ぼっち妖精の出会い
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妖精は何度失敗してもめげなかった
妖精は何度危ない目にあってもめげなかった
それでも、妖精は懲りずに外の世界を見て回った
そう、外の世界は、楽しさで溢れていた
そう、外の世界は、様々な危険で溢れていた
でも、何度危険な目にあっても興味はつきなかった
でも、何度危険な目にあっても憧れはつきなかった
新しい経験は、ますます妖精を成長させた
新しい経験は、妖精をますます不安にさせた
心から安心できる事はありえないのだろうか
色々な事を繰り返し、経験し、とうとう見つけた
自分という存在に優しく語りかけてくれた存在に
自分という存在が安心して寄り添える存在に
悪意という魔物を感じない相手に――
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『ちょっとあんたっ!そこの人族っ!ボーっと観てないで、手伝いなさいよ!出れないのよ!』
通りかかった白い髪の少年に呼びかけた。
「あのさ、妖精? さん……。一度に運ばずに、何度かに分けて胡桃を運べば、簡単に出られると思うんだけど……??」
――あれ? なんか、優しい声じゃない?
いつもの人族とは違う? いや、油断はしちゃだめ。ちゃんと見極めなきゃ
――私を捕まえようとはしないのかな
彼からはそんなに悪意は感じないかも。でも、私を騙そうとしてるのかもしれないし
♢
「ふふっ。ベルさんと一緒だと楽しいね。」
――えっ!? 私といると楽しいの!?
久しく掛けられた事のない言葉だった。
名前をくれたあの子供以来の言葉だった。
そう、初めて私に外の世界での喜びをくれたあの子供以来の……。
『――!? はぁ!? あんたが全然喋らないから、私が気を遣ってあげてるんでしょ! 感謝しなさいっ!』
少年との会話に、心が跳ねあがった
少年との会話に、心が弾み続けた
心から喜びが溢れすぎて、恥ずかしくなって、照れ隠しに大きな声を張り上げてしまった。
どうしよう。こんなに楽しくて良いのかしら――
♢
「――御礼をしていただけるというなら、何か果物とか食べやすい木の実とかが生ってる場所とか、もし知っていれば、教えてくれませんか? 」
どうしたのかしら
この少年、困っているみたい
お腹がすいてるの?
可哀想。そんな思いさせたくない
なんかいい奴みたいだから、私と精霊たちの秘密の場所に案内してあげることにした。
『ここは、私のお気に入りの場所なんだから、他の人族に、この場所の事を話したりしたら承知しないんだからねっ!!』
この少年と仲良くなりたい
この少年を助けてあげたい
この少年と一緒にいたい
この少年を守ってあげたい
どんどん、私の中からやりたい事、やってあげたい事が溢れてくる……。
やってあげたい事!?
あれ、今までそんな気持ちになったこ事あったっけ?
いつもやって欲しいばっかりで、こんな気持ちになった事はなかった
そうか、これはきっと今までの私とは全然違う私……。私はもっと変われるかも……。
でも、なぜか素直に話せなくて……どうして?
♢
少年と一緒にいると、楽しくて、嬉しくて、なんか落ちつかなくなる。だから、理由をつけてアイツの前から離れてしまった……ほんとはもっと一緒に居たいのに。
『あんたの道案内してて、せっかくた集めた胡桃忘れてきちゃったじゃないっ! それじゃあね。あんたは、もっとしっかりしなさいよっ! 私はもう行くわっ! じゃあ、またねっ!』
なんだろ、そんなつもりはなかったのに、
こんな事言うつもりはなかったのに、
何故、私は少年の前から飛んで逃げてしまったのだろうか。
でも、『またね』って、ちゃんと言ったわけだし、きっと、また会いに来てくれるよね……
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「――なんなの!?あれ以来、全く遊びに来ないじゃない! アイツ、忘れちゃったのかしら?!」
精霊達が近くでユラユラと私の事を笑っている
あれ以来、アイツはさっぱり此処に来ない……
なんでよっ!?
私がまたねって言ってあげたのに!
こうなったら、私が探してあげようかしら
別に私が会いたいからじゃないけど?
ちょっとだけ気になるだけだもん
そうよ、私から会いに行けばいいんじゃない!
その様子をみていた、精霊達が再び笑った
だから違うって!
そんなんじゃないの!
私から会いたがってたなんて……
あいつに言っちゃダメよ!
リーン♪リーン♫
妖精は、自分が変わった事を理解している
そう、ただの精霊から妖精になり、たくさん、たくさん、たくさん……、たくさん経験してきたけど、彼との出会いは、その何倍も意味があるように感じた。
きっと、これは何かに導かれた私の運命――
妖精は、たった一度だけ出会っただけの、ほんの少しだけ一緒にいただけの、だけども何故かとっても気になってしまう少年を探しに、森の近くにある街へと出かけて行った。
いかにも楽しげに羽を鳴らして、いつもより一段高い鈴の音を鳴らしながら飛んで行った。
自分から何かをしてあげたいという、新しい気持ちに、とてもウキウキしながら――