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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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ぼっち少年、護り通す


        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 ドカッ! ボカッ!


 何度も何度も、俺の身体に衝撃が走る。


 俺は亀のポーズでしっかり体を丸めて、絶対防御のアンチの壁に拒絶の意識を益々高くして耐えている。


 ダメージは全く伝わらない。ただし、衝撃自体はは身体に伝わって感じているし、そんな中、三人組からずっと殴る蹴るを続けられていれば、精神的にはかなりキツくなってくる。



 しかし、我慢比べには今まで何度も勝ってきた。



 じっと耐え続けていると、とうとう痺れを切らした三人組は自らの武器を抜く。

 ただただ頭を抱えて丸まってる少年相手に、戦士の男は幅広のブレードソードの腹の部分を叩きつけたのだ。


 カーーーンっ!


 甲高い衝撃音が鳴り響き、俺の身体にもその衝撃は伝わる。しかし、耐えられない事はない!



「くそっ! 一体どうなってやがる。 傷すらつかね〜ぞ!?」


「おいっ! 下がれっ! 魔法を使うっ! 『世に顕在する万能なるマナよ、その力を炎の矢となし敵を貫けっ、ファイヤーアロー』!」


 とうとう魔術師の男は魔法を詠唱した。

 このアンチバリア、魔法にも効くのだろうか……


――頼む!耐えてくれっ!


 ドゴンっ!!!


 魔法でできた炎の矢が物凄い爆発音を響かせて俺にぶつかる。

 真横からの大きな衝撃に地面を転がる事になったが、身体には傷も火傷もない!

 

――よし、いけた!!



 俺は再び亀のポーズになり、ベルさんを優しく抱え直す。絶対に負けないっ!



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 ガスっ! ボコっ! ボカ〜ンっ!


 どのくらいの時間、理不尽な暴力を浴び続けただろうか……


 手持つ武器も、刃の部分で切り付けるようになったし、炎の矢も同時に飛んでくる。変な薬もかけられた。いったい、俺をどんな状態にしたいのだろう。



「やっぱりこいつ、化け物じゃねえか! ダンジョンから無傷で帰ってこれるわけないんだ! お前やっぱり魔物の子供なんだろっ!」


 レンジャーの男が叫ぶ。

 


「おいっ! 魔物の子供が街にいるぞっ! みんな見てみろよ! ハハハっ!」


 どんなに攻撃しても、俺からベルさんを奪えない三人組は、今度は言葉による暴力に方針を変えたようだ。


 しかし、流石にこれだけの長い時間、全く俺からの反撃もなく、一方的に剣やら魔法やらを使って暴力を奮っている3人の姿を見ていれば、普段は俺に石を投げるような者の中にも、三人組に加担するものはいなかった。



「なんなんだコイツ……キリがねえ。みんな行くぞ。」


 リーダーであろう、魔術師の男が戦士の男とレンジャーの男に声をかけて広場から去っていく。

 去り際に戦士が思い切り蹴りを脇腹に入れられたが、それにもしっかり耐えてみせた。



――勝ったぞ! 俺には戦う力は無いけど、僕は理不尽な暴力に勝ったぞっ!



 アンチバリアの壁に、ひたすら魔力と拒絶の意思を込め続けた俺は、頭痛と吐き気を感じながら、暴力に打ち勝った事に声にならない咆哮を上げた。

 しかし、長い時間暴力に耐えていた事と、3人が去った事に安心したせいか、いつの間にか意識を失っていた……。



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



『――ちょっと? ちょっと起きなさいよ。』



 可愛らしい声が耳のそばで聴こえる……。



『――起きなさいってばっ!!!』



――っ!?



 耳元で大きな声で叫ばれた俺は、びっくりして目を覚ました。


 あれ? 俺、何してたんだっけ……。


 顔を上げると何かにぶつかった衝撃があった。

 ピリっと頭が痛む。魔力切れで起きる頭痛……。そうだ、三人組に襲われて、なんとか耐え切ったところで気を失ったんだ。


 

「――はっ!? ベルさん! 大丈夫?」



 目の前でこちらを覗き見ている妖精の顔が目に入る。どうやらベルさんを頭突きで吹き飛ばしてしまったようだ。


『ちょっと! 何すんのよ! 危ないじゃない! ちゃんと周りを見なさいよっ!』


 賑やかな声が耳に入り、俺はふっと安堵の息をはく。どうやら、無事に妖精を護りきれたらしい。



『なんか……せっかく助けにきてあげたのに……逆に私が護られる事になるなんて……わ、悪かったわっ!』


 これはきっと謝られてるんだな。ふふっ



『ちょっと何笑ってるのよっ!』


 赤い顔でリンリンと羽を鳴らし、俺の周りを飛び回っている。



「ベルさん、元気そうでよかった。怪我は無い?」


『それはこっちの台詞よっ! まったく、あんたこそボロボロに……なってないわねっ?!』


 俺は第一の才能について説明した。そして、身体は全く心配ないことを伝えた。


『そうなの? でも、やられてばっかりなんて情けないわねっ! しょうがないから、これからは私があなたを守ってあげるから。 安心なさいっ!』


 ん!? 守ってあげたのは俺なんだけど??


 ……まぁ、いいか。

 


『だいたいね、なんであれから私に会いに来なかったのよっ! またねって言ってあったでしょ!?』


――えっ!? もしかして俺の事待っていてくれたの? あの時、俺が呼びかけようとしたら、話も聞かずにさっさといなくなったのに? マジで!? ってか、わかりにくいっ! そんなのわからないでしょ! 


    

………でも………めっちゃ嬉しい!!


 


 一方通行の気持ちだと思っていたのに、実は違かっただなんて!


 その日から、俺を守ると言い続ける、おしゃべりで賑やかな妖精と、一緒に冒険をすることになったんだ――

 



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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