いじめられっ子、可能性を知る
フィリアさんが見守る中、俺は才能判定用の石板に手をかざした。
「あの……、魔力ってどうやって流すんですか?」
「石板が勝手に反応してくれるわ。ちょっとそのまま待ってみてね――ほら、反応してるわ。」
手をかざし続けると、石板が俺の魔力に反応し、鈍く光りだした。どうやら俺の魔力を吸い込んで、分析してくれるらしい。なんか、凄い道具だな。
さて、どんなものが見れるのか――
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クラス 無し
才能1 アンチ/▪️▪️▪️▪️
(反対、拒絶 対抗/▪️▪️、▪️▪️)
スキル 障壁 LV52
剣術 LV1
採取 LV1
▲
へ〜、こんな風に表示されるんだね〜。
スキルにある【障壁】ってのが、俺が今までアンチバリアと呼んで、使っていた能力なのかな? LV52って、なんか随分と凄いような……。
もしかしたら、【障壁】は、常にスキルが発動しちゃっているということは、スキルを使い続けているという事だから、そのおかげで、経験値がどんどん貯まって、いつの間にかレベルが上がっているのかも。
これは良い事なのか、それとも悪い事なのか……。なかなか判断しかねる問題だけど、この能力をしっかりと使いこなせるようになれば、俺も冒険者として成功できるかもしれない。
剣術と採取のスキルが表示されてるのが地味に嬉しい。ケインさんに教えてもらった通り、恵まれた才能がなくとも、剣術や魔法が使えるようになると言っていたのは、きっとこういう事なんだろう。
毎日、コツコツ努力を続ければ、才能の有る無しに関わらず、目標の技術を上げることができる。この事実は、よく分からなくて、使い道が難しい才能持ちの俺にとっては、とても励みになる。
才能については――、やはり【アンチ】という名前の才能だった。石板の表示には、よくわからないけど【反対、拒絶 対抗】っていう記載があるので、これらの能力の一端が障壁ってことなのかな?
「ナナシ君の第一の才能は【アンチ】っていうのね? 私も初めて聞く才能だし、それに、その隣にある記載も見たことのない表示だわ……。いったい、どういう事なのかしら?」
俺も気になってはいたんだ。初めてこういった石板を見たから、みんなこういう表示になるのかとも考えていたんだけど、やっぱり違うんだね。
「どうみても、これは、ちゃんと表示できてないわ……。石板が壊れている訳ではないと思うのだけど……。」
◼️で表示されている部分。う〜む。これはきっと俺の隠れた才能だ。そういう事にしておこう。
そうだよ。フィリアさんにもよくわからないみたいだし、元からよくわからない才能なんだから、俺の成長の可能性が大きいのだと思うことにしよう。
そう考えれば、努力のし甲斐もあると言うものだ。
「それに……、この障壁スキルのLV52ってどうなってるのかしら!? 普通、スキルレベルがLV10でも充分達人の域に達していると言われているのよ……。それをLV52だなんて……。もしかすると、ナナシ君はとんでもない才能の持ち主なのかもしれないわね――」
衝撃の事実!?
なんと、スキルはLV10で達人でした!
じゃあ、LV52ってことは、すでにめちゃくちゃな高レベルになってるってことに……というか、【反対、拒絶 対抗】という、見た目からしてネガティブなイメージの才能で、そこから発生したスキルが達人以上のレベルだという……、まぁ、なんとも複雑な気持ちにもなるわけだが、それでも人より大きく優れた部分があるのだと、ポジティブに考えることにしよう……。
♢
「フィリアさん、才能判定する事を勧めていただきありがとうございました。ぼ、僕の才能やスキル、まだまだわからない所だらけだけど、まだ第二の才能が授かっていない事も確認できました。それに、ど、努力を続ければ、色々と成長できる事もわかりましたので、コツコツと今やれる事をやり続けてたいきたいと思います。」
「私も色々調べておくわね。何かわかったら伝えるから、ナナシ君は、これからもちゃんと、マメにギルドへ顔をだすのよ?」
フィリアさんは優しく微笑んでくれた。
俺も自然と吊られて笑顔になって、フィリアさんに手を振ってギルドから外に出たんだ。
♢
冒険者ギルド前の広場にある水場で水をくむ。
すると、今まで寝ていたのか、胸元のポケットから顔をだしたおしゃべり妖精が騒ぎ始めた。
『――やっと終わったのね。もう、暇で暇でしょうがなかったわっ! 早く帰ってご飯にしましょ!』
「そうだね! 早く僕らのキャンプに帰ろうか!」
改めて、自分の才能がよくわからない物であることは確認できた。やっぱり自分の才能を理解できないと始まらない。でも、確実に俺の為に役にたってくれているのだ。
【アンチ】というネガティブな言葉に、なんとなく俺は忌避していた部分があったのだが、ちゃんと理解できれば、もしかするとイメージを一新する事もできるかもしれない。
この時から、どうやったら自分の才能を使いこなせるようになるかについて、改めて考えるようになったんだ――
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