ぼっち少年、護り通す
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ドカッ! ボカッ!
何度も何度も、俺の身体に衝撃が走る。
俺は亀のポーズでしっかり体を丸めて、絶対防御のアンチの壁に拒絶の意識を益々高くして耐えている。
ダメージは全く伝わらない。ただし、衝撃自体はは身体に伝わって感じているし、そんな中、三人組からずっと殴る蹴るを続けられていれば、精神的にはかなりキツくなってくる。
しかし、我慢比べには今まで何度も勝ってきた。
じっと耐え続けていると、とうとう痺れを切らした三人組は自らの武器を抜く。
ただただ頭を抱えて丸まってる少年相手に、戦士の男は幅広のブレードソードの腹の部分を叩きつけたのだ。
カーーーンっ!
甲高い衝撃音が鳴り響き、俺の身体にもその衝撃は伝わる。しかし、耐えられない事はない!
「くそっ! 一体どうなってやがる。 傷すらつかね〜ぞ!?」
「おいっ! 下がれっ! 魔法を使うっ! 『世に顕在する万能なるマナよ、その力を炎の矢となし敵を貫けっ、ファイヤーアロー』!」
とうとう魔術師の男は魔法を詠唱した。
このアンチバリア、魔法にも効くのだろうか……
――頼む!耐えてくれっ!
ドゴンっ!!!
魔法でできた炎の矢が物凄い爆発音を響かせて俺にぶつかる。
真横からの大きな衝撃に地面を転がる事になったが、身体には傷も火傷もない!
――よし、いけた!!
俺は再び亀のポーズになり、ベルさんを優しく抱え直す。絶対に負けないっ!
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ガスっ! ボコっ! ボカ〜ンっ!
どのくらいの時間、理不尽な暴力を浴び続けただろうか……
手持つ武器も、刃の部分で切り付けるようになったし、炎の矢も同時に飛んでくる。変な薬もかけられた。いったい、俺をどんな状態にしたいのだろう。
「やっぱりこいつ、化け物じゃねえか! ダンジョンから無傷で帰ってこれるわけないんだ! お前やっぱり魔物の子供なんだろっ!」
レンジャーの男が叫ぶ。
「おいっ! 魔物の子供が街にいるぞっ! みんな見てみろよ! ハハハっ!」
どんなに攻撃しても、俺からベルさんを奪えない三人組は、今度は言葉による暴力に方針を変えたようだ。
しかし、流石にこれだけの長い時間、全く俺からの反撃もなく、一方的に剣やら魔法やらを使って暴力を奮っている3人の姿を見ていれば、普段は俺に石を投げるような者の中にも、三人組に加担するものはいなかった。
「なんなんだコイツ……キリがねえ。みんな行くぞ。」
リーダーであろう、魔術師の男が戦士の男とレンジャーの男に声をかけて広場から去っていく。
去り際に戦士が思い切り蹴りを脇腹に入れられたが、それにもしっかり耐えてみせた。
――勝ったぞ! 俺には戦う力は無いけど、僕は理不尽な暴力に勝ったぞっ!
アンチバリアの壁に、ひたすら魔力と拒絶の意思を込め続けた俺は、頭痛と吐き気を感じながら、暴力に打ち勝った事に声にならない咆哮を上げた。
しかし、長い時間暴力に耐えていた事と、3人が去った事に安心したせいか、いつの間にか意識を失っていた……。
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『――ちょっと? ちょっと起きなさいよ。』
可愛らしい声が耳のそばで聴こえる……。
『――起きなさいってばっ!!!』
――っ!?
耳元で大きな声で叫ばれた俺は、びっくりして目を覚ました。
あれ? 俺、何してたんだっけ……。
顔を上げると何かにぶつかった衝撃があった。
ピリっと頭が痛む。魔力切れで起きる頭痛……。そうだ、三人組に襲われて、なんとか耐え切ったところで気を失ったんだ。
「――はっ!? ベルさん! 大丈夫?」
目の前でこちらを覗き見ている妖精の顔が目に入る。どうやらベルさんを頭突きで吹き飛ばしてしまったようだ。
『ちょっと! 何すんのよ! 危ないじゃない! ちゃんと周りを見なさいよっ!』
賑やかな声が耳に入り、俺はふっと安堵の息をはく。どうやら、無事に妖精を護りきれたらしい。
『なんか……せっかく助けにきてあげたのに……逆に私が護られる事になるなんて……わ、悪かったわっ!』
これはきっと謝られてるんだな。ふふっ
『ちょっと何笑ってるのよっ!』
赤い顔でリンリンと羽を鳴らし、俺の周りを飛び回っている。
「ベルさん、元気そうでよかった。怪我は無い?」
『それはこっちの台詞よっ! まったく、あんたこそボロボロに……なってないわねっ?!』
俺は第一の才能について説明した。そして、身体は全く心配ないことを伝えた。
『そうなの? でも、やられてばっかりなんて情けないわねっ! しょうがないから、これからは私があなたを守ってあげるから。 安心なさいっ!』
ん!? 守ってあげたのは俺なんだけど??
……まぁ、いいか。
『だいたいね、なんであれから私に会いに来なかったのよっ! またねって言ってあったでしょ!?』
――えっ!? もしかして俺の事待っていてくれたの? あの時、俺が呼びかけようとしたら、話も聞かずにさっさといなくなったのに? マジで!? ってか、わかりにくいっ! そんなのわからないでしょ!
………でも………めっちゃ嬉しい!!
一方通行の気持ちだと思っていたのに、実は違かっただなんて!
その日から、俺を守ると言い続ける、おしゃべりで賑やかな妖精と、一緒に冒険をすることになったんだ――