだめてくれていた。こんなにも俺を気遣ってくれるなんて、感謝しても感謝しきれないな。

 優しい妖精のおかげで、少しずつ冷静になってきた俺の頭の中に、唐突にひとつの疑問が浮かんできた。



――あれ? 手の温もりを感じている?



 そう、普段、他人の感触を全く感じてこれなかった俺が、今、ベルさんの手の温もりをしっかりと感じて、気持ちを落ち着かせてもらっている……。


 あんなに嫌なことがあって、悔しさから、相当に尖ってしまっている精神状態で、常に発動しているはずの【アンチ】の拒絶の能力が発揮されていない。

 いつもよりも拒絶の力が強くなりそうなものなのに……。



 思い返してみれば、ケインさんと別れの握手をした時にも確かに手の温もりを感じた気がしていたのだ。あの時も、ケインさんの優しさが、俺の辛い気持ちを落ち着けてくれていた。


 ベルさんとケインさん、おそらくこの世界で俺が信頼していて安心できる存在。その2人の温もりを感じることができたということは……。


 ん〜、なんだろうな、あとちょっとで解りそうな気がするのに……。



            ♢



『あんたは、優しすぎるのよ。だけど、そんな優しいあんただからこそ、私はあなたが好きなの。精霊たちもきっと私と同じ気持ちなんだと思うわ。』



 普段、あんなに姦しく、賑やかなおしゃべり妖精が、優しく、頬を朱に染めながら言ってくれた。


 あぁ、なんと心地よい言葉だろうか。

 こんな風に、素直に好きと言ってくれる。


 そうか、俺もこの妖精の事が大好きなんだ。

 ケインさんの事も大好きだし、尊敬してる。


 そんな2人の事を拒絶することはあり得ない。

 2人に対して心の壁なんか作るわけない。



――!?



 俺は、突然そこへ考えが至った。


 そう、【アンチ】とは、反発の心。拒絶の心。


 今までは、俺自身が相手を拒絶していたから、【アンチ】の能力が発動していたんだ!


 そう理解した時、ケインさんとベルさんの顔を思い浮かべると、いつでもなんの意識しないまま発動してしまっていた【障壁】がすっと消えた。

 あれだけ、操作方法がわからなかったスキルが、感覚で動かせるようになったのだ。


 

          ♢



――俺は泣いた。


 今まで、周りが自分を拒絶しているものだと思っていたのに、逆に自分自身が周囲にある全てを拒絶してしまっていたということに。


 

――俺は理解した。


 これからは、自分自身が相手を信用して受け入れる事ができれば、相手を拒絶することは無いのだと。


 自分の心持ちひとつで、相手との壁を取り除く事ができるのだと。



――俺は感謝した。


 俺にあった心の壁が、自分自身の恐怖そのものだということに気づかせてくれた、優しい妖精と優しい剣士に。



 【アンチ】という才能の本質を知り、俺は、ここで大きく変わることができたんだ――




やっと自分の力に気づいてくれました。


彼を応援していただけたら幸いです。

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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