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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
52/455

ぼっち妖精の出会い




        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽


 妖精は何度失敗してもめげなかった


 妖精は何度危ない目にあってもめげなかった


 それでも、妖精は懲りずに外の世界を見て回った


 そう、外の世界は、楽しさで溢れていた


 そう、外の世界は、様々な危険で溢れていた


 でも、何度危険な目にあっても興味はつきなかった


 でも、何度危険な目にあっても憧れはつきなかった


 新しい経験は、ますます妖精を成長させた


 新しい経験は、妖精をますます不安にさせた

 

 心から安心できる事はありえないのだろうか


 色々な事を繰り返し、経験し、とうとう見つけた


 自分という存在に優しく語りかけてくれた存在に


 自分という存在が安心して寄り添える存在に


 悪意という魔物を感じない相手に――




        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽




『ちょっとあんたっ!そこの人族っ!ボーっと観てないで、手伝いなさいよ!出れないのよ!』


 通りかかった白い髪の少年に呼びかけた。


「あのさ、妖精? さん……。一度に運ばずに、何度かに分けて胡桃を運べば、簡単に出られると思うんだけど……??」


――あれ? なんか、優しい声じゃない?

 

 いつもの人族とは違う? いや、油断はしちゃだめ。ちゃんと見極めなきゃ



――私を捕まえようとはしないのかな


 彼からはそんなに悪意は感じないかも。でも、私を騙そうとしてるのかもしれないし



           ♢



「ふふっ。ベルさんと一緒だと楽しいね。」


――えっ!? 私といると楽しいの!?


 久しく掛けられた事のない言葉だった。

 名前をくれたあの子供以来の言葉だった。

 そう、初めて私に外の世界での喜びをくれたあの子供以来の……。



『――!? はぁ!? あんたが全然喋らないから、私が気を遣ってあげてるんでしょ! 感謝しなさいっ!』


 少年との会話に、心が跳ねあがった

 少年との会話に、心が弾み続けた

 心から喜びが溢れすぎて、恥ずかしくなって、照れ隠しに大きな声を張り上げてしまった。

 どうしよう。こんなに楽しくて良いのかしら――



           ♢



「――御礼をしていただけるというなら、何か果物とか食べやすい木の実とかが生ってる場所とか、もし知っていれば、教えてくれませんか? 」


 どうしたのかしら

 この少年、困っているみたい

 お腹がすいてるの?

 可哀想。そんな思いさせたくない



 なんかいい奴みたいだから、私と精霊たちの秘密の場所に案内してあげることにした。


『ここは、私のお気に入りの場所なんだから、他の人族に、この場所の事を話したりしたら承知しないんだからねっ!!』


 この少年と仲良くなりたい

 この少年を助けてあげたい

 この少年と一緒にいたい

 この少年を守ってあげたい


 どんどん、私の中からやりたい事、やってあげたい事が溢れてくる……。


 やってあげたい事!?


 あれ、今までそんな気持ちになったこ事あったっけ?


 いつもやって欲しいばっかりで、こんな気持ちになった事はなかった


 そうか、これはきっと今までの私とは全然違う私……。私はもっと変われるかも……。


 でも、なぜか素直に話せなくて……どうして?

   


            ♢



 少年と一緒にいると、楽しくて、嬉しくて、なんか落ちつかなくなる。だから、理由をつけてアイツの前から離れてしまった……ほんとはもっと一緒に居たいのに。



『あんたの道案内してて、せっかくた集めた胡桃忘れてきちゃったじゃないっ! それじゃあね。あんたは、もっとしっかりしなさいよっ! 私はもう行くわっ! じゃあ、またねっ!』



 なんだろ、そんなつもりはなかったのに、

 こんな事言うつもりはなかったのに、

 何故、私は少年の前から飛んで逃げてしまったのだろうか。


 でも、『またね』って、ちゃんと言ったわけだし、きっと、また会いに来てくれるよね……




        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽




「――なんなの!?あれ以来、全く遊びに来ないじゃない! アイツ、忘れちゃったのかしら?!」



 精霊達が近くでユラユラと私の事を笑っている


 あれ以来、アイツはさっぱり此処に来ない……

 なんでよっ!?

 私がまたねって言ってあげたのに!

 こうなったら、私が探してあげようかしら

 別に私が会いたいからじゃないけど?

 ちょっとだけ気になるだけだもん

 そうよ、私から会いに行けばいいんじゃない!



 その様子をみていた、精霊達が再び笑った


 だから違うって!

 そんなんじゃないの!

 私から会いたがってたなんて……

 あいつに言っちゃダメよ!



 リーン♪リーン♫



 妖精は、自分が変わった事を理解している


 そう、ただの精霊から妖精になり、たくさん、たくさん、たくさん……、たくさん経験してきたけど、彼との出会いは、その何倍も意味があるように感じた。

 きっと、これは何かに導かれた私の運命――



 妖精は、たった一度だけ出会っただけの、ほんの少しだけ一緒にいただけの、だけども何故かとっても気になってしまう少年を探しに、森の近くにある街へと出かけて行った。

 いかにも楽しげに羽を鳴らして、いつもより一段高い鈴の音を鳴らしながら飛んで行った。

 自分から何かをしてあげたいという、新しい気持ちに、とてもウキウキしながら――


 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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